コートジボワール: 赤ちゃんとお母さんに医療を――MSFと保健省が協力

2015年06月25日掲載

MSFが支援する病院で生まれた赤ちゃん MSFが支援する病院で生まれた赤ちゃん

アフリカ西部のコートジボワールでは、長年続いた情勢不安で医療施設や専門職の人材が不足し、保健医療体制が弱まっている。母子保健・産科医療を受けられる場所も少なく、妊娠中や出産時の死亡率の上昇につながっていた。

国境なき医師団(MSF)は、ドゥエクエとアボボで産科医療の提供を行ってきた。2014年7月には、ブアケの北にあるカティオラ地域医療センターで、保健・エイズ対策省と協力し、妊婦と新生児を対象としたプログラムも開始。母子が地域で診察を受けられるように環境整備を進めている。

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赤ちゃんが危ない!

帝王切開などが行われる手術室 帝王切開などが行われる手術室

カティオラ地域医療センター。その夜、マドレーヌさんと医療チームは緊張が解け、一安心していた。マドレーヌさんはトリアージ(※)で、緊急度が高い「赤」に区分されていた。「臍帯(さいたい)脱出」の恐れがあると診断されたからだ。

臍帯脱出とは、分娩時にへその緒が胎児より先に出てしまう症状。へその緒が子宮壁と胎児の間に挟まるなどの現象が起き、血行が止まって酸素が運べなくなる。その結果、赤ちゃんが酸欠になる危険性がある。マドレーヌさんのケースでは、へその緒が赤ちゃんの首に巻きついていたのだ。帝王切開を行うことを決め、無事に赤ちゃんを取り出すことに成功した。

  • 重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること。

地域間で医療格差

MSF看護師の研修を受ける現地の看護師たち MSF看護師の研修を受ける現地の看護師たち

コートジボワールでMSFの副活動責任者を務めるオリヴィエ・ドロ医師「この地域では乳児死亡率が高水準になっています。また、出産時の死亡率は、10万人あたり600人です。フランスでは10人未満なのですが」と話す。

こうした統計は、妊娠合併症への対策が不足している結果だ。コートジボワールでは、妊婦の6割が医療系の有資格者による分娩介助を受けられている。しかし、医療施設の不足と医療スタッフの所在は地域によってばらつきがあり、地域間で医療格差が生じている。

MSFの医療コーディネーターを務めるセシル・ブラッカー看護師は、「大規模増改築プログラムで病院の建物と専門科の設備を刷新しました。また、病院職員の支援と研修も行いました。保健省、カティオラ地域医療センターと共同で、この地域での緊急性が高い母子保健医療に役立つプログラムになっています」と話す。

2015年7月には、新生児治療施設を開設する予定だ。これまでは救急搬送費や薬剤費を負担できる患者だけがブアケにある大学病院へ紹介されていた。新施設が完成すれば新生児の急患も受け入れ可能になる。

医療施設を全面改修

MSFは医療施設の改修も支援している MSFは医療施設の改修も支援している

病院の事務系職員であるジャン・イブ・バイイは「MSFのアプローチは革新的だったので、院内でも好評でした。」と話す。病院職員も意思決定のプロセスに参加し、業務手順についての意見も反映された。

このプログラムでは手術室と滅菌室の全面的な改修を行い、検査室と血液銀行も刷新した。工事プログラム責任者のビアトリス・ウィルボーは「その他の電気設備のグレードアップ、リサイクル体制の整備と病院から出る廃棄物処理、教習、物資の管理保管、排水処理と給水は2015年夏に完成する予定です」と話す。

改修の最終段階では、洗濯設備と生物医学用のロジスティクス、営繕部、台所、来客用の衛生設備も整える。また、産科病棟も改修し、新生児のカンガルーケアユニットや産後の女性のための病院(20床)も設置する予定だ。

診療所ネットワークの整備を支援

MSFのミュリエ・ドゥラン看護師は研修を担当している。カティオラの病院職員は基礎研修を修了しており、看護助手、看護師、助産師としての勤務の経験がある人も多い。「私の役割は、衛生面などの通常業務を再確認することと、ハイリスクの新生児の早期発見を始めとした重要な課題に取り組むことです」と話す。

カティオラ病院で技術・設備の水準をグレードアップした後に来る最後のステップは、5月に始まる近郊の診療所ネットワークの整備だ。母子を対象とした質の高い医療を地域に分散していく狙いがある。

このプログラムの担当者であるセシル・シェスノー助産師は、「診療所のインフラとスタッフ研修の両方を支援していきます。地域医療計画の一環で、医療を受けられる場所を増やし、妊産婦と乳幼児の死亡率を引き下げるためのものです」と話す。この地域では、現在も半数近くが自宅出産だ。合併症の際には、医療施設までの距離が母子の命にかかわることもあるのだ。

母体死亡率:出産後10万人あたり614人(※)
5歳未満の死亡率:出生数1000人のうち68人(※)
看護師・助産師数:住民1万人あたり看護師・助産師の合計で5人(※)
カティオラでの出生数:毎月300人(2015年1月~3月期)、そのうち10%は帝王切開

  • 出典:コートジボワール保健エイズ対策省と世界保健機関の統計/2011年。

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