コロンビア:医療体制からこぼれた都市の住民に治療を提供

2011年05月24日掲載

都市の劣悪な環境で暮らす人びとにMSFは2008年から援助を提供している。 都市の劣悪な環境で暮らす人びとに
MSFは2008年から援助を提供している。

コロンビアの港湾都市ブエナベントゥラは、太平洋沿岸地域における武力紛争から逃れてきた人が最初にたどりつく避難場所である。ここでは、人びとの不安定な暮らしと医療体制のかなりの部分が民間の営利企業によって担われていることが、医療を受けるにあたって大きな障害となっている。国境なき医師団(MSF)はブエナベントゥラで2008年6月に診療所を開院し、これまでに2万2500人以上の患者に診療を提供してきた。コロンビアにおけるMSFの活動責任者、オスカル・ガルシアはこう語る。 「この国の社会経済的な現実が、医療体制の不全につながっています。この医療体制は恐らく先進国をモデルにしているものですが、高い失業率、社会からの阻害、利権政治と腐敗といった、コロンビア社会の状況を考慮に入れていないのです」。人口の40%が社会保障の恩恵を受けられないでいることが、この見解を裏づけている。

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医療に加え、社会福祉面での援助も

コロンビア最大の港があるブエナベントゥラには現在40万人以上の住民が暮らしている。2008年以来、MSFはコロンビアの医療体制から締め出された人びとが必要とするすべての医療を多岐にわたって提供してきた。診療分野は、一般診療のほか、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、心理ケア、栄養治療、一斉予防接種などの専門分野にも及ぶ。また、MSFは救急部門も運営している。2010年には480人の患者がここで治療を受け、そのうち40%は救急車で病院に移送された。これらの医療サービスには社会福祉面の支援プログラムも付いており、患者が自らの法的状況を解決し、労働市場に入っていく手助けをしている。

診療所に訪れる患者を診るほかにも、MSFの医療スタッフは地域に出て健康が脅かされやすい人びとのもとに赴き、健康教育の会合や外来診療などを低所得層が住む「バリオ」と呼ばれる地域で行っている。

もっともよくみられる疾患が呼吸器感染と皮膚感染という事実が、この都市の住環境の危うさを物語る。しかし、このような都市部でMSFが活動することは珍しい。ブエナベントゥラにおけるMSFのロジスティシャン統括責任者、グレゴリー・モンテルは語る。
「ほとんどの場合、MSFは地方で短期か中期の活動を行います。都市部での活動は、長期的な開発の活動に近いのです。ここで最初に立ち上げた診療所と近々開院する2つめの診療所での診療は、私たちがブエナベントゥラを離れたあとも続きます。これらは長期間の使用を意図した施設なのです」

顧みられない性暴力被害者の援助を強化

MSFの活動は、現地の病院や医療施設では適切なケアを受けられない、性暴力の被害者のケアに特に力を入れている。MSFは被害者個人の社会経済的な状況にかかわりなく、医療や心理・社会面の支援を提供している。

2010年には106人が性暴力被害後にMSFの診療所で何らかの支援を受けたが、事件から72時間以内に来院したのはそのうち26%にすぎなかった。この期間を過ぎてしまうと、妊娠やHIV/エイズ、性感染症を防ぐ治療は効果を失う。

ブエナベントゥラにおけるMSFのプログラム・コーディネーター、パスカル・ブルデは語る。
「性暴力はいまもブエナベントゥラではタブーです。家族がからんでいるか、都市部で起こるギャング間の抗争に関わっているからです。どちらの場合も、被害者は被害について話すことを怖がります。その一方で、国の治療手順は、被害者が医療の手助けを得るためには、加害者の名を伝えなくてはならないとしているのです」

72時間以内に診療所に来られない被害者が7割以上という現状を覆すことを目指し、MSFは今年、地域における啓発活動と情報発信をさらに強化して活動していく。

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