ネパール: 被災地援助、時間との闘い――モンスーン迫る

2015年05月18日掲載

2回の大地震で壊滅してしまった村も……(ダディン郡) 2回の大地震で壊滅してしまった村も……(ダディン郡)

ネパール大地震の被災地では、国境なき医師団(MSF)の緊急援助チームが現在も活動を続けている。2015年4月25日と5月12日の2回の大きな揺れで、負傷者は数万人に達し、数百万人が被災した。MSFは、援助が届きにくい都市圏外の山間部などを中心にチームを派遣。外科治療や基礎医療を提供しつつ、重体の患者を首都の病院に搬送するなどの活動を行っている。

ネパールでMSF活動責任者を務めるダン・セルマンによると、建物の倒壊率が90%に及んだ地域もある。病院や診療所も被害を受け、最低限の医療も受けられなくなっている状態だ。また、MSFが状況を調査している山間地では、5月14日までに複数回の地滑りが発生しているという。「村がことごとく壊滅してしまった地域もあります。もともと厳しい生活だったとこへ震災が起き、過酷な状況に拍車がかかっています」と話す。

病院や診療所の中には震災を持ち応えた建物もあるが、無数の亀裂が走り、崩れやすくなっている。

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倒壊を免れた病院に患者集中

MSFの移動診療を待つ被災者たち MSFの移動診療を待つ被災者たち

MSFは、ダディン、ゴルカ、ラスワ、シンドゥパルチョーク、ヌワコットの5郡で医療と心理ケアを提供、バクタプル郡の病院では外科治療の薬などを寄贈している。受け入れた患者の中には、最初の地震からずっと治療を受けていない人もいた。2回目の地震の震源地となったドラカ郡では、重傷者に対応しつつ、頭がい骨の骨折などの治療継続のため、カトマンズの病院に紹介している。

ゴルカ郡アルガトでは、空気膨張式のテント病院(20床)を5月8日に開設した。外科、産科、救急、総合医療の各病棟があり、心理ケア・プログラムも行っている。さらに、保健省と協力して外来診療を行ったり、薬の供給、医療研修、病院への患者紹介システムの運営も支援したりしている。

アルガト病院の外来部門の患者は1日平均100人で、気道感染症、下痢、震災被害による負傷が大半を占める。救急処置室の患者は1日平均15人で、骨折と創傷の治療が多い。産科病棟では5月12日、同院第1号の赤ちゃんが生まれた。

ネパールでMSF医療コーディネーターを務めるマナンガマ・グイグイ医師は「アルガト病院がゴルカ郡内の2次医療を支えている状況です。郡内の医療施設は大半が倒壊してしまったため、徒歩で5日もかけて来院した人もいました」と話す。

住居・水の不足が深刻化

住宅も大半が倒壊し、仮設住居の設置が急務だ 住宅も大半が倒壊し、仮設住居の設置が急務だ

仮設住居の不足も深刻な事態となっている。ドラカ郡ミルゲ村出身のMSFアドミニストレーターアシスタント、ライクマル・パクリンは「最初の大地震で自宅に亀裂が入り、次の大地震で倒壊しました。資産も家畜もなくしてしまい……。ただ、家族は避難していて無事でした」。

MSFは、ラスワ、シンドゥパルチョーク、ゴルカ3郡の被害が深刻な20村で、仮設住居・衛生用品キットを約2300セット配布した。さらに、ダディン、シンドゥパルチョーク、ラスワ3郡の一部の村で、鉄板や釘といった修復用建材の提供を開始した。この3郡では、米と高栄養ビスケットを中心とした食糧も支給されている。

首都のチュチバティ・キャンプでは、給水設備とトイレの建設を進めている。ラスワ郡でも一部の村に袋状の貯水タンクを設置。シンドゥパルチョーク郡のグンパタン、テンバタン、ニムルンの3ヵ所では、重力式給水システムを修復するためのパイプと貯水槽を提供した。

モンスーンまでに住居の確保を

道路が損壊したり、封鎖されたりしている山間部にアクセスするためには、現在も空路が唯一の手段だ。MSFの活動の大部分は都市圏外の村を対象としているため、大型ヘリは着陸できない。選択肢は小型ヘリしかないが、積載能力が低いため、輸送可能な貨物量には制約がある。

ネパールでMSF緊急対応コーディネーターを務めるペーター・パウル・デグローテは「数週間後にはモンスーン(季節風)が吹き始め、屋外では過ごせなくなります。山間地へのアクセスはさらに難しくなるでしょう。今しかありません。手遅れになる前に被災地に仮設住居を搬入できるように、MSFも全力を注いでいます」と話す。

2015年4月25日、カトマンズから北西200kmのゴルカを震源とするマグニチュード7.8の地震がネパールを襲った。政府によると5月11日までの死亡者数は8019人、負傷者数は1万7866人に上る。2015年5月12日には新たな大地震が発生。マグニチュード7.3で、震源はカトマンズの東のドラカ・シンドゥパルチョーク郡境付近だった。この2回目の大地震では76人が亡くなり、約2000人が負傷している。

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