スワジランド: 検査をすり抜ける結核菌!新たな対策が必要に

2015年03月26日掲載

MSFによる結核のスクリーニングを受ける家族(2013年11月撮影) MSFによる結核のスクリーニングを受ける家族
(2013年11月撮影)

アフリカ南部のスワジランドで行われた全国調査で、同国で流行している多剤耐性結核(MDR-TB)菌株の4分の1が変異遺伝子を持ち、最新の迅速分子診断・検査でも検出できないことがわかった。

国境なき医師団(MSF)と独ボルステル研究センター(ライプニッツ医学・生物科学研究センター)が、3月第3週に発行された『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』(NSJM誌)で発表した。

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スワジランドの全国調査で判明

検体から結核菌を検出する「XpertMTB/RIF分析」の様子 検体から結核菌を検出する「XpertMTB/RIF分析」の様子

MSFの研究機関であるエピセンターと独ボルステル研究センターは、スワジランドの全国調査(2009年~2010年)で採取されたMDR-TB株(125サンプル)の遺伝子型を分析。その30%に、特定の遺伝子の変異が見られた。

この変異遺伝子はrpoB(I491F)と呼ばれているものだった。過去に香港とオーストラリアの希少な菌株から検出され、同定されている。この変異遺伝子を持つ結核菌は、結核の第1選択であるリファンピシンに耐性があり、「XpertMTB/RIF分析」での検出もできない。

XpertMTB/RIF分析は迅速分子診断・検査の1つで、世界保健機関(WHO)が各国に導入を勧めている。結核有病率が世界最悪水準のスワジランドでは、MDR-TB症例の特定と感染制御のための第1の手段となっている。

感染が見過ごされている可能性も

MDR-TBの正確な検査結果を素早く得ることができれば、患者はそれぞれの結核菌株に特化した治療を速やかに始めることができる。それは、生存率の向上やMDR-TBの感染拡大予防にもつながる。

逆に、迅速分子診断・検査で検出できない場合があるということは、MDR-TBの症例が見過ごされている可能性があることを意味する。MSFのHIV/エイズ・結核アドバイザーを務めるアレックス・テルノフは「スワジランドのMDR-TB検出の方法を見直す必要に迫られています」と指摘する。

独ボルステル研究センターのシュテファン・ニーマン氏も「変異遺伝子を持つ結核菌株の割合が4分の1を占めることは、見過ごせない問題です。従来の検査が通用せず、未治療の患者が増えれば、感染拡大につながるでしょう」と警鐘を鳴らす。

近隣諸国での検査も不可欠

診断にひっかからない結核菌の割合が高いことは、スワジランドでは特に深刻な問題として受け止められている。同国ではHIV感染者率が成人の26%に上り、世界最悪の水準だ。さらに、結核患者の80%がHIVにも感染しているスワジランドでは特に問題だ。全国調査では、HIV・結核の二重感染者はHIV陰性者に比べ、MDR-TBにもかかりやすいことも示唆されていた。

今回の調査結果を受け、MSFはXpertMTB/RIF検査で陰性だった同国の結核患者に、追加的な薬剤感受性検査を受けるよう勧めている。隣国の南アフリカ共和国やモザンビークでも、同じ変異遺伝子を持つ結核菌の存在を確認する研究が不可欠だと考えている。

MSFエピセンターの研究者マリリーヌ・ボネは「この結核菌株が南アフリカなどの他地域でも流行しているとすれば、結核の検査技術も見直す必要があります。変異遺伝子を持った結核菌を幅広く検出できるようにしなければなりません」と指摘する。

MSFは2007年からスワジランドで活動。HIVや結核の集団感染対策に取り組む保健省を支援している。スワジランドでは15歳~49歳の26%がHIVに感染しているとみられている。また、結核の推計罹患率は、年間で10万人に1350人の割合とみられている。いずれも世界最悪水準だ。また、HIVエイズと結核の二重感染率は74%に上る。2014年にMSF施設で結核治療を受けた患者は904人。DR-TB治療の対象者は77人で、そのうち57人がMDR-TB患者だった。

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