キルギス:南部で医療人道援助を拡大

2010年06月25日掲載

キルギス

キルギス南部オシ市とジャララバート市で起こった住民間の衝突により、現地では依然として緊迫した状況が続いている。この暴動によって6月10日以来、数百人が亡くなった。国境なき医師団(MSF)は、現地で被害者や避難民の医療ケアや医療施設への支援にあたっている。

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オシ市近郊のナリマン村で起こった新たな暴力行為

オシ市で子どもの治療をするMSFスタッフ。 オシ市で子どもの治療をするMSFスタッフ。

6月21日月曜日、MSFはナリマン村で起こった新たな暴力行為について連絡を受けた。ナリマン村はキルギス南部オシ市近郊にある。MSFは負傷者25人を受け入れ、2人が亡くなったとされるナリマン村にある病院を訪れた。

キルギス南部におけるMSFのコーディネーター、アンドレイ・スラブスキー医師は語る。
「患者は全員男性で、頭部のけが、肋骨の骨折と打撲などがみられました。これらの傷は明らかに激しく殴打されたものです。これは暴力と緊張が決してまだ終わっていないことを示す新たな例です」

これらの患者を受け入れている病院職員は、患者の数には問題なく対応できているが、基本的な医薬品や医療物資が不足していたため、MSFはこれらを無償で提供した。

MSFは、病院敷地内で4人の武装した身分不詳者を目撃しており、ほかの負傷者が医療ケアを受けにくる妨げになるのではないかと懸念している。

スラブスキー医師は、さらに語る。
「もし敷地内でだれかが傷つけられるようなことがあれば、ほかの負傷者は同じことが自分の身に起こることを恐れて身を隠し、病院へ医療ケアを受けに来なくなるでしょう。また一部の救急車は、より専門的な医療施設へ重症患者を搬送できなくなっています。運転手がいくつかの検問所で、患者を搬送すれば命が危うくなると脅されたからです。ケアを必要とする患者が何の問題もなく医療施設にたどりつけることは必要不可欠です」

オシ市南部オナディルで活動を開始

現地の病院職員を支援するMSFスタッフ。オシ市南部のオナディルにて。 現地の病院職員を支援するMSFスタッフ。
オシ市南部のオナディルにて。

6月22日火曜日、MSFはオシ市南部オナディルにある医療施設で非常に困難な状況を確認した。オナディルはウズベク系住民5万5000人が住む地域である。心理療法士でプログラム・コーディネーターでもあるソニア・ペイラソルは語る。
「医療スタッフは疲れきっています。この危機が起こった最初の日から、患者を昼夜問わず治療していたのです。患者も医療スタッフも強いショックを受けています。『気分はどうですか?』と聞くと泣き出し、悲惨な体験について話してくれるのです」

同日、MSFはこの危機の初期に負傷した患者50人に術後ケアを開始した。また現在、この診療所でも手術が行えるように支援しているほか、母子医療と小児医療、慢性疾患の治療態勢の強化も行っている。MSFの外科では、医師と看護師各1名がオナディルに今後常駐し、この診療所職員とともに働くことが決まっている。また、心理ケアがMSFの活動の中心となる。

キルギス南部で住民間の衝突が起きてから10日以上が経ったいまも、オシ市とジャララバート市周辺で非常に緊迫した状況が続いている。暴動を逃れた人びとの一部(国境を越えて隣国ウズベキスタンにいった人びともいる)は元の居住地域に戻り始めたことをMSFは確認している。オシ市とその周辺の家々は焼かれ、多くの人びとは、いまもひどく脅えているため、隠れているか自宅の周囲をバリケードでふさぎ立てこもるかしている。また、いろいろなうわさが現状の恐怖に拍車をかけている。

現地で活動する6つのMSFチーム

MSFは現在オシ市とジャララバート市ならびにウズベキスタン国境付近の現場4ヵ所で活動している。活動内容は医療施設への医療支援および今回の暴動によって何らかの影響を受け、避難してきた多くの人びとのケアである。

MSFは複数の医師、外科医、看護師、心理療法士、ロジスティシャン(物資調達管理調整員)からなる6つのチームを編成した。4つのチームは暴動から避難し、劣悪な生活環境にある世帯への援助に注力している。医療ケアと心理ケアに加えて、これらのチームは衛生用品キット1000セットおよび他の緊急救援物資5000人分を配布した。

オシ市とジャララバート市内の医療施設に拠点をおく2つのチームは、現地の医療従事者を手助けするほか、医療物資を提供している。たとえば、各種慢性疾患の治療薬2000剤をオナディル総合診療所に寄贈した。6月23日水曜日には、MSFスタッフは1日あたりおよそ300件の診察をこなした。また、その多くは負傷者であった。

キルギス南部では現在、MSFの海外派遣スタッフ25人が団体の活動を運営している。

国境を越えて反対側のウズベキスタンでは、MSFは現地の心理療法士に対し、難民への心理ケアに関する研修を行っている。これはグループ・セッションと(現地の心理療法士のもとで活動に従事する)カウンセラーの研修に力を入れた内容となっている。

水・衛生面のニーズ調査も予定されている。MSFは難民に救援物資を配布して支援。これらは中央倉庫への備蓄用に無償で提供していたものである。6月23日以来、状況は変化しつつあり、MSFは多くの難民が避難先を離れるのを目撃している。これを受けて、当局からは心理ケア活動を停止するよう指示が出ている。現地のMSFは状況を見守り、国境のキルギス側で活動しているチームを支える準備をしている。

MSFはキルギスで2006年から、ウズベキスタンで1997年から活動し、多剤耐性結核を含めた結核治療にあたっている。

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