パプアニューギニア: 小型無人ヘリが結核対策で活躍?

2014年11月18日掲載

MSFの結核検査を受ける子ども MSFの結核検査を受ける子ども

パプアニューギニア結核有病率は人口10万人あたり541人。世界最悪の水準で、一部地域ではその3倍の数値も報告されている。この現状を受けて、国境なき医師団(MSF)は結核被害の特に深刻な地域に赴き、対策を支援している。

MSFは独自調査の結果、最もニーズの高い湾岸州に着目した。結核有病率が非常に高く、薬剤耐性結核(DR-TB)の拡大の懸念もある。一方、遠隔地域の大部分で保健医療が不足していた。

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新しい検査機器で診断能力が大幅アップ

新検査機「GeneXpert」を使ってサンプルを調べるスタッフ 新検査機「GeneXpert」を使ってサンプルを調べるスタッフ

地元保健管轄局との連携は、適切な感染制御と来院患者の誘導による隔離環境下の結核診療から始まった。MSFプログラム責任者のサイラス・パイェは「MSFが州都ケレマに入った2014年半ばには、地域の病院では感染制御が全く行われていませんでした。そこで、感染が広がらないように万全の態勢をとりつつ、結核の調査を行ったのです」と振り返る。

MSFはケレマ総合病院の機能回復にも着手。数週間かかっていた結核検査の期間を2時間に短縮できる「GeneXpert」などの新しい医療機器も導入した。MSF活動責任者のバンジャマン・ゴーダンは「新機器の導入目的は、診断能力を大幅に向上させ、早期に治療を始められるようにすることです」と説明する。

現地では新設の結核病棟の建設も進んでおり、入院用ベッド18床も設置される予定。結核患者を他の入院患者から隔離し、感染制御を向上させるためだ。次の段階として望まれるのは結核対策の分散化だ。しかし、地理的な条件が高い壁となる。

行く手を阻む悪路

雨期の悪路で移動・輸送に支障が出ている 雨期の悪路で移動・輸送に支障が出ている

ただ、プログラムは大幅に遅れている。原因は悪路だ。数ヵ月の雨期で、ケレマと首都ポートモレスビーをつなぐ未舗装道路の大部分は、深いぬかるみと化してしまった。これが輸送車を阻み、総合病院での建設作業の遅れにつながっている。

都市部から遠く離れた居住地や診療所への移動も難しい。水路で向かえそうな村落もあるが、サンゴ礁の海は変化が激しく、ボートでの移動は安全とは言えない。また、河川には大型のイリエワニが、密林には致死性の毒を持つヘビがいる。ケレマ近郊では5月、子どもが体長4メートルのワニに襲われて命を落とした。

クワッドヘリを試験導入、遠隔地と町の病院をつなぐ

MSFとMatternet社が導入したクワッドヘリの試験機 MSFとMatternet社が導入したクワッドヘリの試験機

輸送・移動が難しいことから、MSFは革新的な解決策を考案した。米国のMatternet社とともに、プロペラが4つある「クワッドヘリ」の小型無人機を試験的に導入した。目的は、結核の疑いがある患者の痰(たん)のサンプルを、地域の診療所からケレマの総合病院に運び、検査結果と治療薬を持ち帰ることにある。

現時点では、導入したクワッドヘリは最高時速60kmで、最長28kmまで飛行できるが、軽量のものしか運べない。しかし、数年以内にバッテリーの軽量化と連続使用時間の向上が進み、飛行距離も飛躍的に拡張するとみられる。操作に関しても専門的な技能は必要なく、試験機はスマートフォンで操縦できる。

当面は試験段階での微調整が必要だが、これまで連携できなかった遠隔地の診療所と町の病院をつなぐ有効な手段になりそうだ。

結核対策の基準確立を目指す

湾岸州でのプログラムは、2015年中にもポートモレスビーへと拡大する予定だ。MSFの目標は、他地域でも導入できる効果的なケア・モデルをケレマ市で確立し、保健省と国家結核対策プログラム(NTP)を支援することにある。

MSF活動責任者のゴーダンは「MSFは管轄局と緊密に連携し、国の方針に沿って活動しています。5ヵ年計画の目標は、規範となる持続可能な結核プログラムの確立です」と話す。

MSFはパプアニューギニアで2009年から活動。現在は南ハイランド州タリとポートモレスビーで、家庭内暴力・性暴力被害者のためのプログラムを提供している。また、湾岸州では結核対策プログラムを展開している。過去には、モロベ州ラエでも家庭内暴力・性暴力関連プログラムを行い、ブーゲンビル自治州では母子保健プログラムを運営していた。

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