ジンバブエ:HIV治療の互助グループ制度が普及

2014年10月02日掲載

CAGの活動について話すセルド・ンドロブさん CAGの活動について話すセルド・ンドロブさん

ジンバブエのタショロショト地区、同じ村内のご近所さん6人は、月1回の誰か1人が病院に行き、全員分のHIVの薬「抗レトロウイルス薬(ARV)」を受け取ってくることにしている。6人はHIV陽性だが、この方法でARV治療を続けることができているため、容体は安定している。

これは"コミュニティARVグループ(CAG)"と呼ばれる取り組みで、コストがかからず、グループと医療施設の双方にメリットがある。国境なき医師団(MSF)が2013年に、タショロトショ地区に導入した。

セルド・ンドロブさん(41歳)はリンダニCAGのメンバーだ。セルドさんがARV治療を始めたのは2009年、ご主人を亡くしてからだ。「夫を亡くしたストレスで、症状が悪化したのだと思います。夫は一家の稼ぎ手でしたから」

ンドロブさんは、CAGの助けを借りて以前より上手にHIV感染とつきあえるようになった。「私たちはそれぞれ役割を持っています。薬の飲み方を確認し、手元にある薬を数えてグループ内で話し合い、その内容を書き留めています。以前は難しいと感じていたARV治療も、グループ単位なら簡単です」

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患者の負担減と病院の混雑緩和に効果

CAGの目的は、病院へ足を運ぶ回数を減らすことで、ARV治療の継続率を高めることだ。ジンバブエでは、ARV治療の中断や停止が大きな課題となっている。サハラ以南のアフリカ諸国で行われた最近の研究では、患者の3人に1人が、治療開始から2年以内に脱落している。

治療をやめてしまう理由はさまざまだ。タショロトショでは、自宅から医療施設への交通手段がないことや、仕事や家事で時間がとれないことが主な理由だとみられる。医療施設では長時間待たなければならないことがある。また、病院に行くことへの周囲のサポートが得られなかったり、偏見にさらされたりすることもあるからだ。

MSFのジンバブエでの医療コーディネーターを務めるスザナ・ヴィレンは「ARV治療をグループで進める取り組みは、『患者が自主的に、決まりにそった服薬を続けることが難しい』という課題から生まれました。患者自身もその課題を自覚していました。ですので、この取り組みが、容体の安定した患者にARVを提供するためのよい選択肢となっているのです」と話す。ただ、妊婦、子ども、結核を始めとした日和見感染を発症している患者は対象外としている。そういった人びとは、定期検診を徹底する必要があるからだ。

この取り組みは、2013年にタショロトショ地区のンクンジ、シペラ、プメラで始まった。ARV治療を受けている人が多く、医療施設から遠く離れていて、公共交通がない地域だ。対象者は720人で、121グループができた。MSFは対象者に研修を行い、医療施設に紹介した。

医療側の理解も重要

医療施設に取り組みについて理解してもらうことも大切だ。医療施設は、6人に対応すべきところを1人で済む。配薬担当には、必要な薬を事前に用意するように依頼している。そうすることで、診療を短縮し、混雑の解消につなげるためだ。

ジンバブエは世界で最もHIV/エイズが流行している国の1つだ。近年、状況は大幅に改善しているものの、なお成人の約15%(130万人)が感染している。現地保健省によると、2012年の統計では、ARV治療を必要とする人のうち、実際に治療を受けていた人は成人で72%、子どもで43%だった。

ジンバブエでMSFの活動統括責任者を務めるルイス・エンシーナスは「この国で保健医療体制が持続的かつ長期的に成功するためには、医療資格が必要な臨床と、非医療従事者が担当できる配薬を分業とする医療モデルが必要です。分業することで、患者は、身体的、社会的、心理的な観点から、詳しい説明を受けられます」と指摘する。

HIV陽性のクロレンス・マサンゴさん(48歳)の話

私には7人の子どもがいます。子どもは全員がHIV陰性でした。自宅は(病院がある)プメラから18kmのところです。

ダムロシンゴCAGに入ったことで、治療を受けやすくなりました。病院で丸1日、何もできないまま過ごさなくてもよくなったのです。CAGメンバーも2時間以内に会える地域で見つかりました。病院で6時間以上も過ごしていたことを考えると、大幅な進歩です。

CAGのおかげで、より多くの時間を家族のための仕事にあてられるようになり、人生に前向きになりました

CAGはどのように機能しているのですか。

毎月、グループごとに集まります。メンバーが持っている薬を数えます。新しい症状や課題などを話し合い、文書に記録します。

代表は月交代で、任命はいくつかの基準に則って行われます。病院に行く必要がある体調が悪い人、CD4値や体重の測定が必要な人などです。基準を満たす人がいなければ、前もって決めておいたカレンダーに従って選ばれます。グループメンバー全員が"患者手帳"をこの回の代表に手渡します。

診療所では、代表はまず自分自身の診療を受けます。それからグループ全員が必要とするARVや予防薬を処方してくれる医療スタッフに会います。患者手帳が更新され、薬は各患者名が記載された包みで手渡されます。配達ミスを防ぐためです。代表は薬と患者手帳をメンバーに届け、必要な場合には医療施設に行って経過をみてもらうように伝えます。

MSFは2013年以降、タショロトショでの活動を保健省に引き継ぐ作業を始めています。CAGは現在、MSFの支援がなくても機能するようになってきています。

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