マリ:周辺国に難民30万人、援助活動で地域事情にも配慮

2012年06月29日掲載

マリは2012年1月末以降の政変で、国内が分裂状態に陥っている。北部では住民の退避が続き、茂みに隠れたり、隣国のブルキナファソ、ニジェール、モーリタニアに集団で逃れたりしている。食糧確保が不安定で既に困窮している地域にたどり着くことも少なくない。国境なき医師団(MSF)は、そうした地域で拡大している医療・人道上の危機に対応し、難民と地元の住民の双方を対象に援助活動を行っている。

MSFは、マリ・シカソ州のクティアラにある病院と、5つの診療所で、子どもを対象とした医療活動や栄養治療を展開している。また、主要な小児疾患の予防活動も行っている。マリ北部では、トンブクトゥ州の病院で活動し、同州のほか、キダル州やモプティ州にも医療を届けている。

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国境付近での医療援助で2万3000人を診療

ブルキナファソの難民キャンプに設置された仮設住居 ブルキナファソの難民キャンプに設置された仮設住居

戦闘、治安の悪化、食糧危機から逃れるため、30万人以上のマリ人が周辺国へと脱出した。MSFの緊急対応コーディネーターであるマリー=クリスティーヌ・フェリールは「身の危険を感じた大勢の人びとが、着の身着のままで避難を始めています」と話す。

難民は主にトンブクトゥ、ガオ、セグー、モプティ各州の出身で、水、食糧、住居が乏しい地域や難民キャンプに滞在している。

MSFは、マリ人難民が滞在しているガンダファブ、フェレリオ(以上、ブルキナファソ)、ファサラ、ムベレ、バシクヌー(以上、モーリタニア)、シナゴダル、バニ・バング、ヤッサン(以上、ニジェール)で診療所を支援している。

また、ディビッシ、ンガトゥル・ニニ、デウ(以上、ブルキナファソ)、アヨル、マンガイゼ、バニ・バング、アバラ、ガウデル、ンベドゥ(以上、ニジェール)の難民キャンプでは、移動診療による治療を毎週展開している。2012年2月以降、マリと周辺国との国境周辺で合計2万3000人以上に診療を行ってきた。

フェリールは「主に呼吸器感染、マラリア、下痢が診察の対象になっています。劣悪な環境でかかることが多い病気です」と説明する。

MSFは、産科ケアの必要な女性にも対応している。モーリタニアのムベレ難民キャンプ内にある診療所では、これまでに100人の分娩を介助した。

週20万リットルの飲用水を給水

ムベレ難民キャンプで給水を受ける人びと(モーリタニア) ムベレ難民キャンプで給水を受ける人びと(モーリタニア)

マリ周辺は砂漠地帯で、十分な量の飲用水を調達できる場所がない。これは特にモーリタニア国内で顕著だ。各種の病気や、衛生状態の悪さが原因となる健康問題の予防には、安全な水の確保が不可欠だ。

バニ・バング難民キャンプでは、MSFの給水車が毎週、消毒済みの水20万リットルの入ったタンクを搬入している。

フェリールは「気温が50度前後になる環境では、特に乳幼児と高齢者に十分な飲用水が行き渡るように徹底しなければなりません」と指摘する。干ばつと食糧難が以前から続いている地域に難民が移入することには、特に注意が必要だ。

栄養失調の治療と予防に注力

栄養状態の簡易検査を受ける子ども(ニジェール) 栄養状態の簡易検査を受ける子ども(ニジェール)

人道援助による食糧配給などは難民たちの頼みの綱だ。しかし、乳児用ミルクや幼児食は配給されていない。

フェリールは「お米は空腹を和らげてくれますが、子どもの発育にとっては栄養素が不足しています。タンパク質、脂肪、ビタミン類、炭水化物、ミネラル類といった成分の摂取が不可欠です」と訴える。

モーリタニアへ入国した難民は、「マリを離れた理由は食糧難だ」と話している。MSFは緊急援助を開始して以来、マリ周辺の3ヵ国で約1000人の重度栄養失調児を治療した。

はしか・コレラの拡大防止も急務

マラリアの感染検査を受ける子ども(ブルキナファソ) マラリアの感染検査を受ける子ども(ブルキナファソ)

難民キャンプでは、はしかから子どもを守ることも重要だ。栄養状態や環境が悪い場所では、はしかの流行が壊滅的な影響をもたらすことがある。MSFは2012年3月から地元保健担当局と協力し、1万人以上の子どもに予防接種を行ってきた。

ニジェールのナマリグングとボンフェバでは、コレラの発生も確認されている。MSFと同国保健省は、5月初旬から現在までに約600人を治療した。ベッド数60床のコレラ治療センター2ヵ所も建設中だ。

雨季に入り、マラリアやコレラの流行リスクは高まるとみられる。さらに、7月は農作物の端境期で食糧が乏しくなる「ハンガー・ギャップ」に入る。毎年、この時期が栄養失調のピークとなる。数ヵ月間、人びとは栄養失調と感染症の二重の負荷にさらされることになる。

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