イラン:地震緊急支援

2004年01月06日掲載

(この記事は、バムに派遣されたスタッフによる2003年12月31日付けの報告書に基づいています。)

イラン南東部のバムを大規模な地震が襲ってから5日が経ち、生存者発見の希望はほとんどなくなった現在、捜索活動もほぼ打ち切られている。緊急救助の段階が終わり、今後は新たな援助の必要性に対応していかなければならない。生き残った人々は全ての財産を失い、真冬の寒さのなかテント暮しを余儀なくされている。多くの被災者が身寄りを頼ってバムを去っていく一方で、街に残り苛酷な状況下で生活を続ける人々は2万人にのぼる。また、今後は地震によるトラウマ(心的外傷)もこれから多くの被災者を苦しめる問題となってくる。

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1.バムの概況

イラン当局は倒壊した家が再建されるまでのあいだ被災者を受け入れるキャンプの設置場所を探しているが、かつて自分達の家があった場所を離れて施設に移ることを拒んでいる人々が多い。こうした人にはシェルター用資材が提供された。また給水所は長蛇の列ができないよう十分な数が設置された。毎日2~3本のミネラルウォーターが必要とする人々全員に配られ、食糧もきちんと配給されている。そのため今のところ生存に不可欠なものは比較的揃っており、伝染病発生の危険も低いと見られる。

負傷者の大部分はマシャドやザヘダン、テヘランなど別の都市に搬送された。バムの北方200kmにあるケルマン州立病院には現在350名の負傷者が入院している。この病院には発生直後からの数日間で7千人の負傷者が搬送された。

2.病院の状況とMSFの支援活動

MSFによるこれらの病院の状況調査からは、必要とされているものは特定の医療器具(包帯用具など)であり、大量の需要ではないことが分かった。地震発生直後に赤新月社やフランス政府などがバムに設置した3つの診療施設には、30日現在、治療を待つ重傷患者はもういない。活動は縮小傾向にる。

たくさんの援助団体がバムに到着したが、配給の調整がうまくなされておらず、特にテントやシェルター用シートなど食糧以外の物資が無統制に配られている。混乱した状況のなかで配給から外れてしまった人がいる可能性があるため、MSFは移動チームを立ち上げ、市内の各地区で水・食糧・シェルター用資材の需要や衛生状態の調査を始めた。

バムでは今後、衛生状態の管理がもっとも大きな問題になると考えられる。衛生状態の維持と並行して、MSFは家々の訪問や物資の配給を行い、基礎医療を提供する。いくつかの施設に対しては水の提供を行う。

3.バム周辺地域の状況

震源地の南側に位置する3つの村で状況調査を行った。これらの村では地震の被害はそれほど大きくなく、負傷者の治療もすでに行われているため壊滅的な事態にはなっていないことがわかった。しかしながら、地震の後に医療者がバムに駆けつけたために閉鎖されている医療施設もあるので、MSFは彼らが戻るまで村にとどまって医療を提供することにした。また、未調査の地域やバムから避難してきた人々が集まっている場所の調査を継続して行っていく。

4.援助物資

バグタッド、ドバイ、テヘラン、そしてフランス・ボルドーのMSFロジスティックセンターから送られた物資は罹災地に到着した。内容は、診療用のテント、寝具、水の配給に必要な資材、外科キット、医療キット、医薬品と衛生用物資10トン、タンパク質を含むビスケット15トンなどである。

5.心理ケアの必要性

心理ケアの需要を調査するため、2人の精神科医がバムに派遣される。調査結果を受けて心理ケアプログラムを立ち上げ、地震によって精神的衝撃を受けた人々の治療を開始する予定である。精神科医は、現在18人から成るバムのチームに加わることになる。

6.「クラッシュ・シンドローム」

3人の腎臓専門医がケルマンで状況調査を行ったが、「クラッシュ・シンドローム」の患者はそれほど多くなかった。「クラッシュ・シンドローム」は、地震の際に、救助されたけが人によく出る症状である。急性腎不全のひとつで、強く圧迫された筋肉組織から毒素が放出されることで生じ、2人に1人は命を落とす。治療には透析が必要になる。

シャファ病院(ケルマン州における透析治療の主要病院、350床)の腎臓科では、13台ある透析器はすべて使用されており、約20人の地震による急性患者と慢性患者が治療を待っている。この病院の医療水準は高く人員も十分に配置されている。MSFは新たな透析器18台を提供し、使用法のトレーニングを行う。

国境なき医師団(MSF)1995年以来イランで活動を続けており、12月26日の地震発生当日の夕方から被災地で援助活動を行っている。

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