イラク:最新活動情報

2003年04月17日掲載

国境なき医師団(MSF)は現在イラクとその周辺国に44名のボランティアを派遣しています。調査チームが各地で医療の現状と必要性の確認を進めており、数日内に医療活動が開始される見込みです。

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イラク国内 <バグダッド>

市内の状況

バグダッドの人々は通常の生活に戻ろうと努力しています。店や市場は再び少しずつ開き始めました。通りには非公式のチェックポイントが設けられ、あちこちで略奪が横行するといった不安定な状況は続いています。MSFは4月14日(月)バグダッドの4つの病院を調査、視察訪問しました。この無秩序と略奪の中で医師、看護師、病院職員らは仕事を続けるために病院に戻ってきています。患者も、安全が確保される場合には治療に戻ってきているようです。

医療の必要性

MSFインターナショナルの会長でありMSFがバグダッドでの活動を始めた当初から医療チームに参加しているモルテン・ロストルップ医師は、「第二の患者の波がやってくると予想しています。先週は混乱の中で全員が病院から避難しなければなりませんでした。その時避難を余儀なくされた患者には治療が必要です。また慢性疾患の治療薬が入手できない状況が続いています。」と語りました。慢性的な症状に苦む人々にとって、治療を受けられない現状は非常に危険です。例えば糖尿病の人が透析を受けられず肝機能が不全に陥ったとき、もしインシュリンが手に入らなければその患者は昏睡に陥ってしまいます。

また新たにバクダッド入りしたMSFオペレーション・ディレクターのコーエン・ヘンカエルツ(Koen Henckaerts)医師は「ここ数週間は外科の需要が高いだろう」と話しています。

MSFの調査報告

アルザファラニア病院(バグダッドの南東部、40床)
MSFの外科医、麻酔科医が2つの手術室の1つを使える状態に整備しました。1つの発電機で病院全体の電気を供給していますが、しばしば停電が起こります。このため保存していた輸血用血液が使用できなくなりました。今後患者が増加すれば、麻酔器の不足が予想されます。消毒・殺菌は行われているようですが、手術用器具が十分に清潔であることを確認する必要があります。4月14日(月)MSF医療チームは自動車事故の負傷者の手当てにあたり、翌火曜日も続けてこの病院をバックアップする予定です。MSFはこの病院のために、診断のための医療器具、血液型検査キット、麻酔薬を取り寄せる準備をしました。

アルキンディ病院(バグダッド北東部、250床)
MSFは3月22日(土)に当病院の支援活動を始めましたが、4月2日(水)にチームの2人が拘束されたため中断していました。その間、略奪の被害はなかった模様です。現在は地元のグループが病院の警備にあたっています。水や電気の問題はないようで、ここ数日のうちに全ての病棟を稼動させられるよう努めています。病院全体の清掃、医薬品の在庫確認などが必要ですが、医師らは4月14日(月)には手術を再開できるよう望んでいます。

アルカディシア病院(サダールシティ(旧サダムシティ))
4月13日(日)この病院には、多くの患者がやって来ました。外来病棟には長い列ができ、ベッドは全てうまりました。外科医によると連日5~8例の手術を行っており、水、電気の問題はないとのことです。

イラク赤新月社病院
MSFがこの病院を訪問した時、病院にはほとんど何もない状態でした。それでもスタッフやボランティアが病院におり、外来に5人の患者が来ました。手術室は手術可能な状態になっていましたが、医薬品が不足していました。

物資

MSFは医薬品・医療物資の不足に対応すべく、ケタミン・フェンタノール・ジアゼパムなどの麻酔薬、トラマドール・モルフィン・ディクロフェナックなどの強力な鎮痛薬、外固定機器などの外科器具や、300回分の外科手術キット、150人分の負傷者治療キット、輸血器具などの輸送を手配しています。

イラン

MSFはイランからイラクのアルクット(al Qut)及び国境近くのバドラ(Badrah)に調査チームを送りました。バドラには約一万人の避難民が到着しているといわれています。

イラン政府は1991年の湾岸戦争以来現在も20万人ものイラク難民を受け入れており、今後は生命の危険がある場合に限って難民を受け入れるとしています。イランは40万人を収容できる10のキャンプを国境近くに設立しています。

MSFはイランのクージスタン(Khouzistan)またはケルマンシャ(Kermanshah)難民キャンプ向けに、8万人・3ヵ月分の支援物資を用意しています。

シリア

MSFはハッサケ(Hassake)及びカミシュリ(Qamishli)の町にチームを派遣しています。

激しい空爆から3週間が過ぎたモスルとその周辺地域の医療ニーズに対応するため、外科チームが医療器具を持ってカミシュリからイラク北部に入る準備をしています。モスルでは電気と水道が断たれているとの情報があり、また逆にこの地域で保健医療は適切に機能しているとの報告もあります。

MSFはまた、ハッサケ近くのアルホル(al Hol)難民キャンプ内の医療施設に対し、支援を行う用意が出来ています。MSF医療チームが診療を手伝う他、医薬品、栄養食、簡易水質検査器具、2万人・3ヵ月分のテントなど生活必需品を供給する予定です。イラクで働いていた外国人など143人がアルホル 難民キャンプで援助を受けています。

ヨルダン

MSFはヨルダン西部のアルワイシド(Ar Ruwayshid)難民キャンプでの活動許可を得て、1万人・3ヵ月分の医療・保健関連物資を用意し、医師と看護師が待機しています。現在のところヨルダンへの大規模な難民の動きはありません。
アンマンは、バグダッドの医療チームの医薬品調達など、後方支援基地としても機能しています。

クウェート

MSFは負傷者150人分の治療キット、200人分の火傷手当用品、250人分の外傷手当用品、手術用薬品などの外科医療物資をクウェートに保管しています。更に、栄養治療・水衛生機器、高エネルギービスケット、高栄養ミルク、1万人1週間分の浄水システム毛布、テント、シートもそろえられています。

クウェート政府が設立した人道活動センターは米英軍との強いつながりを持っていますが、これまでのところMSFの独立した人道活動を阻害するような動きは見せていません。

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