ブルガリア:入国管理施設内外での援助、行政に引き継ぎ

2014年06月11日掲載

国境なき医師団(MSF)は、ブルガリアで2013年11月から行っていた入国管理施設内外での移民希望者への援助活動を終了し、管轄局への引き継ぎを開始した。活動場所は、首都ソフィアと、同国・ギリシア・トルコの国境に近いハルマンリの計3施設。7ヵ月にわたって医療、心理ケア、その他の援助を行い、設備環境の改善も支援した。

計3施設に滞在中の移民希望者は1500人。その多くが、内戦で荒廃したシリアを逃れ、安全と保護を求めて、欧州までの危険をともなう長い道のりをやって来た。

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「MSF援助が受け入れ環境改善の実例」

亡くなった家族をしのんで涙を流す人も…… 亡くなった家族をしのんで涙を流す人も……

MSFが援助を開始した2013年冬の時点では、滞在者は暖房設備のないテントで就寝し、50人につきトイレ1基。食糧・住居・医療・心理ケアが不足しているという劣悪な環境で生活していた。

7ヵ月後の現在、管轄局の対応能力拡大が見込まれ、環境も改善されたことから、行政機関への引き継ぎを開始。あわせて、施設内外で滞在している人びとが今後も確実に医療を利用できるよう管轄局に求めている。

MSNのブルガリアでの活動責任者であるスチュアート・アレグザンダー・ジンブルは「問題は残っていますが、今回の3施設は、移民受け入れの環境を改善するために欧州各国の管轄局がとるべき対策の実例です。MSFの撤退後も引き続き改善が進み、その水準が維持されることを願っています」と話す。

MSFの懸念点は、地元当局が衛生面の水準を維持できるか否かだ。健康リスクが高まる恐れがあり、これまでにもA型肝炎の流行に至った例がある。

慢性疾患・心理ケアも提供

7ヵ月の活動でMSFが行った診療は合計7700件余り。そのうち1725件は5歳未満児、990件は周産・産褥期の女性が対象だった。施設外の一時滞在キャンプでMSF医療コーディネーターを務めたカルラ・ペルッツォは「糖尿病や高血圧などの慢性疾患治療が必要なシリア人難民が大勢います」と指摘する。いずれも、継続的な医療ケアを行わなければ命にかかわることもある慢性疾患だ。

MSFはさらに、60人余りに心理ケアを提供。多くの人が、暴力被害や拷問による心的外傷を負っており、非常に深刻な影響が見られた。欧州連合(EU)の最低限度の受入環境水準に則れば、移民希望者には、医療・心理ケアのほか、拷問・性暴力被害者や身体障害者を対象とした専門ケアも提供されなくてはならない。

ペルッツォは「戦争や紛争、暴力を逃れてきた人にとって心理面の支援は大変重要です。MSFが対応した患者の中にも、拷問を受けた人や、家族を拉致・殺害されながら、自身の身を守るために逃れて来た人がいます。そうした体験を経て、到着後も先の見通しがないことはわかりつつ、欧州までの長く危険な道のりをやって来るのです」と説明する。

ブルガリアでは6月中に、不法入国防止の強化策として、陸上の国境線30kmにわたるフェンスの設置を完了する予定だ。EUも黙認している施策で、2012年にはギリシアが実践した。ここ何ヵ月かのブルガリア入国者数は大幅に減少している。

移民・難民の到着ピークに

MSFが活動した3施設の状況は改善されたが、欧州各国の国境における移民・難民の待遇という、より広範な問題は解消にほど遠い。EUの方針では最低限度の受入環境水準と十分な保護が保証されることになっているが、各加盟国は依然として厳格で抑圧的な措置を講じ、対象者の苦難に追い打ちをかけてきた。

MSFにおける移民の人道問題顧問、オレリー・ポンテューは次のように訴える。 「夏には移民・難民の数がピークを迎えます。欧州の陸上の国境は大部分が閉鎖されています。そのため、シリアやエリトリアの危機的状況を逃れた大勢の人が、命がけで海路を選ぶのです。欧州にたどり着いても、人間らしい待遇はめったに受けられません。速やかな改善が求められます」

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