チリ:「家屋は、文字どおり高潮にのみこまれてしまいました」(3月12日現在)

2010年03月19日掲載

チリに入った国境なき医師団(MSF)は、2月27日にこの国を襲った地震で深刻な被害を受けたマウレ州とビオビオ州で、衛生用品キット、避難所用のビニールシート、毛布等の、医療物資や救援物資の配布活動を拡大している。さらに、心理療法士のチームが、被災者に寄り添う心理ケア担当スタッフの研修を支援している。

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地震発生直後の数日間

地震、余震、そして津波により、内陸部、沿岸部とも町は大きな被害を受けた 地震、余震、そして津波により、
内陸部、沿岸部とも町は大きな被害を受けた

アルゼンチンから派遣されたMSFのロジスティシャン(物資調達管理調整員)、ピエール・ガリグーは、地震発生直後の数日間に遭遇した被災状況をこう説明する。
「海岸から遠い内陸部では、倒壊した建物やがれきが、たくさんありました。一方沿岸部では、余震と津波が重なって、何もかも徹底的に破壊されていました。地震で家が倒壊しても、がれきの中から家財を取り出すことは可能ですが、沿岸部では、家屋は文字どおり高潮にのまれてしまいました」
多くの人びとが家財道具を失い、家も失って不安定な仮の避難所で野宿している。MSFはまず人びとの生活環境の向上を目指し、衛生用品キットとビニールシート、ロープ、毛布、貯水容器などを配布している。

タルカ市北部の丘陵地帯にあるリカンテン村に住む大工の棟梁マリアーノ・ペレスは、次のように語る。 「地震後、村は絶望のどん底に突き落とされました。水も電気も途絶え、明け方にはたくさんの家が壊れているのが見えました」
ペレスの自宅の天井も落ち、息子が部屋に閉じ込められた。やっとのことで息子を救い出し、今では被害が自宅だけにとどまり、家族が無事だったことを喜んでいる。ペレスは、村の体育館に設けられた倉庫で救援物資の受け取りと仕分けを担当する市民団体に加わっている。d
「チリ国内や外国からの寄付は、自分たちが孤独ではなく、気にかけてくれる人びとがいることに気づかせてくれます」

精神的ショックを受けた人びと

MSFの複数のチームが、マウレ州とビオビオ州内の援助ニーズを調査した MSFの複数のチームが、
マウレ州とビオビオ州内の援助ニーズを調査した

地震とその後の強い余震によって、さまざまな喪失を被った人びとは、深い精神的ショックを受けている。新たな余震のたびに、緊張と恐怖が高まっていく。コロンビアから派遣されたMSFの心理療法士、リナ・マリア・ペーニャ・ペニャランダはこう説明する。

「ある女性とその4人の子どもと一緒にいたときに余震が起こったことがありました。女性が泣き出したので、なだめて落ち着かせようとしました。彼女は私たちに帰ってほしくなかったのです。彼女の足はひどく震え、泣き止むことができずにいました。私たちは長い間、彼女のそばにいなければなりませんでした」

子どもたちは特に地震の影響を受けている。リカンテン村のベルナディタ・ソトという女性は、3歳になる息子が毎晩嘔吐し、彼女自身もよく眠れないと言う。幼稚園の保育士、マカレナ・ウエルタは語る。
「おびえる子どもたちの避難場所として、フェンスで囲った広場に託児所が設けられました。子どもたちは強いストレスを感じていて、新たに余震が起こるたびに泣いています。しかし同時に、子どもたちは言いつけをよく守り、地震が起きたら、広い草原の真ん中へ避難することを知っています」

マウレ州で活動するMSFの心理療法士は、チリ保健省を支援して、心理療法士、ソーシャル・ワーカー、医学生など128人のボランティアの研修を共同で行っている。ボランティアは沿岸部の各地域に配属され、被災者が正常な状態を取り戻せるよう援助することになっている。また心理療法士は、子ども向けのカウンセリングやグリーフケア(※)の講習会を通じて、ボランティアチームを率いる45人の研修にも協力している。

  • グリーフケア:大切な人を失い、大きな悲嘆(グリーフ)に襲われている人を支えるケア。

救援物資の配布

タルカ市とコンセプシオン市内外にあるMSFの活動場所では、毎日スタッフが地方や政府当局と協同して最も差し迫ったニーズの特定に努めている。その後、MSFのロジスティシャン、医療スタッフ、心理療法士がチームに分かれ、トラックに物資を積み込み、援助の必要な周辺地域へと向かう。沿岸部に近い地域では、MSFの専門家が人びとに医療物資を配布し、心理ケアも提供している。

MSFはこれまでに10ヵ所を超える病院と診療所に医療物資を寄贈した。先週は主要ニーズが明らかになった村で、衛生用品キット2000セットを配布し、さらに来週配布する3000セット分を準備している。このキットには、バケツ、タオル、練り歯磨き、縫い針と糸などの生活用品も含まれている。こうした物資は2万6500人以上の被災者に役立てられている。

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