エチオピア・ザンビア:抗レトロウイルス薬による治療の無償提供を開始

2004年02月13日掲載

抗レトロウイルス薬(ARV)による治療は、エイズの発症を遅らせ、患者が再び家族・社会の一員として生きることを可能にする画期的な治療方法である。この度国境なき医師団(MSF)は、新たにエチオピアとザンビアの2ヵ国でARV治療の無償提供を開始した。

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エチオピア:初の無償ARV治療プログラム

1月下旬、北部ティグレー州の町Humeraの病院で、HIV/エイズ患者13人に対するARV治療の無償提供が開始された。同国初のこのプログラムは、エチオピア政府とMSFが共同で取り組んでいるARV治療拡大計画の一環として位置付けられている。

この国におけるMSFの活動責任者は次のように述べる。「この開始を非常にうれしく思います。州や連邦当局と密接に協力し、HumeraでARV治療を行うことは可能だと示すことができました。ARV治療を受ける患者の数を近いうちに増やしたいと考えています。また、このプログラムを前例として、ARV治療が広がっていくことを願っています。」

エチオピアでは、Humera以外の地域でもARV治療導入に向けた取り組みが始まっている。しかしHumeraのように辺鄙な地域の住民は、大都市で受けられるような治療を受けることはできず、治療代を捻出することもできない。またHumeraには、出稼ぎ労働者を含む独身男性が多く住み、性産業に従事する人々も多いため、感染リスクが高い地域だといえる。低地に位置しているため、カラアザール(内臓リーシュマニア症)のような熱帯病も蔓延しており、熱帯病とHIV/エイズの重感染が生じる可能性がある。

ARV治療の提供には、長期にわたる支援態勢が必要になる。今回のプログラムではまず、最も緊急に治療が必要だと診断された患者から治療を始める。その選考基準には、治療に関する指示を理解し守ることができるかどうかも含まれる。また患者に対しては、治療の開始前に、十分なカウンセリングを受ける期間が設けられる。

毎週新たに5000人が感染し、感染者の合計は300万人に達する(国連統計)ほど感染が広がっているエチオピアでは、ARV治療を幅広く実施することでかなりの成果があがると見られている。

ザンビア:農村部におけるARV治療の可能性

ザンビアでは、北東部の貧しい地域NchelengeでARV治療の無償提供を開始した。ザンビアにおけるMSFの活動責任者ペテゲムは、次のように述べる。「政府のHIV/エイズ対策は都市部に集中していて、農村部の患者が治療を受ける機会はほとんど閉ざされています。これは非常に残念な状況です。私たちは、HIV/エイズ治療は複雑すぎて農村部では実施できないという見方に異議を唱えます。このプログラムの成功が、国連、他のNGO、ザンビアを援助している国々、ザンビア政府などが農村部でのエイズ対策を強化する契機となることを期待しています。」MSFチームは、村々を見て回るなかで、HIV/エイズによりコミュニティの崩壊が進む一方であることを日々痛感している。農村部での治療プログラムの大幅な拡大が不可欠であることは明らかである。

WHOの推計によれば、ザンビアの農村部におけるHIV感染率は2004年には22%に達する。貧困、非識字、栄養障害、治療を受けられないといったことが要因となっているが、感染の拡大に歯止めをかけられない最大の原因は、農村社会の閉鎖性にある。感染者であることは不名誉であり、さまざまな悪影響がもたらされるため、患者の大半は、感染を明かして助けを求めようとはしない。

多くのアフリカの農村部と同様にNchelenge地域でも、効果的な感染拡大防止策はこれまでほとんど実施されてこなかった。ペテゲムは、「病院が遠く、患者が薬代として毎月4万クワチャ(9米ドル)を支払わなければならないなど、農村部での治療には多くの障害があります。ほとんどの農民には全く収入がなく、食べる物にも事欠く状況です。薬代4万クワチャなど、問題外なのです。」と述べた。

MSFは一昨年より、NchelengeでHIV/エイズ患者の治療を行ってきたが、現在治療を受けている患者350人のうち約3分の2は、ARV治療を受ける予定である。2005年末までに、400人をARV治療対象者に含めたいと考えている。

アフリカにおけるMSFのARV治療

MSFは、今こそアフリカでエイズ治療を強化する時だと考えており、すでに、コンゴ民主共和国、マラウイ、ケニア、南アフリカ、ウガンダ、ジンバブエ、モザンビーク、ブルンジ、ブルキナファソでARV治療を実施し、成果をあげている。全世界では19ヵ国で合計1万1000人のHIV/エイズ患者を治療している。

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