ペルー:ピスコ周辺地域――心の傷に日々直面する人びと

2007年08月29日掲載

ウマイ、ピスコ、そして周辺地域の数十の町では生活は緩やかに正常な状態に戻りつつあり、地震の生存者たちの心には、これまで忘れていた辛い記憶が甦ってきている。現在、心理ケアを提供することが国境なき医師団(MSF)の優先課題となっている。以下はMSFの心理療法士チームによるウマイからの報告である。

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彼らの住まいはウマイの小さな「総合スポーツ競技場」の中にあるバスケットボールコートである。彼らはここでは「忘れられた人びと」として知られている。彼らの家は8月15日に発生した地震で完全に破壊されてしまった。子ども、大人、高齢者、そして数匹の犬たちが、現在、仮設テントやビニールシートで作り上げた小屋の中で暮らしている。

住民約6千の小さな町であるウマイは、ピスコから45kmに位置している。地震で大きな被害を受けたため、破壊された教会の近くに今でも住み続けている住民は、以前の3分の1しかいない。

ウマイでの心理ケアの様子 ウマイでの心理ケアの様子

今朝、総合スポーツ競技場に住む人びとは、MSFの心理療法士たちが開催した「雑談会」と名づけられた心理教育的なグループセッションに出席した。担当者のパトリシア・サラザール(ペルー出身)とミシェル・シュッツ(ルクセンブルク出身)は、ピスコ周辺で心理ケアプログラムを展開する5人編成のMSFチームのメンバーである。「雑談会」は、一連のゲームとグループディスカッションを行うもので、人びとが自分の思いを表現し、地震など心に傷が残る可能性が高い体験を経た後に、自分の感情をコントロールできるようにすることを目的としている。

シュッツは説明する。「私たちは、食欲不振、不安、吐き気、不眠の症状は特別なことではない、と説明するよう努めています。非常に特異な体験の後では、このような反応が起こるのはごく当たり前です。被災者は愛する者を失っていることも多く、また地震によって人びとの生活は混乱に陥り、日常生活は崩壊してしまいました。嘆き悲しみ続けている人も多く、再び地震が起きるのではないかという恐怖も未だに大きいのです。」

MSFはピスコ、そしてより内陸部において、医療ケアと並行して心理ケアプログラムを開始し、また毛布、調理器具、衛生キットの配布も行っている。

子どもにお絵かきのクラスを行う 子どもにお絵かきのクラスを行う

シュッツが小さな子どもたちにお絵かきのクラスを始める一方で、サラザールは大勢の大人と高齢者を集め、集団で行うパントマイムのようなゲームをする。第1のグループは家のふりをする。この家は崩壊することはなく、その代わりにグループは笑い転げた。「雑談会」の終わりに、ある女性は明らかに感激した様子でサラザールに感謝の言葉を伝えた。これが、彼女が被災後に受けた唯一の援助だったと。希望者は、心理療法士による個別のカウンセリングを受けることもできる。

屋外にある家具の上に置かれたテレビの脇で、子どもたちはお絵かきを終えた。10才のマリア・ルイサは元気一杯だ。今日のメッセージを考え出したのは彼女である。このメッセージは段ボールで作られた小屋の側面に貼られることになっている。「困難に直面したときこそ、私たちは団結し、皆が仲良く、友情と愛と信頼、そして優しさを持って生きなくてはならない。」

しかし、シュッツが、地震が起きた時の様子をより深く探ろうとマリア・ルイサに話しかけると、あの暗く、冷たい夜の記憶が浮かび上がってきた。長々と続く騒音とすさまじいほどの粉塵がまだそこにある。彼女の目には涙が溢れた。

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