モンゴル:奥地の県で命を脅かす厳冬に備える

2010年12月22日掲載

2009年、モンゴルは深刻な水不足の夏の後に「ゾド」(極寒の冬)が到来し、甚大な被害を受けた。大雪と-40度から-50度の寒さのため、へき地に住む住民は医療を一切受けられず、また、病院と診療所も被害を受けて、乳児死亡率が大幅に上昇し、政府は国家非常事態宣言を発動した。この事態を受け、国境なき医師団(MSF)は被害が最も深刻だった県で、調査のためのパイロットプログラム(※)を実施した。

  • パイロットプログラム:今後の活動内容を検討するために先行して行うプログラム。

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オブス県でパイロットプログラムを実施

厳冬下で雪に覆われたオブス県内の様子。 厳冬下で雪に覆われたオブス県内の様子。

MSFは、雪解けを迎えた晩春に調査チームを派遣し、厳冬による被害が最も大きかった県で、住民が次の冬に備えるためのパイロットプログラムを先日終了した。

パイロットプログラムを実施したのは、9月から11月の初めにかけて、8万人の住民の7割が「ゾド」による被害を受けたモンゴルの北西部にあるオブス県である。

モンゴルにおけるMSF活動責任者クリスチャン・フェリールは語る。
「昨年はゾドにより、母親と新生児の健康が危険にさらされました。さらに医療施設の暖房システムが過度の使用により故障し、部分的に閉鎖する病院もありました」

プログラムの対象地域と概要

遊牧民家庭へ基本的な応急処置用品とリーフレットを配布した。 遊牧民家庭へ基本的な
応急処置用品とリーフレットを配布した。

冬のオブス県への交通手段は主に飛行機である。彼らが暮らすなだらかな起伏のある草原は、11月から4月までは雪に覆われるからだ。一方、夏は首都ウランバートルから車で3日間かけて国土を横断することも可能である。

大半の人びとは遊牧民で、小さな集団を作り、それぞれ離れた場所に「ゲル」と呼ばれる大型のテントを張って暮らしている。ほとんどが山羊、羊、馬、ラクダ、牛、ヤクを飼育して生計を立てているが、昨年のゾドの間に高い割合で家畜が死亡し、多くの遊牧民が貧窮している。そのため、この冬は病気のリスクがさらに高まっている。

プログラムでは、県内の19の郡のうち、県都からの距離が遠く、「ゾド」による5歳未満児の死亡率が高かった5つの郡が活動地として選ばれた。

パイロットプログラムの内容は多岐にわたった。これらの活動には、5つの地域医療施設におけるインフラの改善、県および郡の病院への不可欠な医薬品と物資の予備分の供給、3000世帯の遊牧民家庭への応急処置用品の配布、16人の地域の医官に対する補習研修と医薬品の提供が含まれる。

また、MSFはプログラム対象とした診療所で、電源装置および予備電源装置を修理し、病棟の窓の断熱性を上げた。

プログラムの医療コーディネーターを務めたマーク・ストーバー医師は語る。
「地方レベルの医官は、教育レベルも年齢もまちまちです。60代の人もいれば、20代前半の人もいましたが、皆熱意にあふれ、勉強熱心でした。研修では、医官が医療上の緊急事態をすぐに認知できるようにすることに力を入れました。また、冬に最も多い病気をできるだけ網羅しました」

遊牧民に向けた活動では情報伝達が課題

物品やリーフレットの配布は、集落にいる医療アシスタントとともに行った。 物品やリーフレットの配布は、
集落にいる医療アシスタントとともに行った。

遊牧民家庭への基本的な応急処置用品の配布は、情報伝達などの面で難しい部分もあった。離れた場所にあるゲルで暮らす人が多いことと、携帯電話や固定電話がないためである。

フェリールは語る。
「結局、効果があったのは口伝えでした。配布についての口コミが情報を広めてくれたのです」

モンゴルでは厳しい冬が始まった。MSFは春に戻ってプログラムを評価する予定である。その間、MSFは首都ウランバートルで結核に特化したプログラムと、首都郊外の粗末なゲルで暮らす家族の医療ニーズについて調査を進めている。