家は壊れ、水も電気も使えない町 傷ついた体験は今も——

2018年07月18日

がれきの山となってしまった町に、市民が戻り始めている。イラクの都市モスルで、過激派組織「イスラム国」とイラク軍の戦いが終結して1年。住宅や医療施設など、今も町のいたるところに地雷や仕掛け爆弾が残っている。多くの医療施設が破壊されるなか、国境なき医師団(MSF)はモスル西部で産科病院を、東部で外科・術後ケアセンターを運営している。ナシュワンさんは、外科・術後ケアセンターで治療を受ける患者だ。 

進まない復興

戦闘で負傷し前線で救急処置を受けた人びとは、術後の追加処置を何ヵ月も受けられないまま、苦痛を抱え続けている。こうした患者は、損傷した手足や筋肉の機能を回復し、これ以上身体が動かなくなるのを防ぐため、追加手術や痛みの管理、理学療法が必要だ。また、多くの人が戦闘で傷ついた体験を引きずり、愛する人を失う悲しみに耐えている。心理ケアも緊急に必要だ。 

人びとは日々の治療を受けるのも苦労している人びとは日々の治療を受けるのも苦労している

モスル西部の荒廃は特に激しい。家は壊れ、水も電気も復旧しないまま、危険な環境で自宅を再建しようとする人が多いため、けがも絶えない。衛生環境も悪く、病気のリスクが上がっている。だが、13ヵ所あった病院は、9ヵ所が紛争で破壊され、再建は遅々として進んでいない。ベッドも1万人あたり5つしかなく、国際的な最低水準をはるかに下回っている。 

町へ戻る人が治療を受けられるように

MSFの外科・術後ケアセンターで診療する医師らMSFの外科・術後ケアセンターで診療する医師ら

 MSFは2017年、モスル市とその周辺で暴力に巻き込まれた人びとへの救命診療にあたった。外傷患者の容体を安定させる施設をモスル西部と東部で運営するほか、救急、集中治療、外科、産科医療などを行う病院を4ヵ所で運営した。現在は、モスル西部で産科病院、東部で外科・術後ケアセンターを運営している。

外科、術後ケアのほかに、慢性疾患治療や心理ケアも必要とされている外科、術後ケアのほかに、慢性疾患治療や心理ケアも必要とされている

MSFはアル・アバシに診療所を開院。非感染性慢性疾患(NCD)と心理ケアの治療にあたっていく。また、アル・アバシとアル・シャジェラで給水設備の改修も行う。完成後は清潔な飲料水を推定3万5000人に提供できる見通しで、水媒介性疾患のまん延を予防していく。

ハウィジャ市では一次医療診療所を開院。近いうちにここでも、NCD治療と心理ケア、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康)を受けられるようになる。ハウィジャに戻る人が増えているため、MSFはハウィジャ市立病院で救急診療も行っていく。 

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