「武装した男が病院で発砲」平和な町が一変、泥沼と化す抗争

2018年07月13日掲載

武装勢力の兵士ら武装勢力の兵士ら

2013年以降、イスラム教徒主体の武装勢力「セレカ」と、キリスト教徒が主なメンバーの武装勢力「アンチ・バラカ」の武力衝突に端を発する情勢不安が続く中央アフリカ共和国(以下、中央アフリカ)。現在も国民の5人に1人が国内外で避難生活を送る。  

国内で避難生活を送る人の数は69万人、周辺諸国へ逃れた難民は57万人に上り、家を追われた避難民の数は人口450万人のうち約126万人に達する。 2014年から国連中央アフリカ多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)が配置され、同国で平和維持活動(PKO)を展開しているが、依然として状況は不安定だ。

任務を終え帰国したポール・ブロックマン任務を終え帰国したポール・ブロックマン

2018年4月から複数の民兵組織が勢力を拡大し、情勢はさらに悪化している。中央アフリカ各地で襲撃事件が相次ぎ、5月中旬には「最後の平和な町」といわれたバンバリ市にも波及。バンバリで地域病院の外科・小児病棟を支援する国境なき医師団(MSF)も被害に遭った。MSFの中央アフリカ活動責任者を4ヵ月間務めたポール・ブロックマンは、激しさを増す暴力への懸念を強めている。

5月中旬以降、バンバリで何が起きているのですか。

犠牲者の墓を掘る避難者(2017年3月14日撮影)犠牲者の墓を掘る避難者(2017年3月14日撮影)

激しい戦闘が5月15日の朝に始まりました。一触即発の緊張状態にある中央アフリカでは、小さな火種が大爆発につながります。

発端は前日の5月14日、バンバリの南に伸びる道路上で男性2人の遺体が見つかったことでした。その晩には300人が病院の敷地に安全を求めて避難してきました。

翌朝に突然、町中で銃を連射する音が聞こえ、負傷者が病院に到着し始めました。何世帯もが一家全員、銃撃で負傷していました。あの週、バンバリは戦争状態でした。5月中旬~6月中旬の負傷者数は36人でしたが、病院に来られなかったケースも多く、実際にはもっと多くの負傷者がいたと思われます。

紛争はイスラム教徒とキリスト教徒の間で起きているのでしょうか。

鉱物資源に恵まれた中央アフリカの国土鉱物資源に恵まれた中央アフリカの国土

いいえ。中央アフリカの紛争は宗教対立より遥かに複雑な事情が絡んでいます。2013~2014年に起きた紛争当時よりかなり多くの武装勢力が活動している上に、その同盟関係も実に素早く入れ替わり、それも地域別に異なっています。これは宗教間の緊張を超えて、支配権や資源、影響力を巡る争いです。

真っ先に苦しむのはいつも民間人です。現在、数千人の住民が川を越えて戦闘から逃れようとしています。診療所からはさらに遠ざかり、受診どころではなくなります。道路の封鎖で病人や負傷者も足止めされており、非常に心配な状況です。

バンバリは「武器の持込禁止地域」とされていました。なぜ暴力がこれほど激化したのでしょうか。

戦闘から逃れる途中で銃撃された女性
戦闘から逃れる途中で銃撃された女性

 2017年2月、国連中央アフリカ多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)が武装勢力を追い出し、バンバリは武器のない町として宣言されました。しかし武装勢力はバンバリ周辺の村々にとどまって、避難者や住民から税金を取り、物品を盗んで資金を集めていたのです。そして、5月15日に銃撃が始まったというわけです。

現地にはどんな医療ニーズがあるのでしょうか。

野外診療を行うMSFチーム(2017年8月9日撮影)野外診療を行うMSFチーム(2017年8月9日撮影)

この国で突出して多い病気が、蚊を媒介に感染するマラリアです。野外で寝泊まりせざるを得ない避難者は蚊に刺されるリスクが激増します。

5月中旬の戦闘後、MSFはバンバリの8km西にある避難所で移動診療を始めました。初日に診療を受けた165人のうち120人がマラリアに感染していたほか、髄膜炎も2件ありました。

MSFはバンバリでの援助活動を続けられているのでしょうか。

MSFが支援するバンバリの診療所(2017年5月17日撮影)MSFが支援するバンバリの診療所(2017年5月17日撮影)

困難な状況です。5月30日、事態はさらに悪化しました。夜間にバンバリにあるMSF宿舎へ武装した男らが押し入り、強盗に遭ったのです。幸いスタッフは軽傷で済みましたが、事件を機にチームの大半が首都バンギへ一時退避することに。この病院が襲われるのは、これで3度目です。侵入者たちは患者の中に敵が紛れていないか探し回り、味方を連れて出て行きました。

最新の情勢を調査し、バンバリに残った少人数のチームを支援するため医療チームを派遣しました。6月15日から外科と内科の診療を再開できましたが、まだ再稼働できていない医療施設もあります。

人道援助スタッフや医療施設は、もはや尊重されないのでしょうか。

病院に武装した男たちが来て発砲し、病床から患者を連行するような行為は決して容認できません。病院は誰もが安全に来院でき、危害を加えられることはないと確信できる場所であるべきなのですが、バンバリではそうなっていません。そんな危険な場所で治療を受けたり働いたりする気が起きるでしょうか。MSFチームは非常にもどかしい思いを抱えています。  

中央アフリカ緊急援助活動にご協力ください

寄付をする

※国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。 

関連情報