リビア:収監者への拷問と医療の悪用――MSFはミスラタでの一部活動を中止
2012年01月27日掲載
リビア北西部のミスラタ市において、刑務所収監者が拷問を受け、必要な治療も妨げられていることを理由に、国境なき医師団(MSF)は、同市の複数の刑務所で行っていた活動の中止を発表した。拷問で受けた傷を医療従事者に治療させ、回復した患者をさらに拷問するというやり方は、明らかに医療活動の悪用である。MSFの医療チームは、このような治療要請を、断固として拒否している。

ミスラタのカスル・アハメド病院 で収監者を治療するMSFの
理学療法士(2011年9月撮影)。
MSFベルギー事務局長クリストファー・ストークスは話す。
「MSFの医療活動を悪用したり、妨害したりしようとする役人もいるのです。患者たちは取り調べの途中で私たちのもとに連れられてきます。取り調べが続けられる程度まで回復させるためです。とても容認できません。MSFの役割は、戦傷者と病気の収監者に医療を提供することであって、拷問を続行させるために、回復を手助けすることではありません」
2011年8月からMSFのチームはミスラタで、戦闘により負傷した収監者を治療。その後、MSFの医師たちが、取り調べ中の拷問負傷者に対応するケースが増加した。取り調べは刑務所外で行われており、MSFは合計で115例の拷問による負傷を治療し、すべての事例をミスラタ市の所管局に報告している。
2012年1月3日には、拷問の即時中止を訴える、MSFの事前の要請にもかかわらず、最も痛ましい事件が起きた。MSFの医師は刑務所外の取り調べ施設から戻った14人の収監者を治療したが、うち 9人が無数の傷を負っており、明らかな拷問のあとがうかがえた。医師らは専門治療のため、病院に緊急搬送しなければならない患者が多いことを、リビア軍保安部門の取り調べ担当者に通達したが、13人は最低限の治療も受けられないまま、取り調べ施設で再び拷問を受けた。
1月9日にMSFは、関係当局との話し合いの末、ミスラタ軍事評議会、ミスラタ保安委員会、リビア軍保安部門、ミスラタ地域住民評議会に公式書簡を送付し、すべての収監者虐待を即時中止するよう改めて要請した。
ストークスは述べる。
「その後具体的な反応はなく、その代わりに、MSFのチームは新たに4人の拷問負傷者の治療にあたりました。そのため、私たちは刑務所での医療活動を中止することを決めたのです」
一方で、ミスラタの教育施設や医療施設での心理ケア活動、トリポリとその周辺部の難民、国内避難民および3000人のアフリカ系移民への援助は継続する予定である。
MSFは、リビア内戦中の2011年4月から、ミスラタで活動を続けていた。同年8月には、市内の複数の刑務所で活動を開始し、外科手術を含む戦傷者への治療や、骨折患者への継続的な整形外科治療を行ってきた。これまでにMSFの医療チームは2600件の診療にあたったが、そのうち、311件が暴力による外傷だった。
MSFは2011年2月25日からリビアで活動している。医療活動の独立性を保つため、リビアにおける活動は民間からの寄付金のみで運営し、いかなる政府、援助機関、軍事的もしくは政治的な関わりのある団体からも、資金提供を受けていない。
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