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パキスタン:洪水被害への対応を拡充するも、依然山積する課題

2010年08月27日掲載

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国境なき医師団(MSF)が、パキスタンに甚大な被害をもたらした洪水への対応を開始してから4週間以上が経過した。被災地での活動を引き続き拡充する一方で、洪水のために孤立し、生存に欠かせない援助を受けられないままの数千人の人びとがいる地域にも援助を届けるため、活動範囲を拡大する準備を進めている。


清潔な水の供給と衛生状態の改善

給水地点で水を確保する住民。スワート郡の中心都市ミンゴラでは、住民40万人の大半が清潔な水の供給を受けられなくなった。
給水地点で水を確保する住民。スワート
郡の中心都市ミンゴラでは、住民40万人
の大半が清潔な水の供給を受けられなく
なった。

MSFは、水を媒介とする疾患の発生を抑制するため、カイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)のチャルサダ郡、スワート郡、ノウシャラ郡、ロワー・ディール郡、およびダルガイの主要な町とへき地の村々において、清潔な水の供給活動に力を入れている。また、シンド州とバルチスタン州でも、近日中に水・衛生活動を開始する予定である。

さらに、バルチスタン州のデーラ・ムラド・ジャマリとシンド州のサッカルにおいて、近日中に給水設備を調査し、公共の給水施設によって、塩素消毒された水を住民に届けられるようにする計画である。

MSFは、トラック、タンク、仮設給水栓、戸別給水などのさまざまな固定式および移動式の給水地点を通じて、現在パキスタン全体で少なくとも54万リットルの清潔な水を提供している。また、貯水用の容器が足りない家庭には、容器やバケツも提供している。さらに汚染された井戸を浄化し復旧させる地域社会の取り組みも支援している。

ノウシャラ郡におけるMSFの水・衛生活動チームのメンバー、ムハマド・シャキールは説明する。
「小さなポンプを持っている家庭は、自前の水源からポンプでくみ上げ、その水を再び使い始めているところもあるので心配です。水はまだ汚れているので、数々の水を媒介とする疾患の原因になりかねません。私たちは、水が日常的に使用できるレベルかどうかをチェックするシステムを導入できるまで、引き続き安全な水を提供していきます」

極めて重大な役割を担う健康教育担当スタッフ

健康教育担当スタッフは、人びとに健康上のリスクについての認識を高めてもらうため、極めて重要な役割を果たしている。たとえば、被災者が自宅で安全な飲料水を確保できるように、救援物資を配布する際に浄水剤の使い方を教えている。救援キットには、通常20錠の浄水剤が入っており、正しく使用すれば、7人家族が2週間分の安全で清潔な水を確保できる。

たとえば、バルチスタン州のデーラ・ムラド・ジャマリでは、現在の劣悪な衛生状態に加え、すでに問題視されていた栄養失調のさらなる悪化が心配されている。そのため健康教育担当スタッフは、健康・衛生面だけでなく、栄養失調の問題に関する認識も高めようとしている。MSFは、この地域で5歳未満児を対象にした緊急栄養治療プログラムをすでに運営しており、現在少なくとも300人の重度の栄養失調を患う5歳未満児を治療している。

移動診療と医療施設の拡充

パキスタンの洪水被害者を診察するMSFの医療スタッフ。
パキスタンの洪水被害者を診察するMSFの医療スタッフ。

MSFは8月1日以来、パキスタン全域のさまざまな地域で、洪水被災者を対象に1万6664件以上の診療を行っている。これらの診療のほぼ半分は、デーラ・ムラド・ジャマリ、カブラ、ソバトプール、マラカンド保護区、スワート郡、ロワー・ディール郡、チャルサダ郡、サッカル、およびペシャワール郡の遠隔地や人口密集地で活動している14チームの移動診療によって行われた。

またMSFは、急性の水様性下痢の患者数が増加しているのを受けて、スワート郡、ロワー・ディール郡、マラカンド保護区、ハングー郡、コット・アドゥおよびデーラ・ムラド・ジャマリの6ヵ所に下痢治療センター(DTC)も開設した。同時に、コレラなどの水を媒介とする疾患の治療に対応できる人材、医療、および物流管理の規模を大幅に拡大し、ニーズがあれば、すぐに新たなDTCを開設できるように備えている。

カイバル・パクトゥンクワ州スワート郡のミンゴラ市の病院には、経口補水治療と衛生面の促進を目的とする、テント1張を備えたベッド数20床の隔離施設を設置した。バルチスタン州のデーラ・ムラド・ジャマリでは、まだ水の引かない近隣地域から避難してきた多数の患者に対応するため、ベッド数20床のDTCを1つ開設した。パンジャブ州のコット・アドゥでは、ベッド数30床のDTCに新たに70床を追加し、増加した入院患者の治療を行っている。

MSFは現在までに、約1600人の急性の水様性下痢の患者を治療した。

救援物資の配布を継続

マラカンド保護区ダルガイで洪水被害者に配布された救援物資。
マラカンド保護区ダルガイで洪水被害者に配布された救援物
資。

新たな洪水の恐怖がまだ強く残る中、被災者が最低限の生活水準を維持し、病気がまん延するのを防ぐ支援を行うため、MSFは被災者に引き続き生活必需品を提供している。バルチスタン州とカイバル・パクトゥンクワ州では、1万4675セット以上の救援キットと4855張りのテントが被災地で配布されている。標準のキットには、バケツ、石けん、洗濯石けん、歯ブラシ、貯水容器、女性用衛生用品、タオル、プラスチック製カップ、調理器具、ビニールシート、テント、マットレス、浄水剤が入っている。MSFは近日中、新たな地域の調査をする際に、より多くの救援キットとテントを必要とする人びとに提供する予定である。

さらに多くの医療ニーズ、新たな地域での活動

緊急対応コーディネーターのアントニ・トブナンが、救援物資配布のための調査を行う。
緊急対応コーディネーターのアントニ・トブナンが、救援物資
配布のための調査を行う。

バルチスタン州とシンド州の上流地域では、インダス川の水位上昇によって、ウスタ・ムハンマド、デラ・アラール・ヤール、ガナクハなどの地域に住む人びとの90%が避難した。カシモール南部およびシンド州南部でも、洪水のために貧しい家族が高台、主要な運河沿いの土手、線路、道路沿いでの避難生活を余儀なくされている。

現在MSFは、シンド州北部のサッカルにおいて救援物資の配布を開始し、洪水の被災地に無償の医療サービスを提供するために3チームによる移動診療を開始した。シンド州の移動診療チームは1回の活動で、治療を切実に必要としている1000人近くの人びと、とりわけ子どもに出会っている。さらにサッカルでは、現在5歳未満児を対象としたベッド数30床の小児病棟も支援している。

シンド州南部では、さらに多くの救援活動を調整するため、ハイデラバードに新しい事務所を開設した。

調査チームは、カイバル・パクトゥンクワ州、パンジャブ州とシンド州およびバルチスタン州、それぞれで行われている緊急援助活動の格差を確認するために調査を続けている。現在、これらの新たな地域では、被災者の医療・人道援助の膨大なニーズに対応する準備を進めている。具体的には、救援物資の配布と安全な水の提供の継続、および移動診療と下痢治療センターの開設によって対応する予定である。

現在110人以上の外国人派遣スタッフが、パキスタン国内にある既存のプログラム、および洪水対応のプログラムに従事するパキスタン人1200人とともに活動している。


現地活動データ(2010年8月24日現在)

  • 救援物資配布数および配布対象者数:1万4675世帯(約10万2725人)に1万4675セット
  • 配布テント数:4855張
  • 給水量:1日あたり54万リットル
  • 給水地点:52ヵ所
  • 診療件数(病院、移動診療合計):1万6664件
  • 移動診療:14チーム(バルチスタン州)デーラ・ムラド・ジャマリ×3、カブラ×1 / (カイバル・パクトゥンクワ州)マラカンド保護区×1、ソバトプール×1、スワート郡×1、ロワー・ディール郡×1、チャルサダ郡×3 / (シンド州)サックル周辺×3
  • 下痢治療センター:6ヵ所(カイバル・パクトゥンクワ州)マラカンド保護区、ロワー・ディール郡、スワート郡、ハングー郡 / (パンジャブ州)コット・アドゥ / (バルチスタン州)デーラ・ムラド・ジャマリ)

1988年以来、MSFは自然災害や武力紛争による被害、また医療を受けることが困難な状況にあるパキスタン人およびアフガニスタン難民に医療援助活動を行っている。活動地はカイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)、連邦直轄部族地域、バルチスタン州、カシミール地方である。パキスタンにおける活動は、一般市民による寄付金のみで運営し、いかなる政府からも資金援助も受けていない。

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