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パキスタン:最善を尽くし、最悪の事態に備える

2010年08月19日掲載

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人びとを突然襲うような災害が起きた直後、死者や負傷者といった直接的な被害に続いて、その他の健康上の危機が生じる場合が多い。また、これらの危機は、困難な生活環境、衛生状態の悪化、清潔な水の不足、基礎的な医療を受ける機会が制限されることなどに関連して起こる。最近パキスタンで発生した洪水も例外ではない。現在、国境なき医師団(MSF)とその他の各援助団体は、病気の発生を防ぎ、人びとが必要としている医療を届けるため、懸命の努力を続けている。


病気の大半が困難な生活環境と清潔な水の不足に起因

給水活動の様子。スワート郡のミンゴラでは、 40万人の住民の大部分が清潔な水の不足に悩む。
給水活動の様子。スワート郡のミンゴラ
では、 40万人の住民の大部分が
清潔な水の不足に悩む。

現在の危機的状況が始まって以来、MSFは以前から活動していたカイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)とバルチスタン州で医療の提供を続けている。それに加えてシンド州やパンジャブ州などパキスタン国内で被災したその他の州でも、新たな医療施設を建設して活動範囲を拡大するほか、移動診療活動も開始している。

現在、MSFの診療所で最も多く見られる病気は、困難な生活環境と清潔な水が不足していることに関連するものである。

パキスタンにおけるMSFの医療コーディネーター、アハメド・ムフタール医師は語る。
「この2週間に行った1万件以上の診療のうち、私たちが最も多く治療したのは、皮膚感染、呼吸器疾患、そして急性の下痢です。患者の中には、コレラの感染が疑われる人もいます。正式な確認を待つ間も、私たちは患者に必要な治療を続けています」

パキスタン各地でMSFが運営している8チームの移動診療で、これまでに診察を受けた1万人以上の患者のおよそ1割が、急性の水様性下痢の治療を受けている。スワート郡だけでもMSFの医療チームは321件の診察を行ったが、そのうち24人がミンゴラ病院内のMSFのコレラ治療センター(CTC)に入院した。

パキスタンのいくつかの地域ではコレラは風土病であり、カイバル・パクトゥンクワ州内で洪水の被害を受けた地域もその中に含まれる。そのため、コレラ感染の疑い例が何件かあったとしても驚きではない。同州のロワー・ディール郡で2009年8月にコレラが発生したときは、MSFは2500人の患者を治療している。

できる限りコレラを流行させないための活動

コレラはコレラ菌に汚染された水や食物を摂取することにより感染する病気で、不衛生な環境では容易にまん延する。コレラに感染すると、患者は体内に水分を保つことができなくなり、急激な脱水症状を起こす。経口補水液を与えるか、あるいは、より重症の患者には静脈点滴を行うことで、コレラは極めて簡単に治療することが可能である。

ムフタール医師は、こう付け加える。
「コレラは急性の下痢性疾患の重症型の一つです。しかし、コレラ感染の疑い例が数件あったからと言って、大流行がいまにも起こりそうだというわけではありません。私たちは警戒を続け、急性の下痢の人びとをいち早く診断し、治療し続ける必要があります。私たちは急性の下痢の患者を、コレラ患者であるというつもりで治療します。各移動診療と病院で活動にあたるMSFの医療スタッフは、各地域で発生するコレラの疑い例について調査し、確認するという重要な役割を果たしています」

配布活動と並行し、健康教育活動も実施


洪水の被災者へ水の配布を行う。人びとは清潔な水を必要
としている。ノウシャラ郡にて。

洪水と降り続く雨のせいで、状況は明らかにより困難なものになっている。人びとには清潔な水が不足し、生活の衛生状態も悪化し続けている。そのためMSFは、人びとの生活環境が改善され、清潔な水が行き届くように懸命な活動を続けている。

洪水の被害を受けた各地に、MSFは1日あたり30万リットル以上の清潔な水を毎日供給している。ノウシャラ郡やチャルサダ郡では、貯水タンクを各地に設置し、定期的に補充している。また、スワート郡などの他の地域では、MSFは地域社会と協力し、各地に水が供給されるよう、人びとが集まるモスクや学校などで給水活動を行っている。

パキスタン全域で、これまでMSFはさまざまな救援キットを5万239人以上の人びとに配布している。バルチスタン州のファドフェダル運河で配布される衛生用品キットと調理器具セットの中には、マラリア予防のための蚊帳と清潔な水を確保するための塩素系浄水剤も入っている。これら救援物資の配布と並行して健康教育活動も行い、利用できるものを使って水を可能な限り浄化する方法を人びとに指導している。

引き続きより一層の活動が必要

急性の下痢の大流行が発生し、患者数が急激に増加した場合、MSFは援助活動を拡大して治療にあたる準備を整えており、また、MSFが活動を行う大半の医療施設には、すでに緊急キットが置いてある。MSFは、給水活動と衛生用品キットや調理器具セットなどの大規模な救援物資の配布(MSFだけでもこれまでに7000世帯以上に配布している)を行っているが、それによってコレラのみならず、疥癬*、赤痢、腸チフス、マラリアなどの、病気のまん延を防ぐための必要な環境が保たれることを期待している。

*ヒゼンダニというダニの一種が、皮膚の角質層内の寄生して起こる皮膚感染症。

パキスタン各地の洪水被災地で、基礎的な援助物資だけでも人びとに届けるためには、より一層の活動が必要であることは疑いの余地がない。洪水の発生から2週間以上が経過しているが、あまりにも多くの人びとが、依然としてほとんど何の援助も受けられずにいる。

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