スーダン:MSFの活動状況 -2010年8月現在-
2010年08月18日掲載
スーダン北部
ゲダレフ州
国境なき医師団(MSF)は2010年1月、スーダン保健省と協同して、サシチョウバエに刺されることで感染する寄生虫病カラアザール(内臓リーシュマニア症)の無償治療を提供するプログラムを同国東部のゲダレフ州で開始した。MSFおよび世界保健機関(WHO)のデータによると、ゲダレフ州はスーダンでカラアザールの流行が最もまん延している地域であると考えられている。治療センターは、ゲダレフの町から3時間、首都ハルツームの東550kmの遠隔地の村タバラク・アラーにある。MSFは、2010年にカラアザール患者2000人の治療を見込んでいる。
6月中旬、このカラアザール治療センターの周辺地域で調査が行われ、栄養失調が懸念されるレベルに達していることが判明した。MSFは保健省とともに、ガレイシャおよびガラ・アル・ナハル地域で今後数ヵ月間、推定3000人の栄養失調児に入院治療および外来治療を行う計画である。
北ダルフール州

北ダルフール州、タウィラの病院にて。MSFは保健
省を支援し、タウィラの住民に一次医療と二次医療
を提供。また、保健省スタッフを対象に研修を実施
している。
MSFは、スーダン西部に位置する北ダルフール州のカグロで診療所を運営し、外来および入院治療、広範囲での予防接種プログラム、通院栄養治療センター、入院集中栄養治療センター兼容態安定のためのユニット、婦人科診療所のサービスを提供している。また、孤立した山岳地帯の村落、ブルゴ、ブーレー(Bourey)、ルゴ、ウセイゲ、タバルディア、ブーレー(Bouley)の6ヵ所でも診療所を運営しており、栄養治療とともに一次医療を行っている。MSFはカグロにおける唯一の医療提供者であり、2005年から現地で活動を続けている。外来診察は、1ヵ月あたり平均で5800件を超える。
MSFは北ダルフール州でこのほか、シャンギル・トバヤ、タウィラ、ダル・ザガワで活動を行っている。このうち、シャンギル・トバヤにあるMSF病院は、困難な治安状況にもかかわらず、小児科医療、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)ケア、カウンセリングをはじめとする一次および二次医療を約5万2000人の住民に提供し続けている。さらに4人の地域保健員が、医療サービスを受けることのできない近隣の村落へ毎日ロバに乗って通い、栄養状態のスクリーニング、基礎的な医療や衛生に関する指導、および患者の経過観察を行っている。MSFが2010年1月~6月の間に行った外来診察は2万件を超え、産前検診は2300件を上回った。また、同病院に556人が入院した。
タウィラ病院では、MSFは保健省とともに、現地の住民およびルワンダ、ダリ、アルゴの3つの国内避難民キャンプで暮らす人びと、合わせて約2万8600人に医療を提供している。2010年1月~6月の間にMSFが行った外来診察は2万件近くにのぼり、産前検診は2000件を超えた。
2009年12月、MSFはスーダンとチャドの国境に近いダルフール北西部のダル・ザガワ地域で、1年間の短期援助活動を開始し、この地域にある5つの診療所を支援するとともに、暴力に起因する緊急事態への対応も行っている。今年1月以来、MSFはダル・エル・サラム、エル・ファシール、ジェベル・マラの各地域で数多くの緊急対応に着手し、医療キットや医薬品の無償提供、救援物資の配布、トイレの建設、集団予防接種などを行っている。
紅海州
MSFは、スーダン北東部に位置する紅海州の州都ポート・スーダンにある保健省所管のタガドム病院で、リプロダクティブ・ヘルスケアを提供している。紅海州では、女性の約98%が何らかの形で女性器切除を受けており、それが各種の深刻な内科的および産科的合併症を引き起こしている。MSFは、無償で質の高い産前・産後ケアを提供し、「女性器の再封鎖」については、それをいかなる場合にも認めない「ゼロトレランス(不寛容)」方式をとっている。つまり、出産のためにこの病院を訪れる女性器切除を受けた女性は、女性器を再縫合(再封鎖)されることはない。また、MSFの地域保健員は、女性器切除が健康にもたらす悪影響について説明するほか、分娩時に合併症が起きた場合には医療ケアを求めることが大切であると啓発活動を行っている。今年前半の6ヵ月間で、MSFは6300件を超える産前検診を行い、805人の新生児の分娩を介助し、32件の帝王切開を行った。
暫定統治地域
MSFは2006年以来、石油資源に恵まれた暫定統治地域のアブエイで活動している。アブエイ地域北部では、外来患者向けの診療所を通じて一次医療を提供するとともに、5ヵ所で移動診療を行っており、1ヵ月あたりの外来診察は約2300件にのぼる。
近くのアゴクでは、医療チームが入院治療、リプロダクティブ・ヘルスケアおよび栄養失調の治療を含む、一次および二次医療を提供している。2010年5月、MSFは5700件を超える外来診察を行い、100人以上の患者を入院病棟に、また135人の女性を産科病棟に入院患者として受け入れた。1月~5月の間に栄養失調で治療を受けた子どもは1372人である。入院患者は4月と5月に増加したが、6月からは作物の植え付けの季節であるため、その数は減少した。
アブエイ地区では緊張が高まったため、治安状況が悪化している。最近の出来事を受けて、MSFは移動診療の一時停止を余儀なくされた。一方で、アブエイの町で活動するスタッフを増員した。
スーダン南部
北バハル・エル・ガザル州
アウェイル市民病院で、MSFは保健省と協力して妊婦と小児の死亡率の減少、栄養失調の治療、緊急事態への対応に取り組んでいる。MSFは、帝王切開を含む外科手術を行い、婦人科および産科の診療と、産前・産後検診や予防接種をはじめとする母子保健医療を提供している。毎月の産前検診は約4200件、同病院で出産する女性は200人を超え、小児科の診察は6000件にのぼる。病院には入院集中栄養治療センターがあり、通院栄養治療プログラムも受けられる。2010年初めから7月の第1週までに、重度の急性栄養失調で治療を受けた子どもは約1880人、前年同期に栄養失調で治療を受けた子どもの数とほぼ同じである。
西バハル・エル・ガザル州
MSFは2010年8月、ラジャ病院で活動を開始する計画である。
中央エクアトリア州
毎年コレラが発生している南部スーダンの首都ジュバで、MSFは、コレラ発生の危険にさらされている地域社会への健康教育や清潔な水の提供などの予防活動を行っている。衛生状態を改善し、水が媒介する疾患による死者を減らすため、MSFは既存の10ヵ所の井戸を修繕するとともに、新たに7ヵ所に井戸を掘り、地域にある200以上の井戸の水質を検査した。また、ジュバで唯一の小児病院である、保健省所管のエル・サバ病院のために新しい給水システムを建設した。これは、病院内に清潔な水を汲み上げる井戸を掘り、給水車を提供し、検査室や小児・栄養治療病棟へ配水を行うシステムである。
東エクアトリア州
収穫期の狭間で備蓄食糧が不足する4月から9月にかけて、急性栄養失調に苦しむ5歳未満児を治療するため、MSFは5月末、カポエタ病院で活動を開始した。ベッド数40床の入院集中栄養治療センターと3つの外来治療センターが開設され、2010年5月末から6月中旬までに約250人の子どもがこのプログラムに受け入れられた。そのうち、50人が入院した。
西エクアトリア州

スーダン南部に位置するヤンビオの病院にて。MSFは、顧み
られない病気の1つであるアフリカ睡眠病に重点を置き活動
を行う。
MSFは、暴力の被害を受けた人びと、特にウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」による攻撃の被害者のために、緊急医療と救援活動を含め、欠くことのできない一次および二次医療を提供している。この地域で一次医療を提供する移動診療チームを活用し、MSFのスタッフが暴力の影響を受けた住民のもとへ直接赴くことで、緊急の治療を必要としている人びとが医療を受けられるようにしている。MSFは、エゾとマクパンドゥの2つの難民キャンプにある保健省施設を支援し、また、ヤンビオとヌザラでは移動診療を行っている。2010年5月、MSFはヤンビオ市民病院の小児科、外来部門、入院部門、リプロダクティブ・ヘルス科への支援と、アフリカ睡眠病を治療するプログラムを開始した。MSFは1月~6月、西エクアトリア州で1万4000件を超える外来診察、200件弱の心理ケアのカウンセリング、約4500人のマラリア患者の治療を行った。5月と6月には、MSFはヤンビオ市民病院で615人の入院患者を受け入れ、74回の手術を行った。
ジョングレイ州
ピボールの町にある小規模な保健省の施設を別にすれば、MSFはジョングレイ州のこの地域における唯一の一次医療の担い手である。この地域の人口は約15万人、周辺の村落は町から遠く離れており、道路は通行不能であることが多い。MSFは一次医療を提供する診療所を運営しており、救急医療、入院治療(ベッド数27床)、外来治療、および産前検診、産科医療、性感染症治療をはじめとするリプロダクティブ・ヘルスのサービスを行っている。今年前半の6ヵ月間で、MSFはピボールで2万9700件を超える診察を行い、318人の新生児の分娩を介助した。同期間、ピボールのチームが行っている通院栄養治療プログラムで受け入れた重度栄養失調児は1222人にのぼった。
レクウォンゴルとグムルクでは、アウトリーチ活動*を行うための小規模な一次医療施設を運営し、一般的な診察、栄養失調の治療、分娩介助、産前ケア、予防接種などの基礎的な治療を行い、より複雑な症例の患者はピボールへ移送している。5月から9月にかけての雨期には、レクウォンゴルとグムルクともにボートまたは飛行機を使わなければ行くこができない。
*アウトリーチ活動:こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること
2010年7月、レクウォンゴルの近郊で牛の略奪を狙った襲撃事件が相次ぎ、MSFは暴力により負傷した男性患者5人の治療にあたった。頭部にけがを負った4歳の子どもと銃で撃たれて負傷した患者4人(2歳、9歳、29歳、30歳)を、MSFがレクウォンゴルで運営しているアウトリーチ活動地点からピボールにある、より大きな診療所へ搬送した。ここで医療チームが容体を安定させたあと、銃弾によるけがを負った患者については、MSFの飛行機で緊急手術のためにボマへ移送した。7月末、治安情勢の悪化により、MSFはグムルク診療所における活動の一時停止を余儀なくされた。栄養失調児のための栄養治療食と医療器具が2度にわたって診療所から盗まれ、また、ピボールからグルムクへボートで移動中のMSFスタッフ4人が、暴力を伴う略奪の被害を受けたためである。今回の活動停止により、治療を受けていた160人以上の重度栄養失調児と、毎週20人ほど来ていた新患が必要なケアを受けられなくなる。安全に活動ができるようになり次第、すぐにグムルクに戻り、活動を再開する予定である。
州北部の遠隔地域にあるランキエンで、MSFは診療所を運営し、約12万7000人の住民のために活動している。また、ピエリとユアイにアウトリーチ活動地点を設定し、呼吸器感染から、やりで突かれた傷の治療まであらゆるレベルの医療を提供している。2010年1月~6月、外来病棟で診察を受けた住民は4万7000人を上回った。また、165人以上がマラリアの治療を受けたほか、170人以上がカラアザールの治療を、104人が結核の治療を開始した。病院に入院した患者は680人近くにのぼり、約2500人の子どもがはしかの予防接種を受け、約1500人の子どもが栄養失調の治療を受けた。
ユニティー州
MSFは、帰属をめぐって争いのある南北境界地域および多数の油田に近いレールという町で医療を提供する数少ない団体の一つである。MSFは、緊急手術、外来診療、医療上の緊急事態や疾病の発生の監視および対応をはじめ、あらゆるレベルの医療ケアを提供している。2010年1月~6月の間に3万4600件を超える外来診察を行い、5000人以上がマラリアの治療を受け、2000人以上の子どもがはしかの予防接種を受けた。650人以上が入院し、そのうちの192人が手術を受け、さらに、これらの手術の4分の3近く(73%)が緊急の外科手術であった。同期間に栄養失調で治療を受けた5歳未満児は1150人を超え、結核の治療のため入院した子どもは119人であった。また、HIV/エイズ治療プログラムに受け入れられた患者は25人で、そのうち4人が抗レトロウイルス薬(ARV)治療を開始した。
MSFは7月、ユニティー州の州都ベンティウで栄養治療プログラムを開始した。これは、治療を受けようとベンティウからレールに来る患者が増えてきたことを考慮した措置である。ユニティー州の栄養状態には憂慮すべきものがあり、この栄養失調の割合の高さは、毎年収穫期の狭間で備蓄食糧が不足して起こる飢餓だけが原因であるとは言い切れない。食糧不足、モロコシなど主食の値上がり、暴力、治安の悪化、住民の避難といった要因が、人びとの食糧を生産し生計を立てる力に直接の影響を与えているのである。活動開始後の2日間で、60人以上の子どもがベンティウで行われている栄養治療プログラムに受け入れられた。
上ナイル州

MSFの看護師リリー・カミンズが、肺炎を患う生後9ヵ月の子
どもを診察する。ナーシル病院の小児病棟にて。
(2009年11月撮影)
MSFはナーシルで病院を、また、ベネショワでは一次医療施設を運営している。エチオピア国境とソバト川に近いナーシルでは2009年、さまざまな少数民族や氏族間の暴力の拡大により治安が悪化した。2010年になって緊張が緩和され、MSFはHIVや結核の治療プログラムの推進に重点的に取り組むことが可能になった。2010年1月~6月、MSFはナーシルとベネショワで2万4000件を超える外来診察を行った。1200人以上がマラリアの治療を受け、2350人以上の子どもがはしかの予防接種を受けた。病院に入院したのは1063人で、そのうち99人が手術を受けた。これらの手術の半数以上(56%)は緊急の外科手術であった。このほか、同期間に1000人近くが栄養失調の治療を受けた。
上ナイル地域の広い範囲が、スーダン南部におけるカラアザールの発生地となっている。カラアザール感染者の数は現在増えつつあり、医療スタッフがその治療にあたっているが、これは1年のこの時期にはまれなことで、新たな流行周期が始まったことを示している可能性もある。MSFは2009年、パグイル、アタル、コルフォルスで発生したカラアザールに対応するため、治療活動とともに発生地域の医療スタッフを対象に研修を行った。また、オールド・ファンガクにある診療所と、上ナイル州マラカルの保健省に対し技術支援および物資の支援を行った。2010年、MSFは400人を超えるカラアザール患者に直接治療を行い、そのうち97%が治癒した。
ワラップ州
MSFは2009年12月、ワラップ州ゴグリアル・ウェストで活動を開始し、まずは外来診療をベースに基礎的な医療を提供した。ゴグリアル・ウェスト郡には病院がなかったため、緊急手術が必要な人びとは、遠くまで多額の費用をかけて足を運ばなくてはならなかった。この地域の約25万人の住民の医療ニーズに応えるため、MSFは入院病棟、薬局、検査室を備えた、最新の診療所を建設した。また、産科医療、緊急の産科ケア、外科医療を提供するため、空気で膨らませるエアーテントを利用した2つの診療施設を設置した。この新しい診療所開設後の6ヵ月間に、MSFは患者を約2万4500人、1ヵ月平均で4000人を治療したが、このうち650人は栄養失調児であった。この数週間で手術も行われるようになり、すでに10人が必須の外科手術を受けている。
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