ソマリア:「この国の健康指標は、結核も含めて世界で最低水準です」
2010年08月13日掲載
ソマリアにおける国境なき医師団(MSF)の医療コーディネーター、ルイ・ネイラが、中南部シェベリ川中流地方の2つの農村地域で開始した新たな結核プログラムについて語る。
ソマリア中南部で基礎的な医療と結核治療を提供
ネイラは、ケニアの首都ナイロビに拠点を置き、ソマリア中南部における活動を支援するMSFチームの一員である。ソマリア中南部では、1300人以上のソマリア人スタッフが8つの地域で医療を提供している。ネイラは、シェベリ川中流地方ならびに首都モガディシオにおけるプログラムの、医療に関する問い合わせ担当を務めている。
MSFは、シェベリ川中流地方の都市部と農村部に設置した4ヵ所の診療所、およびジョハールの助産院のネットワークを通じて基礎的な医療を提供している。6月5日、MSFは農村部のマハディとゴロレイにおいて結核の診断・治療の提供を開始した。
Q:シェベリ川中流地方の結核は、どのような状況ですか?
症例は数多く報告されていますか? また、結核が疑われる症例はすでに出ていますか?
A:ソマリアの結核の状況は、シェベリ川中流も他の地方も同じです。ソマリアの健康指標は、長年世界でも最低の水準にあることがすでに知られており、結核も例外ではありません。世界保健機関(WHO)が発表する統計(2007年以降更新されていない)によると、毎年5500人以上が結核で死亡しています。MSFは、診療所を通じて結核の疑いがある症例を多数確認してきましたが、シェベリ川中流地方でのプログラムが不足していることから、これらの症例の最終診断および治療は極めて困難な状況にありました。また、農村部のマハディとゴロレイでは、状況はさらに切迫しています。それは、MSFの活動拠点の中でも最も近いジョハールでさえ、この2つの農村部からは遠く離れているからです。この地域の住民や遊牧民にとって、治療を受けることは不可能ではありませんが、難しいのです。このような状況にあるため、MSFは結核プログラムを開始し、治療を受けることができなかった結核患者への援助を急いできたのです。
Q:MSFはどのような医療サービスを提供するのですか?
A:結核が疑われる症例は、マハディとゴロレイの一次医療診療所で診察して確認します。患者の検体は、結核プログラム用に設置された臨床検査室で検査を行い、それをもとに診断と治療が行われます。さらに結核患者は、診療所で経過観察、カウンセリング、診断を受けます。また、結核患者の身近にいる人(特に5歳未満の子ども)には診断を行い結核感染の有無を確認します。結核によって栄養失調に陥っている患者には栄養治療を行います。
Q:結核治療について、WHOはいわゆる直接監視下短期治療法(DOTS)を推奨しています。つまり、抗生物質に対する耐性獲得を避けるために、患者は医療スタッフの監視下で薬を服用するということです。ソマリアのように政情不安定な国で、どうすればDOTSを提供できるのでしょうか?
A:WHOが推奨するDOTSは、診療所に毎日通える患者に適用されるものです。住まいが遠くにあるなどの理由で、診療所に毎日通うのが難しい患者については、DOTSを一部変更して提供します。この変更後のDOTSでは、薬の初回投与を医療スタッフの監視のもとで行い、次に診療所に来る予約日まで、自宅で薬の服用を続けます。また、どの患者にも「治療アシスタント」を付けるように指示しています。家族や友人など、患者が処方どおりに薬を飲んでいるか確認してくれる人物です。この「治療アシスタント」は、患者が治療方針を守っているかどうか医療スタッフに連絡をしたり、薬の副作用が出た場合には医療スタッフに知らせたりする責任があります。このような方法をとることで、治療方針を守る患者の負担は軽減されます。さらに、患者は毎日診療所にやってくる必要がないため、結核プログラムをより継続して受けてくれることもわかりました。なにしろ農村部に住んでいる患者にとっては、診療所に毎日来ることが困難なのです。それに、頼れる人もいて、薬を毎日飲むように励ましてくれるのです。
Q:アフリカ南西部諸国では、結核とHIV/エイズの関連性が最近注目されています。また、通常の抗生物質に対する耐性菌が出ていることも報告されています。この2点はソマリアでも懸念されていますか?
A: HIV/エイズや薬剤耐性結核については、ソマリアではほとんど調査が行われていないため、正確なデータはないに等しいのです。しかし、ソマリアでも薬剤耐性は大きな問題になる可能性があるとMSFは考えています。結核治療が提供されている場所はほとんどありませんが、提供されている場合でも治療管理は行われておらず、また、治療薬は多くの場合、民間の薬局で店頭販売されています。つまり、不完全な治療が不十分な期間しか行なわれていない上に、治療薬の品質も信用できないのです。これも、MSFのプログラムが非常に重要な理由です。
Q:この2年間、ソマリアでは政情不安定が続いているせいで、MSFのプログラムの運営は、ナイロビに拠点を置くチームの支援を受けながら、現地スタッフに任されてきました。MSFは、結核の診断・治療について、チームにどのような研修をしましたか?
A:私たちは結核チームのメンバーに、ジョハールのプログラムで働いた経験のある医療スタッフを選んでいます。このように経験と医療技術のあるスタッフに加えて、MSFの結核プログラムで豊富な経験を積んだ検査技師が1人新たに参加しています。また、ケニアでMSFの結核プログラムに従事していた呼吸器疾患を専門とする准医師も1人採用しました。この女性准医師は、ナイロビの拠点からチームを技術面で支援するとともに、できる限り現場にも出かけていきます。結核チームは、結核治療の運営・管理ならびにプログラム全体について4ヵ月間の研修を受けました。研修内容には、MSFがケニアおよびソマリアの他の地域で提供してきた結核プログラムの理論面だけでなく、実務面も含まれています。
MSFは、ソマリア中南部の8つの地域で1991年から活動している。8つの地域は以下のとおり。バナディル地方、ベイ地方、ヒーラーン地方、ジュバ川下流地方、シェベリ川中流地方、シェベリ川下流地方、ムドゥグ地方。
ソマリア中南部でのプログラムは、一般からの寄付金のみで運営し、いかなる政府からも資金援助は受けていない。
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