• English
  • 한국어

RSS

ご寄付に関するお問い合わせ・資料請求は フリーダイヤル 0120-999-199

寄付する

  1. TOP
  2. 活動ニュース
  3. ニュース
  4. シエラレオネ:安全な出産のための待機所

シエラレオネ:安全な出産のための待機所

2010年08月12日掲載

Bookmark and Share

大半の女性にとって当然のこととされている産科診療と産前・産後ケアが、シエラレオネの多くの女性には、ほとんど想像がつかない。世界で最も貧しい国の一つであるシエラレオネでは、助産師、産婦人科医、医薬品が不足し、女性が診療所で子どもを産むことのできる機会は極めて少ない。このため、シエラレオネでは命にかかわる深刻な影響が生じており、妊娠中もしくは出産時に亡くなる女性と子どもの数が世界で最も多い。国境なき医師団(MSF)は、国内の2つの地域で妊婦の医療ケアを行ない、多くの人命を救っている。


診療所における出産時の迅速な処置

アブドゥレ地域保健員が新生児の気道を確保している。母親のアニエスは、数分前にジミ・バグボ診療所で、この女の子を出産した。
アブドゥレ地域保健員が新生児の気道を確保している。
母親のアニエスは、数分前にジミ・バグボ診療所で、この
女の子を出産した。

MSFのシエラレオネ人の助産師フローレンス・ラエは説明する。
「アニエス・ウォディ*は、一人でここにやってきました。もう5時間、陣痛が続いています。彼女にとって今回が初めての妊娠ですが、本当によく頑張っています」
ジミ・バグボ診療所の狭い分娩室は暑い。ラエ助産師は、この19歳の女性の額を濡れた布でふき、脈拍と陣痛の様子をチェックし、胎児の姿勢を触診する。その後、すべてが矢継ぎ早に起こる。アニエスが元気な女の子を出産すると、いつもの決められた処置が迅速に行われる。地域保健員のエリザベス・ハワ・アブドゥレが女の子の赤ちゃんを抱き上げ、彼女の肌にヤシ油を塗って体を温め、出血を防ぐためのビタミンKの注射を行ない、気道を確保し、へその緒を切って留める。

*患者の安全保護のため、仮名を使用。

農村部では、妊婦が診療所で出産する機会はほとんどない

ほんの数フィート離れた診療所の庭の大きなわら屋根の下に、カラフルな服を着た十数人の女性が集まっている。近隣の村々からジミ・バグボにやってきた伝統的な助産師たちである。彼女たちは高揚した気分で歌い、踊り、ドラムをたたいている。ラエ助産師と同僚が、アニエスのような妊婦の多くが安全に出産できるようにと、伝統的な助産師たちを招いていたのだ。挨拶代わりにこう語りかける。
「MSFがこの国で妊娠中や出産時に亡くなる母親の数を減らすためには、皆さんの助けが必要なのです。村に住む妊婦が、助けを求めて皆さんのもとへとやってきます」

特に農村部では、妊婦が診療所で出産する機会はほとんどない。診療所までの道のりは遠く、険しい。救急車もなく、多くの人びとは貧しいためにバスの切符を買うこともできない。徒歩で診療所まで行くには、焼けるような熱帯特有の暑さの中を何時間も歩かなければならず、陣痛が始まった妊婦にはほとんど不可能である。このため自宅出産が通例となっているが、危険性は大きい。

また、十分に研修を受けていない助産師も多く、ゴム手袋や滅菌器具を備えている助産師はほとんどいないため、母親と赤ん坊が致命的な感染症の危険にさらされている。合併症が生じたら緊急の医薬品と輸血と帝王切開が必要であるにもかかわらず、陣痛が始まったあとも、村の自宅でそのまま数日を過ごす妊婦もいる。その後、母親や胎児を救うために手を尽くして妊婦を診療所に連れてきても、すでに手遅れだ。

出産の危険性を避けるために待機所を設置

ラエ助産師が伝統的な助産師に、母子両方にとって診療所で出産するほうがより安全であることの理由を説明する。
ラエ助産師が伝統的な助産師に、母子両方にとって診療所
で出産するほうがより安全であることの理由を説明する。

ジミ・バグボ診療所も農村部にあり、砂地のでこぼこ道を通ってしかたどり着くことができない。多くの患者が、診療所までの道のりをほぼ10時間もかけて苦労して歩いてきた逸話を抱えている。MSFは、陣痛が始まってから妊婦が診療所に来なくてすむよう、診療所の敷地内に待機所を設置している。この施設には、数床のベッドと台所を備えた広い部屋がある。妊婦たちは、妊娠期間の最後の数日もしくは数週間をここで過ごすことで、出産の危険性をある程度避けることができる。ラエ助産師は伝統的な助産師たちに熱心に語りかける。
「皆さんの村の妊婦たちに、MSFの診療所と待機所のことを伝えてください。そして、ここに連れて来てください。私たちは彼女たちを助けることができます。私たちは訪れるすべての妊婦を喜んで受け入れます」

MSFとともに働き、妊婦を出産のために連れてくる伝統的な助産師の数が増えているのを見ると、こうした語りかけは効を奏しているようだ。伝統的な助産師たちは、妊婦が最善の医療ケアを受けられるようにと、自分の報酬の一部を辞退してさえいる。

自宅での出産は危険性が高い

アミナタは、村からジミ・バグボ診療所に来るために4米ドル(約350円)相当のバス代を払わなければならず、家族は節約しなければならなかった。
アミナタは、村からジミ・バグボ診療所に
来るために4米ドル(約350円)相当のバス
代を払わなければならず、家族は節約し
なければならなかった。

今日は、待機所の前の日陰に7人の妊婦が座っている。アミナタ・バインバもその一人だ。彼女は6日前に、故郷のボム・カク村からジミ・バグボ診療所にやってきた。28歳のこの女性は、ここで6人めの子どもを産もうとしており、陣痛がいつ始まってもおかしくない状態にある。彼女は静かな口調で私たちに、5人の子どものうち、いまでも生きているのは男の子1人と女の子1人の2人だけだと打ち明ける。
「子どもの1人は生まれて1週間後に亡くなりました。自宅で産みました」
へその緒を切り、滅菌した状態にしておかなかったために、生まれたばかりの子どもが破傷風にかかってしまったのである。
「村でこの診療所のことを聞き、義母に子どもを預けてここに来ました。赤ちゃんが逆子の状態なので出産は大変そうですが、この診療所では、皆さんが大変よくケアをしてくれます」
アミナタは信頼しきった様子で、微笑みを浮かべながら、そう語る。

産科治療が命を救う

シエラレオネの2005年の妊産婦死亡率は、10万人に2100人の割合である。これはヨーロッパの70倍を超える水準である。また、アフリカ中央部の国々の乳児死亡率は世界で最悪の水準にある。MSFの医療スタッフは5ヵ所の診療所で、シエラレオネ保健省の職員とともに数千人に及ぶ妊婦の産前・産後ケアや産科治療を提供している。急性の大量出血や長時間にわたるお産など、危険性の高い出産や緊急処置が必要な場合には、ゴンダマ基幹病院(GRC)でMSFの医療チームが患者の治療にあたっている。患者が病院に到着したとき、すでに大量に出血をしていたり、ショック状態にあった場合は、緊急事態である。それでもMSFが行う緊急手術によって、ほとんどすべての女性の命が救われており、2009年には全体の96%を超える患者が出産後も助かっている。

Bookmark and Share

関連情報

2010年4月30日
シエラレオネ:母子の医療無償化政策に寄せる期待
2009年12月10日
シエラレオネ:医療費の患者負担で失われる多くの命
2009年3月16日
ジンバブエ:コレラ流行に対するMSFの活動状況-3月6日現在-
2009年1月27日
シエラレオネ:黄熱病の集団予防接種を実施
2008年10月7日
マラリア:単なる善意に留まらない効果的な行動を ―命を救うマラリア治療をさらに多くの患者へ―

[シエラレオネ] に関連した情報を表示