パキスタン:新たに水位が上昇、援助に遅れが生じる(8月8日現在)
2010年08月11日掲載
パキスタンの新たな地域が洪水の被害を受けるにつれ、最初に被害を受けた地域では、水位が上昇している。カイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)とバルチスタン州では、継続的に、時には激しい雨が降り、医療人道援助活動に大きな支障が出ている。国境なき医師団(MSF)は、初期の洪水被害に懸命に対応しつつ、さらに多くの人員を新たな被災地であるパンジャブ州とシンド州に派遣し、現在調査を行っている。
洪水の影響で配給が困難に

ノウシャラ郡では道路が冠水。MSFは救援物資の配布を延
期した。
ノウシャラ郡では、ここ2、3日降り続いた激しい雨の影響で、救援物資の配布予定地が冠水、そのためMSFは、およそ4500世帯分の配布を延期せざるをえなかった。差し迫って配布が必要な生活必需品は、石けん、バケツ、歯磨き粉、調理器具などである。
ノウシャラ郡における緊急対応コーディネーター、アントニ・トブナンは語る。
「大規模な配給を行う予定だったこの場所は、1メートルの水に浸かってしまいました。2日前には乾いていたのですが、急激に水かさが増したのです。それで私たちは、住民の皆さんに、生活必需品の配布を少なくとも1日は遅らさざるをえないと説明しなければなりませんでした。私たちは失望しましたが、本当に助けを必要とする被災者の状況に比べれば何でもありません」
8月第1週の週末、ハングー郡ではこれまでなかった鉄砲水に襲われ、MSFが下痢治療センターと外科治療を運営する病院が被害を受けた。家屋も破壊され避難所にも被害が出た。MSFは、直ちに現地の診療所に支援物資を無償提供した。8月8日朝、現地のチームは自宅を失った数十人について報告し、この鉄砲水の被害に関する情報をさらに集めているところである。
バルチスタン州では、デーラ・ムラド・ジャマリとカブラをつなぐ道路が冠水、MSFはトラックによる目的地への到達を断念し、4輪駆動車を使って1000世帯分の衛生用品と救援物資を配布しなければならなかった。この配布活動は8月第2週を通して続く予定である。
それでもMSFは、飲料水や救援物資のほか、医療ケアをノウシャラ郡、ペシャワール郡、チャルサダ郡の切迫した状況にある数千人と、バルチスタン州マンジョショリ周辺に避難している大勢の人びとに届けている。
さまざまな医療活動を展開

MSFはペシャワールから45分離れたウトマンザイで移動診
療を行っている。
医療活動は洪水の影響で困難な状況ではあるが、それでも移動診療チームが主に学校といった一時避難所でケアを続けている。また、医療施設に足を運ぶこともできず、生活もままならない弱い立場にある人びとの支援を目的とした複数の新たな移動診療が、バルチスタン州、マラカンド保護区、スワート郡、ペシャワール郡で、8月8日に始まる見込みである。MSFは医療施設の支援を継続するが、水位が常に変動するため、現地の人びともそれに伴い居場所を変えざるをえず、定期的な援助の提供が課題となる。たとえば、ノウシャラ郡にあるパッビ病院では、新たな洪水警報に応じて1日の診療件数が100~350件に変動する。
ノウシャラ郡拠点病院では発電機の設置によって、救急処置室が1日24時間、常に開いた状態を保てるようになった。外来部門は、修復されて機能するようになった一方で、雨天の多かった8月第1週の週末には来院者数が減少した。8月6日金曜日の診療件数は320件以上である。提供された3台の救急車は、引き続き1日あたり10件ほどの搬送に利用されている。
MSFが運営する全医療施設で最もよく見られる病気の原因は、依然として生活環境に関連したものである。状況は、洪水以前から運営していたダルガイ、マラカンド保護区、スワート郡などにあるMSFの医療プログラムのものとよく似ている。また、これらの地域では新たに移動診療が始まった。
チャルサダ郡北部の移動診療に従事するパキスタン人のマジド医師は語る。
「私たちが診る患者の3分の1は皮膚感染にかかっています。人びとは非衛生的な環境で、お互い非常に近い状態で生活しているということが大きな要因です。他の症状では、下痢なども多いです」
切実に必要とされる清潔な水

水を運ぶ子どもたち。チャルサダ郡近くの村にて。
疾患を予防する手段の一つは、清潔な水を提供することである。複数のMSFの水・衛生活動チームが、水を地域の人びとに届けようと懸命の活動を続けている。チャルサダ郡、ノウシャラ郡、スワート郡といった場所で、これらのチームは地方の給水システムの復旧に取り組む現地当局を支援しているほか、水を必要とする家族にトラック輸送もしている。
チャルサダ郡における水供給プログラムを運営しているトーマス・バタルデイは語る。
「現在の優先事項は、できるだけ多くの人に飲料水を届けることです。私たちは、8万5000リットル以上の水を毎日人びとのもとに運んでいます。これは、チャルサダ郡内に私たちが設けた21ヵ所の給水地点とは別に行っていることです。また、水の供給システムが再び機能し始めるまで活動は続けます」
給水地点は、ロワー・ディール郡にも設けられているほか、スワート郡でも8ヵ所に(利用者は約10万人)に設けられている。また、MSFはロワー・ディール郡にある郡病院に清潔な水を提供し、ノウシャラ郡では飲料水の供給を復旧するための活動とトラックによる水の輸送を行っている。
新たに深刻な被害を受けた州の調査
最も被害の大きかった地域では、さらに調査が行われる予定である。これは、洪水によって周囲から孤立した地域がまだあちこちにあり、そこには援助を受けていない人びとがいると見られているからである。しかし、ここ数日間は天候がよくなく、MSFはヘリコプターによる調査を行うことができなかった。
パンジャブ州とシンド州の状況が最も懸念されている。ここ数日間降り続いた激しい雨の影響で数十万人が避難、現地当局がこれに対応している。医師2人を含めた5人からなるMSFの調査チームは、8月8日にパンジャブ州ムザファルガル郡を出発し、別のチームが8月9日にシンド州カシモールのニーズ調査を行う予定である。
8月5日夜にヨーロッパを発った最初の貨物機が現地に到着した。この貨物機は、60トンの水・衛生活動用物資、医薬品、テントなどのロジスティック用資材を積んでいる。数日中に、さらに50トンの救援物資が続く。
現在100人以上の海外派遣スタッフが、パキスタン国内の複数のMSFのプログラムに従事するパキスタン人1200人とともに活動している。
関連情報
- 2012年1月6日
- パキスタン: MSF、ハングー郡で2011年に2万人以上の患者を診療-2012年も活動を継続
- 2011年12月13日
- パキスタン:「たとえ大海の一滴でも、患者のために闘う」――ハングー郡で活動した助産師のインタビュー
- 2011年10月14日
- パキスタン:大洪水による避難世帯に医療を提供
- 2011年7月22日
- 論説「隠れみのにされる医療」――クリストファー・ストークス(MSFベルギー支部事務局長)
- 2011年7月15日
- MSF、軍事目的での人道援助を示唆する動きに非難を表明















