ハイチ:「活動は少しも縮小していません」―看護師へのインタビュー―
2010年07月30日掲載
看護師のミシェル・ベック(30歳)は、3ヵ月間のハイチでの活動を終えて帰還したばかりである。現地では、ポルトープランスのデルマ31区にあるサン・ルイ病院で、国境なき医師団(MSF)の医療、ロジスティクス(物資調達、施設・機材・車両管理など幅広い業務)およびアドミニストレーション(財務・人事管理)を統括した。
震災後の問題と現在の医療ニーズ

サン・ルイ病院のテント病院。
サン・ルイ病院は、空気で膨らませたエアーテントの中にある病院です。医療チームは、16人の外国人スタッフと、500人を超えるハイチ人スタッフで構成されています。この病院は、毎週平均して100人の患者を受け入れ、およそ300件の内科および外科の診察を行なっています。
いまでは地震の被災者は少なくなっていますが、MSFの活動は縮小していません。このため、当初の予定どおりにベッド数を減らせずにいます。現在私たちが、震災のあとに病院で治療を行なっている患者は、緊急事態の最中には救急の医療ケアを受けることができませんでした。骨折部位をきちんと固定できていなかったため、救急ではない手術か補正手術が必要です。しかし、こうした患者の数がそう多いわけではありません。むしろ、路上や家庭内で事故にあった人、暴力(銃、ナイフ、性暴力)の被害者、そして容態を安定させる必要がある慢性疾患の患者を多く見かけます。ある意味、このような患者の医療ニーズは、地震後半年経ったいまでも地震とその影響に関係があるといえます。道路は、避けて通ることができないほどのがれきの山があちこちにあって、非常に劣悪な状態です。歩道も歩けません。このような状態が、道路や街路の事故につながるすべての要因です。また、家を失いテントに住む人びとの生活環境が、家庭内事故の原因となっています。その結果、重度のやけどに対応可能な治療ユニットに収容している、患者のおよそ80%を子どもが占めています。一方、暴力の被害者は増えていません。
遅々として進まない復興

壊れた自宅の上に腰掛ける男性。カルフールにて。
地震から6ヵ月が経ったいまでも、被災者のほとんどは、仮設避難所にあるキャンプで暮らしています。避難所のほとんどはポルトープランスにあります。ただ、自宅のがれきの前で生活するために避難所を出た家族もいます。彼らは、自分が住んでいた家を放置することに耐えられないのです。避難キャンプでは人道援助があり、食糧と援助物資が配給されています。しかし、だれが何をすべきかが明確でないため、援助活動を行なう人びとは、活動を組織するのに苦労しています。
私がポルトープランスにいた間に、明らかな復興のきざしを目にすることはありませんでした。失業者が多く、民衆の間では不満が募っています。デモが次第に頻繁に行われるようになり、緊張が高まっています。現在すでに雨季に入り、人びとは重い足どりでぬかるみを歩いています。また、避難キャンプで暮らす地震の被災者は、ごみ処理などのいくつかの問題に対処するために委員会を組織していますが、人びとの生活環境は以前より悪化しています。いまのところ、雨による健康上の問題は生じていませんが、長期的には過密状態と不健康な環境によって、問題が起きる可能性があります。下痢や呼吸器感染などの病気が広がる恐れがあるからです。
異例の長さで活動を継続
サン・ルイ病院は、MSFが学校から借り受けたサッカー場に設営されています。これはあくまで暫定的なものであり、MSFは恒久的な病院を建設する土地を探していますが、完成まで少なくとも3年はかかるでしょう。それまでサン・ルイ病院の各部門は、コンテナもしくは組み立て式施設のような、他の仮設の建物に移転しなければならないでしょう。MSFは、今後数年間にわたってハイチでの活動を継続します。そしてMSFの医療施設が、この国の「医療機関マップ」に加えられ、ハイチ保健省と連携できることを願い、また、対等で協力的な活動をしたいと考えています。ハイチにおける活動は長期にわたるもので、MSFにとってはいささか異例の活動です。MSFは、ハイチの保健医療体制を再構築する過程で支援したいと考えていますが、この国の行政当局にとって代わるつもりはありません。
いまのところ、ハイチの保健医療施設は、自分たちで何かができる状態ではなく、保健省だけで対応することも不可能です(まず保健省自体を再建する必要があります)。MSFは、広範囲にわたる質の高いケア、また私見では、ニーズの範囲に合った適切なケアを続けています」
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