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ハイチ:震災後6ヵ月、いまなお100万人がテントに

2010年07月30日掲載

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大地震がもたらした救援活動における問題

病院が崩壊したため、道端で治療を受けている患者。
病院が崩壊したため、道端で治療を受けている患者。

都市に密集して暮らす貧しい人びとに、ハイチ大地震が与えたダメージはあまりに大きく、救援活動のあらゆるレベルに大規模で複雑な問題をもたらした。国境なき医師団(MSF)は、地震以前からすでにハイチ国内で活動を行っていたが、震災に対する医療ニーズの緊急性とその規模から活動は限界に達した。MSFの資金は数百万人にのぼる民間からの寄付を受けてかなりの規模となったが、地震により医療、技術、管理スタッフに突然強いられた業務の慌しさは、過去に前例のないものだった。

MSFがこの度、震災6ヵ月後に発表した報告書『ハイチ地震後の緊急援助』(英語)は、地震がもたらした課題に応えるために、現地の人びと、ハイチ人の現地スタッフおよび海外派遣スタッフが、懸命に取り組んだ活動を伝えるものである。彼らはみな、このような災害に対して十分に対応することは不可能だったこと、そして地震直後の中核となる医療活動ですら被害の規模に圧倒されたことを知っている。また、ハイチの人びとの人間としての尊厳と、人生に対する希望をとり戻したいという願い、それらを実現する動きが、遅々として進んでいないことを実感している。

震災後に人びとが抱える問題

1月の大地震より、多数の建物が倒壊し、粉々になったが、そこから出た粉じんは、いまではポルトープランスの街路の水たまりや側溝に洗い流された。一方で、生存者にとってもう一つの脅威である雨が何週間も降り続き、家を失った数十万の人びとにさらなる窮状をもたらすことが予想される。また、今年はハイチを直撃するハリケーンが多発すると予想されており、この状況がさらに悪化する恐れがある。

6ヵ月前、建物の倒壊から逃げ出した人の多くは、恐怖のため、いまも残った建物に住むことができない。当時の余震を忘れておらず、これから別の地震が起きるという科学的風説を耳にしているからだ。彼らは薄っぺらなビニールシートやテントの屋根の下で身を寄せ合い、それらが風で吹き飛ばされればあわてて取りに行って元に戻し、散在する都市の集落の中で、新しい隣人たちとともに暮らしている。空からポルトープランスの街を見ると、この青いビニールシートが、そこかしこに散らばった湖のように見える。シートで日光とにわか雨は防げるが、熱帯特有の豪雨や突風には役に立たない。救援活動によって人びとが生きのびることはできても、彼らの最も大きな苦しみを和らげるには至っていない。人びとの生活状況は劣悪であり、焦燥感も高まっている。

ポルトープランスで頻発している暴力は、長年にわたる懸念である。地震の前にMSFは、マルティッサンとトリニテで、銃創患者と性暴力の被害者の治療にあたっていた。これらの重要な医療ニーズもさることながら、治安の悪化にも特別な注意を払う必要がある。とはいえ、MSFの医療データによれば、地震後の暴力による被害者の数は増えていない。5ヵ月間の全体数について見ると、暴力に関連する負傷で治療を受けた患者は2147人であり、銃による負傷者は264人であった。

人びとの健康

地震の発生からこれまでに、大多数の市民を対象とする医療設備は大幅に改善され、震災前よりよくなった面もある。現在では、震災前に公共および民間の医療制度から事実上排除されていた、多数の貧しい人びとも治療を受けられるようになっている。新築の仮設施設と残存する病院や診療所における医療の範囲は拡大し、人びとが利用しやすくなった。ただし、質に関する問題が残っている。懸念されるのは、このような状況の多くの部分が、国際社会との深い関与が継続されることを前提としているにもかかわらず、その持続可能性が大いに疑問視される点である。ハイチ保健省は今後18ヵ月間、弱い立場にある人びとに向けた無償医療を中核とする計画の実施を予定している。だがそのためには、外部からの資金提供と恒久的な施設の復旧が必要となる。ハイチでこれまで常に重要な役割を果たしてきた民間部門も地震で大きな被害を受け、復興をめざして苦闘を続けている。さらに、訓練を受けた専門家の不足という問題もある。地震で保健施設の60%が倒壊し、医療従事者の10%が亡くなるか国外に去った。ハイチでは常に人材が国外に流出していたが、地震の生存者についても同じ状況が続いている。

食糧と水に関する活動

ポルトープランスのアンショ・キャンプで水を運ぶ2人の少女。
ポルトープランスのアンショ・キャンプで水を運ぶ2人の少女。

地震の発生直後に比べると、ほとんどの市民にとって、食糧と水は手に入りやすくなった。とはいえ、震災以前の水準には戻っていない。世界食糧計画(WFP)による大規模な食糧の配布は効果があった。それらが、地域の弱い立場にある人びとのほとんどに行き届いたかの懸念は残るものの、MSFとしては栄養失調の増加を確認していない。水については、不透明な状況である。地震直後の3週間は無償で配布されていたが、それ以後は有償になった。このことはMSFが行っているような無償の配布活動を難しくするほか、仕事も収入もない多数の人びとにとって負担にもなっている。水はMSFが専門とする分野ではなく、医療活動の中心的課題でもない。ほかの供給機関による対応が不充分なため、この方面でMSFにかかる負荷が非常に高くなっている。現地のMSFは、この点を懸念している。

衛生と避難所に関する活動

ポルトープランス、デルマ地区のダダドウ・キャンプで洗濯をする女性。
ポルトープランス、デルマ地区のダダドウ・キャンプで洗濯
をする女性。

同様の懸念が、衛生と避難所の分野については、さらに強くあてはまる。地震直後の悲惨な状況から現在までに衛生設備の改善は進んだ。しかし、シテ・ソレイユ地区のような地域やカルフール・フォア地区にある避難キャンプなどでは、MSFが、実際に活動を行なっているほとんど唯一の組織である。MSFは、地震の被害を受けたほかの多数の場所でも、トイレ、ごみ捨て場、衛生設備の提供を含めた活動を行なっており、医療施設とその周辺地域で通常の活動範囲を大幅に超える場合が多い。と同時に、救援復興活動の規模を広げても解決できない大きな課題もある。現在、ごみ処理場は市内に1ヵ所しかなく、満杯もしくは処理しきれない状態が続いている。これに対応するための代案はいまだ決まっておらず、雨季が続いて衛生サービスの利用と汚染の問題をより難しくしている。市の広い範囲が海面レベルにあるため、トイレは定期的に汲み取りを行なう必要があるが、それも行なわれていない。避難キャンプでは衛生設備が十分でないため、大雨により生活区域の中に汚水が流れ込む恐れがある。

人びとの生活に最大の脅威となっているのは、十分な数の頑丈な避難所が不足していることである。ビニールシートやテントは一時しのぎの解決法にすぎない。これらの材料の寿命はおよそ6ヵ月である。MSFもかなりの量のテントを配布してきたが、人びとが少なくとも半恒久的な住居に移るためには、6月か7月中には何らかのかたちで建設を始める必要があった。だがいまのところ、このような動きはほとんど見られない。土地の割り当てについての決定も非常に遅れている。テントがほころび出し、雨による問題が浮上してきている。ハリケーンが来なくともハイチの雨季は、屋外に取り残された人びとの苦しみを倍加させるだけの影響を及ぼすだろう。

それでも十分とは言えない

これまで6ヵ月間にわたり、MSFは、世界中に有するかなりの設備や人材をハイチに投入してきた。緊急活動がピークに達したのは地震発生から約2ヵ月後であり、この頃にはおよそ350人の外国人スタッフが現地で活動していた。これだけの人数を必要としたのは、広範囲に拡大した医療プログラムの運営に伴い、ハイチ人スタッフを探し雇用するために、通常より多くの時間を要したからである。3月のピーク時には、病院、リハビリテーションセンター、一般医療施設を含む26ヵ所の施設で活動を行なった。その後、MSFはこれらの施設の一部を整理統合し、優先順位を変更して、現在では19ヵ所の医療施設を運営している。また、各地の医療施設に16室の手術室を備え、これらの施設の総ベッド数は1100床以上である。全体として、MSFの活動従事者は、地震の発生から5月31日までに17万3000人以上を治療し、1万1000件を超える手術を行なった。

MSFの今後の活動

MSFの広範囲に及ぶ活動は、新しいニーズに合わせて常に再構築が行われ、中には収束するものもある。しかし、今後さらに数年間にわたりハイチで大規模な活動を継続していくことは間違いないだろう。その背景には、他の組織が提供する医療の規模や、復興速度が不確実であること、また、ポルトープランスでは住民の過密状態が続き、生活環境が依然改善されないことへの落胆や失望よって、暴力の危機が増すという懸念もある。これらを受け、MSFには、暴動のぼっ発や病気の流行、栄養危機やさらなる自然災害など新たな緊急事態に対応するための早期の計画および対策が求められている。

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