ハイチ: 活動地・分野別の概況(2010年5月31日現在)
2010年07月30日掲載
![]() 整形外科手術の様子。カルフール、MSF整形外科病院にて。 |
1. 外科治療、術後ケア(病院・医療施設別)
ポルトープランス

生まれたばかりの子どもを抱く父親。イザイ・ジャンティ緊急
産科ケア病院にて。
●サン・ルイ病院/デルマ31区/ポルトープランス
ベッド数250床、手術室は3室のテント病院で医療・外科治療が続いている。手術室3室のうち1室は、やけど患者の処置専門に設計されている。サン・ルイ病院は、ハイチ地震によって使用困難になったMSFのトリニテ病院の代わりを担う病院であり、また、小児・救急医療も加わり総合病院として機能している。医療ケア、手術後の経過観察、理学療法、心理ケアも行っている。1月25日以来、約3000件の外科手術を行い、ベッドの使用率は90%前後である。
●ショスカル病院/ポルトープランス、シテ・ソレイユ地区
ハイチ保健省が運営するこの病院に、MSFは当初、主に地震による負傷者の治療を支援するために入った。現在、大手術用2室と小手術用1室の計3つの手術室が機能している。MSFはまた、救急処置室、産科病棟および小児病棟で活動している。性暴力の被害者に向けて医療ケアと心理ケアも行っている。ベッド数は100床である。いまもスラム地域に住む非常に脆弱な立場の人びとを受け入れる総合病院として機能している。すべての患者と介助者に向けた心理ケアも引き続き行われている。
●ビサントネール(術後ケア村)/ポルトープランス
1月25日からMSFは、歯科診療所であった建物で救急医療を提供し、病院を運営している。毎週350人が救急処置室にケアを受けに来る。この施設は外科、小児科、産科、心理ケアを提供している。また、手術室2室とベッド数は80床の入院病棟が1つある。
●イザイ・ジャンティ緊急産科ケア病院
MSFはこのベッド数85床の病院で、ハイチ保健省と連携して産科、新生児科、緊急産科ケアを提供している。5月には588件の分娩があり、そのうち120件は帝王切開であった。この施設は、現在ポルトープランス市内の基幹病院となっており、合併症や、妊娠中毒症の一種である子癇の患者を受け入れている。MSFは今後数週間のうちに、ベッド数130床の組立式コンテナの病院を設営し、新生児ケアや産科ケアの基幹病院兼研修センターとする予定である。イザイ・ジャンティ病院での保健省との連携は今後も継続する。
ポルトープランス市外
●カルフール、MSF整形外科病院
ベッド数120床の外科および術後ケアを提供する病院。毎週約20件の大手術と110件の小手術が行われている。この施設は手術室4室のほか、通常のX線撮影装置に加えて、カルフール市内に数台しかないCアームX線撮影装置の1台を備えている。骨折内固定法と骨折外固定法を含む整形外科手術、皮膚移植、筋皮弁術のほか、術後ケアとリハビリが提供されている。また、この病院はカルフール地域の緊急外傷治療病院としても機能している。リハビリはNGO「ハンディキャップ・インターナショナル」と協力して提供されている。心理ケアは患者とその家族両方に提供している。病院には外来部門もあり、毎日約100人の患者に外傷の治療を行っている。
●カルフール、グラース小児病院
グラース村避難民キャンプに隣接するこの新しい病院は、5月下旬に活動を開始した。小児救急処置室、ベッド数40床の小児病棟と同じ規模の重度栄養失調児用施設がある。
●レオガン
ベッド数130床のテント病院で活動を続けている。当初は既存のサント・クロア病院内に設営されていたが、シャテュレ病院の敷地内に移動して患者を受け入れている。救急医療、産科、婦人科、一般外科、小児科および新生児科を含む一般内科があり、理学療法や心理ケアも提供している。MSFは、シャテュレにベッド数200床のコンテナ病院の建設に着手した。新しい病院は7月中旬から8月中旬にかけて完成し、上記のサービスに加えて、放射線科と検査施設も備える予定である。
●ジャクメル
市内の中核病院の建物が地震で激しく損壊したため、MSFはベッド数81床のテント病院で、すべての入院治療にあたっている。5月にベッド数77床と救急処置室の備わった新しい木造施設が完成し、産科、小児科、外科、内科、心理ケアを提供している。
2. 術後ケア(術後ケア専門施設)
MSFは外科手術を行うすべての活動拠点で、あらゆる術後ケアを提供しているが、ポルトープランス市内のいくつかの拠点は、手術後の患者を受け入れることに特化した施設である。

理学療法を受ける患者。タバルにて。
●タバル/ポルトープランス
ベッド数およそ100床のテント施設。サン・ルイ病院から移送された患者と、その介助者を受け入れるために設立された。この施設は、4月に活動を終了したデルマ30区の術後ケアセンターに代わって患者を受け入れている。
●サルト地区/ポルトープランス
2月、MSFはソフト・ドリンク加工工場を改造した建物に、術後ケア施設を新設した。この施設では、最大で300床までの増床が可能である。現在、130人の患者が創傷ケアや、さらに専門的な整形外科手術や再建外科手術を受けている。リハビリや義肢に慣れる訓練などを最適なものにするために、NGO「ハンディキャップ・インターナショナル」の理学療法士が、MSFと協力して活動している。また、心理ケアも提供している。
●女子高校/ポルトープランス、シャンドマルス広場前
2月1日から活動を開始。平均して80人の患者が、術後ケア、医療ケア、心理ケアや理学療法を受けていた。3月に活動を終了したため、さらに治療の必要があるすべての患者は、ほかのMSFの施設に移送された。
●トゥーリズム/ポルトープランス、シャンドマルス広場前
2月22日に開設。平均して40人の患者が入院し、術後ケア、医療ケア、心理ケアや理学療法を受けていた。4月に活動を終了したため、ここで受け入れていた患者は、ほかのMSFの施設に移送された。
●プロメス/ポルトープランス
ベッド数50床の施設。5月末で活動を終了した。
●ミッキー幼稚園/ポルトープランス、クリスト・ロア・エ・ブルドン通り
1月19日に開院し、1日あたり60人の患者を診察。4月に活動を終了。
[心理ケア]
心理ケアはMSFの活動する施設では、大手術を受けた患者が必ず受けられるようになっている。心理ケアチームはカルフール、イザイ・ジャンティ、サルト、シテ・ソレイユ、マルティッサン病院内で患者と介助者に優先的に対応しており、集団カウンセリングも一部の施設では受けられる。また、これらの施設の周辺にある仮設キャンプの住民や、性暴力の被害者へのカウンセリングにも力を入れている。
3. 一次医療(病院・医療施設・キャンプ・移動診療別)
ポルトープランス

移動診療の様子。シャンセレル、飛行場キャンプにて。
●マルティッサン25区
MSFは、ベッド数40床の救急外来と容態安定化のためのケア施設を2006年以来運営している。1日あたり約100件の新規患者への診察を行っており、うち約3分の1は緊急治療が必要な患者である。小児科、内科、産科医療を提供している。
●サン・ルイ/デルマ31区/ポルトープランス
サン・ルイにあるテント病院の隣で、5月には50人以上の性暴力の被害者が、24時間対応の設備で治療を受けた。外来部門での診察は1ヵ月あたり約3000件、通院治療プログラムでは1600 件であった(この通院治療プログラムは、病院や救急処置室を退院した患者、また、定期的な包帯交換やそのほか経過観察を必要とする患者を対象にしたものである)。
●トゥーリズム/ポルトープランス、シャンドマルス広場前/ポルトープランス
外来部門は1ヵ月あたり約3000件の診察を行っている。
●ミッキー幼稚園/ポルトープランス、クリスト・ロア・エ・ブルドン通り
1ヵ月あたり約3000件の診察が行われていた施設。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康、産前ケア、家族計画、性感染症の治療)、心理ケアおよび理学療法などを提供していたが、4月中旬に活動を終了している。
●「ペスィョンビル・ゴルフ・クラブ」キャンプ
MSFは、この推定4万5000人の被災者が暮らす避難民キャンプで、基礎的な産前ケア、NGO「ハンディキャップ・インターナショナル」と連携してのリハビリ、定期予防接種、および心理・社会的支援を提供する診療所を運営している。1日あたりの診察件数は約160件である。
●デルマ24区/ポルトープランス
ポルトープランス市内のデルマ24区に2月に開設された診療所。2月には約2300件の診察が行われた。
●シャンセレル、飛行場キャンプ
MSFは、自宅を失った被災者4万人が住むキャンプにトイレとシャワーを設置し続けている。5月、複数の移動診療による基礎的な医療や産前検診、また地域に向けた心理ケアサービスを開始し、診察や相談件数は合計で約110件である。
●サルト病院
ソフト・ドリンク加工工場を改造した建物に新設された術後ケア施設。周辺地域の住民に基礎的な医療を提供している。
●カルフール・フォア地区/ポルトープランス
MSFは、家を失った約2万人の被災者が暮らす4ヵ所のキャンプ付近、カルフール・フォアとタピ・ルージュの2ヵ所でテント診療所を運営している。1日に200件~250件の診察を行っている。このチームは、包帯交換、予防接種や心理ケアを行い、また、衛生活動および清潔な水を提供している。MSFのビサントネール病院付近のこの4ヵ所のキャンプで活動は始まり、水・衛生活動と心理・社会面からの支援をこの地域の人びとに提供している。
ポルトープランス市外
●カルフール、グラース村避難民キャンプ
MSFは、1万人の被災者が暮らすこのキャンプで、キャンプ内および周辺市街地の人びとを対象にした診療所を運営している。1日に約230人の患者を診察し、1週間あたり120人の女性に産前・産後ケアを提供している。
●カルフール、シキナ診療所、ワニー87地区
基礎的な医療、産前・産後ケア、心理ケアを提供する診療所。1日あたり95人ほどの患者が来院している。
●レオガン/シャテュレ
外来部門では1週間に1000件の診察が行われている。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康、産前ケア、家族計画、性感染症の治療)、心理ケアや理学療法を提供している。
●ドゥフォー診療所/レオガン
臨時の診療所で1週間に約400件の診察が行われている。
4. 物資配布(地域別)
MSFは、運営する医療施設の周辺で暮らす数千人の人びとへのテント配布を終えた。調理器具や衛生用品キットなどの生活必需品の配布は、首都ポルトープランス市内外の広域で現在も続いている。MSFはこれまでに、合計で3万5350セット以上の救援物資セットと、2万6971張のテントを配布した。配布場所は以下のとおり。ポルトープランス市内のサン・ルイ学校、デルマ33区、デルマ24区、タバル、サルト、シテ・ソレイユ地区。カルフールでは、カルフール西部にある沿岸地帯プチ・ゴアーブとグラン・ゴアーブ、レオガン、そしてジャクメルである。先ごろ、レオガン周辺のへき地の村々に暮らす約200世帯に対しても、テントと生活必需品を配布した。
5. 水・衛生活動(地域・病院別)

シャンセレル、飛行場キャンプでは、衛生設備が不足してい
る。
MSFはポルトープランス市内外の数ヵ所で、水・衛生分野で活動している他の団体や機関の活動に加わった。MSFは1日あたり1269立方メートルの水を配布し、880基のトイレを建設し、415基のシャワーが設置された。MSFはまた、仮設キャンプに住む人びとが最低限の衛生状態を保てるように、トイレの汲み取り・清掃も行っている。
6. 調査と今後の計画
MSFは、潜在的な非常事態を確認するために、ポルトープランス市外の地域で調査を行った。最近では、ゴナイブ、ポールドペ、カパイシャン、フォールリベルテ、サンマルク、ベランス、ティオット、ジェレミー、レカイなどの地域で調査を行った。また、ハイチおよびドミニカ共和国両国の国境周辺地域やドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴでも調査を実施した。公共医療サービスは明らかに不足している。民間・半民間の施設の高額な医療費が、人びとが救急医療も含め医療を受けるにあたっての障害となっている。
雨季の到来に伴い、ポルトープランス市ほかハイチ国内全域における医療状況の悪化が懸念される。これを受け、MSFは救急医療の増加に対応する準備をしている。ニーズが急に高まる場合に備えて、追加の医療・資材が発注された。
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