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マラウイ:はしかの集団予防接種活動手記―落合厚彦、ロジスティシャン―

2010年07月13日掲載

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マラウイでは2010年2月頃からはしか流行の兆候が見られ、国境なき医師団(MSF)は4月、ブランタイヤなど5つの地区で、集団予防接種を現地保健省と協力で行うことを決めました。


同じ予防接種でもプログラムによって戦略は多様


会場設置の準備をするスタッフたち。

私が配属されたのは、ブランタイヤとチラズルの地区を担当するチームで、医師、看護師、ロジスティシャン(物資調達、施設・機材・車両管理など幅広い業務を担当)、アドミニストレーター(財務・人事管理責任者)など総勢15名の海外派遣スタッフから成り立っていました。

集団予防接種に参加するのは、これが2度目です。最初は2009年、ナイジェリアでの髄膜炎の予防接種でした。同じ予防接種ですが、異なる疾病、地域、戦略、担当支部ということで、ロジスティシャンとしての役割、直面した問題も異なり興味深いものでした。

まず、大きく違ったのはその戦略で、それは現地のチーム構成の違いに現れます。
今回ブランタイヤ地区を担当したチームの海外派遣スタッフは計15名で、内訳はプログラム責任者1名、ロジスティシャン統括責任者1名(現地スタッフとして登用)、コールドチェーン(低温輸送体系:ワクチンなどの低温物流に使用)/物流管理者1名、拠点・車両管理担当者1名、会場設営責任者1名、会場管理担当者3名、会場担当看護師3名、教育担当看護師1名、接種有効性確認担当者2名*、アドミニストレーター1名でした。今回はロジスティシャンの業務がより専門的に細分化されました。また、これに加え10名のスーパーバイザーを保健省から採用しました。


会場設置をする落合さんとスタッフ。

* 接種を行った数日後に接種の有効性を確認する担当者。

このチームで、保健省のスタッフなどで構成する30~45チーム(1チーム=チームリーダー1名、接種担当者1名、準備係2名、記録係1名、人員整理2名、広報2名)をトレーニング、監督し、47万人強に予防接種しました。接種率は104%ほどで成功と言えるものでした。

私の役割は、予防接種会場の設営責任者です。設営チームを率いて会場を設営するとともに、事前に保健省によって選定された予防接種場所の適合性を判断し、必要とあれば変更します。マラウイでは、これまで予防接種を一定の会場で行ったことがなく、これが今回のチャレンジの一つでもありました。また現地を視察した際、近くに隣接する学校の数、生徒数などを確認し、事前にこちらが得ている人口統計データに大きな誤差がないかもチェックします。


はしかの予防接種の様子。

今回は、基本的な機能をブランタイヤ地区におけるプログラムの拠点に集中させ、少人数で大所帯を監督しました。これはコールドチェーンや車両管理などを容易にする一方、移動時間が長くなるという負の面もありますが、今回はほとんどの場所に1時間半以内で行けたので、大きな問題にはなりませんでした。しかし、スタッフ1人あたりが監督する保健省のチーム数および会場数が多いので、予防接種の質、不測の事態への対応が課題となりました。

予想以上の人出に各所で混乱。会場が破壊されることも……


はしかの予防接種に殺到する人びと。

こうした戦略上の違いのほか、大きく違ったのは住民の行動についてでした。ナイジェリアでは、摂氏45度にもなる暑さのせいか、人びとの移動距離は短く、接種会場が1キロも離れていると来てくれません。従って、予防接種チームはこまめに場所を変えて分散するなど、現場での臨機応変さが求められ、接種率を上げるのが大きな目標となりました。

逆にマラウイでは、1時間以上かけても歩いてやってきます。人口の密集する都市部からスタートしたこともあり、各所で予想以上の人出に遭遇、混乱が生じました。会場が破壊され、最悪の場合には予防接種自体を一時中断。会場設営担当の私の所には、毎日のように「大変な人ごみで、会場が壊された。早急に補修を頼む」とか「仕切り用のネットと鉄筋を送ってくれ」などという悲鳴のような連絡が入りました。ある会場では接種率が200%を超えるところもあったほどです。チームは、いかに安全かつ迅速に質の高い予防接種を行うかということに注力しました。


破壊された接種会場。

緊急プログラムの場合、往々にして準備期間が十分にとれないものです。そのような時でも的確に危機を察知し、また不測の事態には臨機応変に対応することがスタッフには求められます。今回のマラウイで起きた人の殺到は、私や他のスタッフの予防接種に関する過去の経験値を超えるものであり、また、その過去の経験が固定観念となって柔軟な発想を妨げました。これは自分自身の反省材料の一つです。

「MSFのことは知っています。私の命を救ってくれましたから」

マラウイを訪れるのは、今回が2度目です。MSFに参加して初めてのプログラムがマラウイのチラズル地区でした。

ブランタイヤ地区の小学校に行ったときのことです。まずは、学校の責任者に会場使用の許可を得なければいけません。現れた校長先生は穏やかながら厳格さのあるチラズル地区出身のマラウイ女性でした。彼女が首を縦に振らなければ別の場所を探さなければならないので、彼女への説得は重要です。120%の笑顔で今回の集団予防接種やMSFについて説明し始めたとき、おもむろに彼女がこう切り出しました。
「MSFのことは知っていますよ。私の命を救ってくれましたから」

意味を理解しかねている私に、彼女はこう続けたのです。
「数年前までの私はやせ細っていて、もう人生の終わりのようでした。でも、MSFのHIV/エイズのプログラムで抗レトロウイルス薬(ARV)治療を受け、健康を取り戻しました。いまやこんなにふっくらとするまでに快復し、仕事もしています。MSFは私の命の恩人です。はしかの集団予防接種には全面的に協力しますよ」

MSFは、2001年からチラズル地区でHIV陽性者とエイズ患者に対して抗レトロウイルス薬(ARV)治療を行っており、私はそのプログラムのロジスティシャンでした。自分のかかわったプログラムがこうした形で現地の人の役に立っているという発見は、嬉しい驚きと新しいプログラムに参加する力を与えてくれました。

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