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ハイチ:精神科医へのインタビュー 「人びとは落胆し、震災前の生活を懐かしんでいますが、あきらめてはいません」

2010年06月17日掲載

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マリヴォンヌ・バルグ医師は精神科医である。ハイチで活動する国境なき医師団(MSF)の心理ケアチーム(ハイチ人心理療法士13人を含む総勢19人)を指揮している。首都ポルトープランスにあるMSFのサン・ルイ病院でインタビューに応じたバルグ医師は、大地震から4ヵ月が経過したいま、人びとの心に残る地震の影響について次のように語った。


Q. 人びとにはいまでも地震の心理的影響が見られますか?

A. 地震から4ヵ月経ちましたが、多くの人びとは、いまでも「大地と身体の完全な混乱」とでも言うべき状態にあります。私の患者の中にも、大地に飲まれることを恐れている人が大勢います。地震の体験は文字通り人びとの身体に残っており、揺れた時の音が常に聞こえているのです。また、深刻な睡眠障害も起きています。人びとは常に恐怖を感じながら暮らしており、いまも続くフラッシュバックの中で、恐ろしい地震の瞬間を再び体験しているのです。4月だけでも、私は急性せん妄(認識障害)を引き起こしている患者を70人診察しました。彼らは混乱し物事をはっきりと考えられない状態で、話したり、食べたりすることを止めた人も大勢います。これらの人たちは無言症(話すことが全くできない障害)と完全な昏迷(異常に長く深い睡眠に似た状態で、意識障害の一種)状態にあります。2~3週間のセッションで症状は改善していきます。私は患者の立場に立って話しかけるようにしています。すると彼らは少しずつ関わりあいを持つようになり、自分を取り戻し始めます。また、悲嘆に暮れて、うつ状態に陥っている方もいます。

Q. そうした方たちが、再び未来へと歩み始める方法はあるのでしょうか?

A. 人びとは昔を懐かしがったり落胆したりしていますが、あきらめているわけではありません。多くの患者が私に「決して乗り越えられないでしょう」と語ります。ここでは、建物の壁は全て倒れてしまったはずなのですが、人びとの前にはまだ壁が立ちはだかったままなのです。地震から4ヵ月が過ぎても、状況に大した変化はありません。「いつか家に帰れるでしょうか?」と聞かれるのですが、彼らの家はみな無くなってしまったのです。テント暮らしが最善の環境です。テントを持つことは贅沢といってもよいほどですが、それでもテントは家ではありません。キャンプ地では、混雑し、危険で、暴力と隣り合わせという環境で人びとが生活しています。ほとんど耐え難い状況です。多くの人びとが、それまで営んでいた小規模な商いを地震で失ってしまいました。生活環境はひどく、多くの人がこうした状況は変わらないと考えています。

Q. MSFは、心理ケアの分野で主にどのような活動を行っていますか?

A. 私はMSFの心理ケアチームの1つを指揮しています。チームは19人で構成されており、内訳はハイチ人の心理療法士13人、精神科医1人、精神科のインターン1人、ソーシャルワーカー1人、子ども向けワークショップのリーダー1人、そして通訳2人です。活動はMSFの医療施設と、地震の被害者たちが暮らす避難キャンプで集中的に行っているほか、地元の団体への訪問も行っています。毎日35件から40件の個別セッションを行っています。診察時間は短いですが、10分もあれば多くの話ができるものです。私はそれぞれの患者に対し少なくとも週に1度は診察をし、もし緊急の対応を必要とする何らかの症状、もしくはせん妄状態にあれば、1日おきにみます。また、子どもなどには、同年代の子を集めて心理面・社会面の支援をするグループ・セッションも行っています。

Q. こうした状況において、精神科医であることの利点とは何ですか?

A. 現在、ハイチ全土で精神科医は8人から10人ほどしかいません。そのため、多くの精神病患者が私のもとに搬送されてきます。私は心理療法士であると同時に精神科医でもあるため、薬剤を処方することができます。この点で、例えば睡眠障害がある方や、切断手術を受けた方、または地震のために下半身不随になってしまった方などの役に立っているのではないかと思います。

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