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ケニア:成功を収めたHIV/エイズ治療の統合アプローチ

2010年05月10日掲載

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ケニア

国境なき医師団(MSF)は、この度、ケニア西部のブシアで10年間にわたって行ってきたHIV/エイズ治療プログラムを現地に引き継ぐことになった。過去10年間の活動を通じて、HIV/エイズ治療を地元の基礎的な医療に統合して行うアプローチの重要性が明らかになった。現地の病院のスタッフに話を聞いた。


偏見が治療を妨げていた

ブシアの病院で診察を待つ患者たち。
ブシアの病院で診察を待つ患者たち。

ケネディ・ンドガ准医師はショポルト拠点病院にある自分の診察室に座り、このケニア農村部の地域社会において、HIV/エイズ治療がどのようであったかを語った。
「10年前、治療を希望する人びとは文字通り病院に『かつぎこまれて』来ました。家族が患者を自転車に乗せたり背中におぶったり、時には手押し車に乗せて運んできていたのです。HIV/エイズを取り巻く偏見があまりにも強かったので、ごく重態になってしまった人しか治療を受けに来なかったためです。この病気に対する恐怖の深さは、医療施設においてさえ、HIV陽性の患者は治療を怖がる医療従事者に片隅に押し込まれ、病床で死を待つだけだったことからもご想像頂けると思います」

当時、HIV/エイズを治療する機関は存在せず、抗レトロウイルス薬(ARV)治療も普及しておらず、ケニア保健省はこの疾患の治療に必要な膨大な負担に対処できなかった。そのため、MSFはケニア西部の農村部、ブシアで、HIV/エイズ治療のプログラムを始めた。2000年の時点で、ケニアのHIV感染率は推計14%だった。ブシアではその倍以上の30%にのぼっていた。過去10年間にわたって、MSFはケニア保健省と密接に連携しながらHIVとともに生きる人びと1万3300人の治療と看護にあたり、このうち4000人以上がARV治療を開始した。

みんなと一緒に治療が可能に

MSFの医師の診察を受ける子ども。
MSFの医師の診察を受ける子ども。

HIV治療の統合が、成功の鍵となった。ンドガ准医師の診察室の外を見れば、ショポルト病院の待合室は、予約で来た男性、女性、子どもで一杯である。この病院で肩を並べて働くMSFと保健省のスタッフは、一日平均100人以上の患者を診る。HIV陽性の人も、そうでない人もいる。これがHIV治療の統合アプローチの重要なポイントだ。つまり、HIV治療を通常の一次医療に統合することで、HIVとともに生きる人びとが医療を他の人と同じように受けられるようになるのである。

このアプローチは、ブシアで治療を受けに来るHIV陽性者の増加に大きく寄与した。さらに、この病気にまつわる偏見や差別をなくしていくことに多大な効果があった。ンドガ准医師は語る。「日によって違う診療所をまわったり、他の患者から隔離された待合室で待ったりする必要はありません。HIVとともに生きる人びとは、ここに来れば医師の診察を他の人と同じように受けられるようになっています。例えばHIVに感染した妊婦の場合、ここに来て定期検診、産前ケア、母子感染予防ケア、家族計画の指導や子どものための予防接種を、1日で受けられるのです。これは、医療における『ワンストップ・サービス』です」。

統合アプローチの成功から、その先へ

薬を渡し、説明を行うスタッフ。
薬を渡し、説明を行うスタッフ。

治療を統合していくプロセスは容易ではなく、MSFはそのシステムが機能するまでに多くの投資を行った。ケニア保健省とは定期的に率直な対話を行うことが不可欠であった。いくつかの診療所では、治療を受けに来る人の増加に対応するため、MSFが追加の人員を派遣する必要があった。研修会を頻繁に開き、すべてのスタッフに対して継続的なメンター(指導役)をつける制度が設けられた。診療所のいくつかは改修し、追加の部屋を増設した。それでも、スタッフと患者の両方がHIV/エイズ治療の統合によって受ける恩恵を考えれば、これらの設備投資には大きな意義があった。

ブシアでの10年間の活動を経て、MSFは別の団体にこの活動を引き継ぐことができるようになった。農村部の設備が充分には整わない環境でHIV/エイズ治療を行うことは、以前は不可能だと考えられていたが、大きな成功を収めることができた。今後も課題はあるが、HIV/エイズ治療の統合アプローチは、それらを乗り越えていく入り口に立つことができたのである。

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