インド:EUとの自由貿易協定(FTA)協定が最終段階へ -医薬品の普及を妨げる条項撤廃の最後の機会-
2010年04月26日掲載
欧州委員会とインド間で協議中の自由貿易協定(FTA)交渉が、4月28日から最終段階に入る。国境なき医師団(MSF)は、非公式で行われる今回の協議が、開発途上国の人びとの命を救う医薬品普及の妨げとなる条項を撤廃する最後の機会であると警告する。
欧州連合(EU)の納税者は、自国政府による世界基金や他の国際的な保健機関への資金援助を通じて、インド製の安価な医薬品を用いたエイズ治療プログラムに資金援助を行っている。しかし、欧州委員会が現在この状況を破棄しようとしており、MSFや他の援助団体は懸念を抱いている。FTAの草案には知的所有権とその強化についての条項が含まれており、これは現行の国際貿易規定よりはるかに厳しく、インド製の安価な必須医薬品の供給を脅かすものである。
FTA草案に含まれる有害な条項のひとつに、「新薬データ独占権*」がある。インドがこの新薬データ独占権を導入すると、医薬品の登録をしようとするジェネリック医薬品メーカーは臨床試験を再度実施しなければならない。この措置はメーカーの意欲をそぐ経済的障壁となるばかりか、すでに確認されている新薬の臨床試験中に生じるリスクに患者をさらすことになるという点で、医療倫理にも反している。新薬データ独占権は、医薬品やワクチンが特許保護を受けていない場合でも、結果として特許に似た障壁を作り出すのである。
さらに、FTA草案には、特許の付与期間を現行の20年間からさらに延長するという条項も含まれている。また、中南米諸国、アジア、アフリカなどの開発途上国に出荷されたインドのジェネリック薬が通過国の税関に差し押さえられる事態がこれまでに何度も発生している。EUは、特許付与期間の延長や医薬品の差し押さえといったこれらの措置を含むFTAを承認するようインドに強要しており、これらの措置を合法化しようとしている。
MSFの必須医薬品キャンペーン政策責任者、ミシェル・チャイルズは語る。
「インドのアナンド・シャルマ商工相とEUのカレル・ドゥ・グヒュト通商担当委員は、FTAはジェネリック医薬品業界からの医薬品の普及を妨げることはないと明言しています。しかし、双方とも協議中のFTAからジェネリック医薬品競争を脅かす条項を除外することは公約していません。私たちはこれらの条項が、FTAから公的かつ完全に除外されるまで抗議を続けていきます」
MSFが各国で提供するエイズ治療プログラムで使用されている薬の80%がインド製である。インド製の安価な医薬品がなければ、今日までエイズ治療を拡大することは不可能で、数百万人の命を救うことは出来なかった。しかし、現在協議中のFTAにより、この状況が脅かされる恐れがある。
MSFの南アフリカ共和国、マラウイ、レソト、ジンバブエにおけるHIV/エイズプログラムの活動統括責任者、アリアンヌ・バウエルンファイントは語る。
「この協定案は世界規模で影響を及ぼします。治療費ははるかに高額となり、各国政府や資金拠出者は治療を受けられる患者の人数を制限する必要に迫られることになるでしょう。私たちはすでに、新薬がインドで特許を付与されている現状を懸念しています。FTAはすでに悪化した状況に拍車をかける恐れがあります」
インドとEU間のFTA交渉は4月28日から最終合意に向けた最終段階に入る。EUは2010年10月にFTA調印する意向を表明している。
*新薬データ独占権:規制当局に販売許可を得るために提出する、新薬の安全性と有効性を証明する試験データの不正な商業的使用からの保護および開示からの保護義務を規定する権利。これにより、規制当局がジェネリック薬の使用を許可することを一定期間妨げることができ、最初に薬を開発した製薬会社にとっては事実上の市場独占権となる。
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