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マリ:「もうマラリアで命を落とす子はいません」

2010年04月23日掲載

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「昔は、この村では毎週マラリアで亡くなる子どもがいました。1日に1人亡くすこともありました」。マリ南部にあるデゲラ村の長老は、こう語る。アフリカ全域の多くの村と同様、この村でも、雨季の間、マラリアは子どもたちにとって深刻な脅威となっている。しかし現在、この村の子どもたちはファトゥマタ・トラオレのおかげでマラリアを克服できている。彼女は毎日村の中央にある木陰に座り、熱のある子どもにマラリアの検査をしている。


66人の現地マラリア対応スタッフの1人

解熱鎮痛薬パラセタモールの子ども向け服用量について説明するファトゥマタ。
解熱鎮痛薬パラセタモールの子ども向け服用量について説
明するファトゥマタ。

ファトゥマタは毎朝8時に木陰での活動を始める。傍らの小さな木のテーブルにはマラリアの薬と検査キットが用意されている。周囲には、子どもを連れた母親たちが診察を待って集まっている。

ファトゥマタは医師ではない。最近までこの村で、ジャガイモ、葉物、トウモロコシを栽培し、自分の家族が必要としない分は最寄りのカンガバの町の市場で売っていた。しかし半年前からは、合併症のない単純なマラリアを発症している村の子どもの治療にあたっている。彼女は、国境なき医師団(MSF)がカンガバ周囲の村々で指導・支援している66人の現地マラリア対応スタッフの1人なのだ。

マリ南部の雨季にあたる6月から12月の間には、水たまりに蚊が集まって来るため、特に子どもたちはマラリアにかかりやすくなる。刺されてマラリアにかかった場合はすぐに治療しなければならない。治療を受けられなかった場合、ほとんどの子どもは感染から2日以内に命を落としてしまう。しかし、大半の人びとにとって診療所は非常に遠い場所にあるうえ、いずれにせよ国営の医療サービスの費用を支払えない可能性が高い。そのため、MSFはカンガバ周辺のへき地の村々で、単純なマラリア患者の治療を無料で行えるようにするため、現地の人びとを指導することにした。研修を受ける対象者は、各村が選んだ。デゲラ村の長老はこう語る。
「ファトゥマタはとても信頼できる。だから、私たちは彼女を選んだ」

わずかな採血でマラリアを診断

デゲラにはおよそ500人の子どもがおり、ファトゥマタは毎週およそ50人~60人のマラリアの兆候のある子どもを診察している。そのうちの1人に、5歳の男の子カンダ・コネがいる。おとなしく座っている彼の目は熱で潤んでいる。昨夜から熱が出て、朝には吐き気がした。どちらもマラリアの症状だ。ファトゥマタは診断用簡易検査を行う。カンダの指先を針で刺して一滴の血を絞り出し、ピペットで吸って注意深く細長い試験紙に落とす。約15分で結果が出る。小窓に赤線が2本出たため感染とわかり、ファトゥマタはその場ですぐに1回分の薬を与えた。

1日のうちで、彼女は数多くの患者と話をする。母親と子どもが大勢来るが、ファトゥマタはいつも冷静さを保っている。全員の話を聞き、質問し、子どもの熱を測り、大勢の子どもの簡易検査を行っている。

すぐに効果がある3錠の薬

診察を終えると、ファトゥマタはいつも村内を回って患者の自宅を訪問する。カンダを初めて診察してから2日間で、他に23人の子どもたちがマラリア検査で陽性反応を示し、その全員に薬を渡した。その場で1錠を飲ませ、そして自宅で飲ませる2錠は母親に渡すのだった。

ファトゥマタはこれ以外に、2人の子どもをMSFが支援する最寄りの診療所へと送った。マラリア検査では陰性だったが、ファトゥマタが治療の研修を受けていない別の病気にかかっているためだ。回診の途中でファトゥマタは彼らの様子を聞いた。それからカンダの住む小屋に着くと、居合わせた全員から歓迎を受けた。少年は快復しており、家の周りで自転車の古タイヤを楽しそうに追いかけている。母親は笑って語る。
「あの子はいつも走り回っています。病気でない限り、大人しく座っていることなど決してありません」

ファトゥマタはこう語る。
「最初はあまり自信がなくて、MSFの支えがなければ、この仕事はできなかったでしょう」
1週間の集中研修を受けた直後の数ヵ月は、検査を行う際にはMSFの看護師が常に付き添った。今では、看護師は週に1度だけ訪れ、ファトゥマタの作成した記録ファイルを確認し、彼女からの質問に答えている。

デゲラ村のだれもが、自分の村のマラリア対応スタッフであるファトゥマタを敬愛している。特に母親たちは信頼を寄せている。真夜中に子どもの具合が悪くなっても、ファトゥマタは助けに来てくれると語る。
「彼女が活動を始めてから、もうこの村では命を落とす子どもはいなくなりました」
村の長老は、こう話す。

へき地の村々における、現地マラリア対応スタッフ

MSFは現在、カンガバ地区で、合併症のない単純なマラリア患者の診断と治療を行う66人のマラリア対応スタッフを監督している。この地域では、治療は無料である。MSFはこの他にもカンガバ周囲の11ヵ所の診療所を支援し、マラリアか他の病気かに関わらず、熱がある5歳未満の子ども全員が無料で治療を受けられるようにしている。2009年にMSFはマリにおいて5万9923人のマラリア患者を治療した。

マリにおけるプログラムに加えて、MSFはシエラレオネとチャドでも、へき地の村々におけるマラリア対応スタッフの研修と支援を行っている。マリでは現在、こうしたモデルを採用するよう他の機関・団体にも働きかけている。重要なことは、へき地の貧しい地域の村で暮らす人びとに医療が無料で提供されることである。

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