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ハイチ:震災から3ヵ月が経過(4月13現在)

2010年04月20日掲載

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現地時間1月12日にハイチを襲った震災は、以前から非常に不安定だった人びとの生活をさらに不確実なものに変えた。国境なき医師団(MSF)は1991年よりハイチで活動を行っていたため、地震発生後、直ちに援助を開始することができた。MSFの施設も罹災したため、可能限りあらゆる場所に仮設病院を設置し、緊急トリアージと外科手術を実施、また、空気で膨らませるエアーテント式病院機材などの援助物資を、ほぼ連日数百トンのペースで運び、その規模においてMSF史上最大の活動の一つとなった。これら活動のすべては、地震で自らも大きな損失を被ったハイチ人スタッフの、積極的で疲れを知らない献身的な活動に支えられて実現した。


南北アメリカ大陸で最も高い妊産婦死亡率

テントの下で、赤ちゃんに飲み物を飲ませる母親。
テントの下で、赤ちゃんに飲み物を飲ませる母親。

地震発生から3ヵ月が経過し、MSFは変化を続ける被災地の状況にあわせて、被災者が今すぐ必要としているものにも、長期的なニーズにも応えるべく、活動を発展させ続けてきた。医療・人道援助団体であるMSFは、保健医療分野の活動に注力し、特に今回の地震では、被災者の生活環境やそれが健康に及ぼす影響にも注意を払った。

近年、ハイチの保健医療内容は向上していたが、ハイチの人びとが受けられる医療サービスには限られたもので、その普及も偏ったものだった。そして、追い討ちをかけるように、今回の地震で、数十万人が死亡、数十万人が負傷し、100万人以上が家を失った。もともと、同国の妊産婦死亡率は南北アメリカ大陸の中で最も高く、公立病院ではスタッフや医薬品・機材が不足し、さまざまな要因に阻まれて人びとが医療にかかることは容易ではない。簡単な治療を受けるにも、多くの人には支払えないほど高い料金が課されていることもその一例である。

MSFは現在までに、9万2000人以上に医療を提供

地震により首都ポルトープランスのインフラは瓦礫と化し、多くの医療施設も被害を受けて、こうした状況に拍車がかかった。保健省の算定では、最も被害が激しかった地域では、医療施設の60%が損壊または倒壊した。また、多くの住民が仮設キャンプに身を寄せることとなったが、食糧や水、衛生状態、医療は不十分、最悪の場合は全く提供されていない。

MSFは年初の段階で、ポルトープランス内の医療施設4ヵ所で、一次・二次医療、外傷等の急患対応、外科手術、産科医療などを担っていた。地震発生後、膨大な医療ニーズに応えるため活動を急拡大し、活動する施設は病院、術後ケア施設、リハビリセンター、一般診療所など合わせて26ヵ所にまで増えた。その後、病院の合併やニーズの変化により、現在は医療施設19ヵ所活動している。また、計3つの移動診療チームが巡回している。加えて、さまざまな地域で、計16の手術室、1200床以上のベッドを稼動させている。震災後、MSFは現在までに、9万2000人以上の患者に医療を提供し、約5000件の手術を実施した。

変化するニーズ、拡大する活動範囲

住環境も、いまだ厳しい。感染症の流行も懸念される。
住環境も、いまだ厳しい。感染症の流行も懸念される。

震災直後は、複雑骨折や頭部の負傷、挫傷、重傷の開放創を負った患者が多く、緊急治療と救命手術を最優先で行った。その後まもなく、医療サービスの幅を広げることが課題となり、そのための施設を、テントの下、あるいはコンテナの中、学校の教室、観光案内所、古い瓶詰め工場などを改修して設置した。さらにはMSFがハイチに運び込んだエアーテント式病院をポルトープランスの空き地に設置した。続いてニーズが高まったのは、術後ケア、心理ケア、理学療法およびテントや基礎的な援助物資の配給、水・衛生の分野である。これらに応えることは、地震前のMSFの活動範囲を大幅に拡大させることを意味した。

生存者のうち非常に多くの人が複雑な重傷を負っていたため、当初は緊急医療が求められたが、その後には長期間にわたるフォローアップケアが必要となる。そうした患者には質の高い医療を受けられる態勢が不可欠である。また、震災前から治療を受けていた慢性疾患の患者や、産科ケアの必要な女性、子ども、そして今では非常に多くの人が耐え忍んでいる厳しい生活環境が原因で病気にかかった人にとっても、質の高い医療は重要である。

医療を受ける機会に高い壁

MSFが過去の報告書でも指摘しているとおり、収入の少ないハイチ人の多くは、基礎的な診療にも料金がかかる同国の医療制度のために、受診をあきらめざるを得ない。震災前から国民の約7割は1日2ドル(約184円)以下で暮らしており、現在は以前にも増して就労の機会が減っている。

ハイチ政府と国際社会および資金拠出国・援助機関がハイチ救援と復興の計画を練っている中、MSFはすべての関係者に次のように求めるものである。

  • 提供された資金は、十分な資金と設備・人員の充てられた医療施設の設立に優先的に充当し、ハイチ国民の保健医療ニーズに応えて、人びとが広く医療を受けられる環境を作るべきである。
  • 復興計画の各施策を実行に移していく中で、この基本方針は常に一貫していなければならない。

MSFの活動目標

ハイチで震災前に行っていた活動に、震災とその後の混乱により必要となった活動を合わせ、MSFは一貫した目標を掲げている。それは被災した人びとに、手術や術後ケア、その他の損傷処置、心理ケア、小児医療、慢性疾患の継続治療、基礎的な医療の提供を含む一次・二次医療を提供すること、および水・衛生環境の改善と救援物資の配給を通じて、避難先での厳しい生活環境を改善することである。MSFはこの目標を以下の手段を通じて実現している。

 

緊急対応

 
  • 包括的な医療ケアをもっとも必要とする患者に提供する能力を維持すること。
  • 震災前にも、手術の需要が大きく高まった震災直後にも、MSFが有していた外科手術の実施能力を維持すること。(震災後、MSFは約5000件の手術を実施した。)
  • リハビリ、理学療法、心理ケア、その他フォローアップケアなどからなる、包括的な術後ケアを提供すること。
  • 慢性疾患や負傷者の診療、および母子保健サービスを、性的暴力の被害者のためのプログラムとともに再開すること。
  • 避難生活者のために、テントやその他の援助物資の配給と、水・衛生面のサービスを行うこと。
  • ポルトープランス外の援助ニーズ調査を続けること。震災に起因するもの、震災前からあるものともに。
 

緊急フェーズ後の対応

 
  • ハイチ地震以前から現在にわたって医療費を支払うことのできない多くのハイチ人のために、診療の機会を可能な限り保証し続けること。
  • 感染症の流行、あるいは自然災害の再来に対応できる備えを保つこと。
  • MSFが当面管理運営を続けられるよう、また将来的にハイチ当局に引き継ぐことを念頭において、仮設の医療施設をより恒常的な施設に改めていくこと。
  • 現行の援助活動が継続されるよう、ハイチ政府、NGOおよび市民社会、他の援助活動従事者と協力すること。

活動コスト

ハイチの人びとへの強い連帯とともに、世界各国のMSF事務局には、合わせて8700万ユーロ(約107億7597万円)を超える寄付が個人・企業等から寄せられた。MSFは、その寛容な支援にこの上ない感謝を表明する。現地チームはこれに支えられて、最も被害を受けた人びとに対する医療、心理ケア、物資、および水・衛生分野の援助を実施し、壊滅的状況からの復興途上にある人びとを支援することができている。

4月1日現在で、MSFがハイチ大地震に対応して医療人道援助活動に支出または充当を決めている額は約4000万ユーロ(約49億5447万円)である。現在、今後の活動形態と規模を検討しているが、活動は緊急段階の終了後も数年にわたって継続となる見込みである。現状で把握できる数字に基づいた試算では、2010年の活動費は約7000万ユーロ(約86億7032万円)となる見込みである。活動費は現在および将来のニーズ予測に基づいている。MSFは今後もハイチの人びとが医療援助を必要とする限り、団体の特性と規模に応じた範囲でそれに応える活動に集中していく。


 

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