スーダン:北ダルフールで改修した病院をオープン
2010年04月14日掲載
その運命的な火曜日の朝、ファティマは妊娠2ヵ月目にして流産した。ファティマの夫は2人が住むハルツーム・ジャディード村で車を借りてタウィラまで走らせた。親族も駆けつけた。男性の親戚2人と女性の親戚1人が、スーダン北部ダルフール州にあるタウィラ病院までの2時間半の道のりを、1人あたり約5ドル(約470円)かけて、やって来たのである。タウィラ病院は、タウィラとその近隣に住む人の多くにとって、もっとも近い病院である。国境なき医師団(MSF)の医師、オスマン・アバカル・ティジャニ医師とカルロス・ソラ医師は処置にあたり、死亡した胎児と胎盤などを母体から取り出した。
2008年末の治安悪化に伴う活動停止、そして2009年10月の復帰

タウィラ病院で治療を受ける子どもと付き添いの母親。
ティジャニ医師は語る。
「処置していなければ、ファティマは失血死するか子宮内容物が感染を起こすかしていたでしょう」
2008年12月にMSFが治安悪化に伴ってタウィラでの活動を一時停止してから再開にいたるまで、ファティマは他の州民と同じく、新たに医療機関を探さなければならなかった。その後、治安が改善されてきたことから、MSFは2009年10月にタウィラに戻り、スーダン保健省との協力のもと医療活動を立て直すことができた。当時、スーダン保健省はテント病院1ヵ所で限られた範囲内の医療を提供していた。MSFは古い保健省の建物に手を入れて、医療を安定して提供する活動にのりだした。
ファティマの夫は2人めの妻を亡くしたため、今は彼女がこの子どもたちを育てている。夫はタバコ農園やその他の作物を育てているが、雨が少なかったため、一家はダルフール地方の主食、ソルガムを買うことができなかった。
この夫婦の親戚の女性は、飢えについて語る。
「昨日から何も食べていません。タウィラに来ない限り、パンは食べられません。パンはないのです。貧しいから」
新しいタウィラ病院に届く希望の光

タウィラ病院で治療中の女性。病院改修後、患者は快適に
過ごせるようになった。
タウィラ病院では、無償の医療を2万8600人に提供している。この土地では、無償の医療が切実に必要とされているのだ。担当区域はルワンダ、ダリ、アルゴの避難民キャンプ3ヵ所の住民を含めた、タウィラとその近隣地域である。人びとの多くはダルフール地方の紛争を逃れて、このキャンプに何年も住んでいる。39歳になるアル=ラディヤもその一人である。
アル=ラディヤはこの日、ルワンダ・キャンプにある家からタウィラ病院まで30分の道のりを5歳の娘イスラを背負ってやってきた。アル=ラディヤと夫、7人の子どもはここ3年間、スーダン・ダルフール地方にあるルワンダ・キャンプ内のわらでできた小屋に住んでいる。この小屋は現地語で「グティヤ」と呼ばれている。一家は、それまで住んでいたショクショガ村が襲撃を受けたときに逃げてきた。一家は牛と土地を失い、ショクショガ村に住んでいた親戚や近隣の住民と同じく、ほとんど何も持ち出せないまま村を出た。この日、イスラは前の晩から高熱が出ていたため、看護師が冷水に浸したタオルをかけた。イスラはマラリアの検査では陰性であった。昼下がりには熱が下がり、アル=ラディヤとイスラは夕刻、入院病棟を出ることができた。
アル=ラディヤは語る。
「タウィラ病院は近いこともあって、とても助かります。この辺りの20ヵ所以上の村に住む人が、ここに無料の医療を受けに来ます」
アル=ラディヤは日雇い労働者として働き、彼女の夫は農地で農業に従事している。日々の食べ物を得ることで大変で、子どもの学費を払うどころではないが、彼女は希望を持っている。
アル=ラディヤは、こう話す。
「未来がよりよいものになり、人生が素晴らしく、生活が安定して、自分の家で落ち着いて暮らせるようにと祈っています」
医療活動の場を移して衛生環境は改善、患者はより快適に
MSFは保健省を支援し、一次医療と二次医療をタウィラの人びとに提供している。活動は栄養治療、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)ケア、心理ケア、と地域社会に向けた健康教育活動などである。MSFはまた研修、受け入れ態勢の整備のほか、各種奨励金の支給を通して保健省職員の支援も行っている。MSFはタウィラで2007年7月に活動を始め、現在タウィラ病院で提供されているのとほぼ同じ医療を提供していたが、この間、この地域の治安悪化に伴って医療活動を停止することも何度かあった。しかし、今回改修が終わった病院に医療活動の場を移したことで衛生環境は改善し、患者はより快適にすごせるようになった。
現在、MSFのスタッフ62人と保健省職員15人がタウィラ病院で活動している。2010年の1月と2月にはMSFと保健省は6000件の外来患者への診察、770人の女性と子どもへの予防接種、750人の女性への産前検診、5歳未満の子ども246人への栄養治療を行った。
MSFはダルフール地方にあるタウィラ病院で保健省を支援しているほか、シャンギル・トバヤにある病院1ヵ所を運営し、ダル・ザガワにある診療所5ヵ所とカグロにある診療所1ヵ所を支援している。
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