カラアザール:医師の証言 ― 最も低いカーストに属する最も貧しい患者の治療
2010年04月07日掲載
国境なき医師団(MSF)は2年以上前からインド北部のビハール州でカラアザール(内臓リーシュマニア症)の治療プログラムを提供している。インド保健省と協力してバイシャリー地域のハジプール病院および4ヵ所の一次診療所で治療やケアを提供しているほか、同州内の他の8地域で健康教育や病院への支援を行っている。現地で活動するアイノア・ビベロ医師が、このプログラムについて語る。
末期になっての自覚症状。しかし、治療がなければ、死に至る病気

インド北部ビハール州でカラアザールの治療プログラムに
あたる、MSFのアイノア・ビベロ医師。
私は現場の医師として医療活動の調整を担当しています。MSFがカラアザール患者の治療を行っているハジプール病院で週に3回病棟を回診するほか、パトナにあるラジェンドラ記念研究所(RMRI)に移送した、合併症のある患者の監督も行っています。プログラムを開始して2年になりますが、今は全体的にすべてが順調に進んでいます。
カラアザールはスペインでも発生していますが、私はここで1週間過ごすだけでスペインの医師たちが一生のうちに診る以上の数の患者を目にしました。カラアザールは他の病気と違って患者がいきなり倒れてしまうようなことはありません。患者はかなり長い間活動的でいられるため、末期になってから病院に来ることが多いのですが、治療しなければ命に関わります。免疫系を弱める病気なので、結核など他の感染症が現れてから病院に来る人も大勢います。
HIVに二重感染している患者には、特別の注意を払う必要があります。ビハール州では輸血は安全ではなく、多くの人びとの感染原因となっています。感染すると社会的に大きな影響が生まれます。この地ではまだエイズに対する偏見が根強く、患者は自分の病気を明らかにしなければならない場合、大きな脅威を感じます。公立病院でも民間病院でも、多くの場合エイズ患者は二流の患者と見なされています。
このハジプール病院では、すべての患者にHIV検査を行い、陽性の場合は抗レトロウイルス薬(ARV)治療を始めます。また、カウンセリングを行って治療への理解を深め、服薬指導をします。エイズ治療を行うと患者はよくなったように感じますが、さまざまな合併症を起こす可能性があるため、注意深く経過を見守る必要があります。
貧しさゆえ医療を受ける権利などないと信じているかのよう
私はビハール州でカラアザールについて、医学的な問題だけでなく、この病気の社会的な側面についても多くの事を学びました。蚊帳の使用や、泥でできた家の割れ目を直すことなどの予防に関する情報提供と、早いうちに助けを求められるようにこの病気の見分け方を教えることが、MSFが行っている健康教育活動の中で重要な部分を占めています。
ビハールはインドで最も貧しく、最も人口密度の高い州の1つであり、MSFの患者は最も低いカーストに属する最も貧しい人びとです。これも私にとっては考えさせられるものでした。患者の反応が私の予想と非常に異なっていたからです。
私は以前ジンバブエのHIV治療プログラムで活動した経験がありますが、そこで最初に目にするものは患者の微笑みでした。ここでは初診の時、患者は床を見つめ、決して私の目を見ようとしません。子どもたちは学校に行っていません。感情を表に出すのに長い時間がかかります。彼らは貧しいために医療を受ける権利などないと信じているかのようにふるまうのです。
関連情報
- 2012年2月10日
- インド・EU首脳会議:2千人のHIV感染者がデリーでデモ -FTAで安価な薬の供給に制限の恐れ
- 2012年1月24日
- インド:「赤い森」に医療を届ける―レベッカ・カスバート医師の手記(その2)
- 2012年1月23日
- インド:「赤い森」に医療を届ける―レベッカ・カスバート医師の手記(その1)
- 2011年11月16日
- インド:最善のカラアザール治療法を求めて―カラアザール治療に携わる医師のインタビュー
- 2011年11月16日
- インド:ビハール州におけるカラアザールとの闘い















