イラク:ハウィジャ総合病院で24時間の手術体制を確立
2010年03月30日掲載
今年1月、厳しい治安状況にあるイラク北部タミーム県の県都キルクークにあるハウィジャ総合病院で、イラク人医師からなる国境なき医師団(MSF)の外科チームが活動を開始した。イラク戦争勃発以降、MSFが直接イラク人患者の診療を行うのはこれが初めてである。チームの麻酔科医であるM医師は、活動の意義について次のように語る。
Q. MSFはハウィジャで、どのような援助を行っていますか?
A.チームは小規模で、一般外科医と私(麻酔科医)の2人だけです。ハウィジャ総合病院の問題は、急患に対応できる医療スタッフが不足していることです。病院の医師たちの診療は、午後1時か2時には終わってしまいます。緊急の処置を必要とする患者や負傷者が午後に出た場合には、ばキルクーク市まで移動しなければなりません。しかし悪路で80kmも離れているうえ検問所が17ヵ所もあり、軍施設が多いため、危険な容態の患者には時間がかかりすぎます。産科救急でハウィジャ総合病院に来た妊婦がキルクークまで移動しなければならないことが何度もありました。さらに、当病院は金・土・日曜日も休診です。つまり、ハウィジャの町とその近郊の住民約45万人は、週のうち3日間は緊急医療が全く受けられなかったのです。
Q. そうした中、小さなチームでどのような変化をもたらせるのでしょう?
A.週4日午前のみだった手術室は、私たちが1月に活動を開始して以来、連日24時間体制で稼動しています。手術数は、ほぼ2倍に増えました。MSFだけでこれまでに300回の手術を行いました。その半数は緊急手術で、急性虫垂炎、帝王切開、ヘルニア縫合や外傷が主です。住民がいつでも緊急外科手術を受けられるようになったという点で、活動の意義は大きいと思います。
Q. 活動には、どのような難しさがありますか?
A.医療機器の多くは旧式で、過去数年間のメンテナンスが不十分なため、必要な水準に達していません。たとえば発電機は安定して動かず、麻酔時に手動の人工呼吸器を使わなければならないこともあります。特定の薬や器具も不足していますし、夜間担当の産科医や、神経外科などの専門医もまだ見つかっていません。
Q. 治安の悪いイラクで、MSFが直接人びとを援助するのは非常に困難なことです。この活動はハウィジャの人びとには、どのように受け取られていますか?
A. とても好意的に見られています。救急部門が24時間体制で稼動していることは喜ばれています。このあたりの人に尋ねれば、だれもがMSFが病院で活動していることを知っていて、とても感謝してくれます。ハウィジャは2003年以来激しい暴力に見舞われており、特に2006年と2007年は過酷でした。病院が改善し、MSFが活動しているということが、人びとに多くの希望を与えています。事態が好転していると感じられるからです。
続く紛争により、イラク国内での人道援助団体の活動には困難がつきまとう。しかしMSFは、イラクの人びとに医療を提供すべく努力を続け、2006年以来、アンバルやバスラ、北部のタミーム県、ニナワ県など複数の地域で、医療機材の提供や研修を通じて現地病院を支援するプログラムを実施してきた。また隣国ヨルダンでも、戦闘によるイラク人負傷者に向けた再建外科手術のプログラムを運営している。
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