結核:顧みられない小児結核の診断検査 -マリアン・ゲール医師へのインタビュー-
2010年03月26日掲載
結核は健康への世界的な脅威として深刻な問題となっているが、依然としてこの病気は顧みられないままである。子どもは結核で命を落とす危険性が高く、この長年にわたる「放置」の主な犠牲となり続けている。
世界保健機関(WHO)の推定によれば、毎年100万人の子どもが結核を発症し、その大半が適切な診断検査や治療が受けられない環境で生活している。小児結核の診断は非常に難しいため、実際の感染者数はさらに多いと見られている。タイとニジェールで小児結核の治療にあたってきた、国境なき医師団(MSF)のHIV・結核専門の医療アドバイザー、マリアン・ゲール医師は、小児結核の診断に関して懸念されている点について次のように説明する。
Q. なぜ小児結核の診断は非常に難しいのですか。

タイで結核患者を診察するマリアン・ゲー
ル医師、2007年。
A. 理由はいくつかあります。まず、結核にはHIV、栄養失調、マラリア、その他のウイルスや細菌感染といった他の病気と同じ症状があることです。典型的な例としては体重減少、食欲不振、咳、数週間続く発熱などがあります。したがって、結核は症状だけでは他の病気と見分けることが非常に難しいのです。
次に、大人に用いられる標準的な結核診断検査は、子どもには全く適していないということです。この検査には、咳をして肺から喀出された喀痰のサンプルが必要ですが、子どもにとって大人のように咳をして痰を吐き出すのは、とても難しいことです。子どもの肺や胃からサンプルを採取する方法もありますが、この方法だと子どもの体に外傷を残す恐れがあり、訓練されたスタッフ、適切な医療施設、そして適切な検査機関が必要となります。しかし、資源の乏しい環境では、これらがすべてそろうことはまれです。
Q. HIV陽性の子どもの場合、結核の診断はさらに難しくなるのでしょうか。
A. はい。免疫機能が弱っているため、HIV陽性の子どもは特に結核に感染しやすく、それによって命を落とす危険も高いのです。病気の経過が複雑に重なり合うことから、こうした子どもたちの診断や治療は、さらに複雑で難しくなります。ただし、早期に診断が行われた場合、ほとんどの子どもには結核治療は有効であり、全快します。
Q. 小児結核の診断により優れた方法が存在しないのはなぜですか。
A. 小児結核が長年にわたって顧みられてこなかった主な理由の1つは、大人の結核よりも感染力が低いためです。子どもの肺は大人ほど結核菌が作り出さないため、咳をしてもそれほど病気が蔓延しません。そのため、集団の中で最も感染力の強い集団を対象にした結核抑制プログラムにおいては、小児結核の優先順位は低いままとされてきたのです。
研究者たちは、結核の調査研究から子どもを除外する場合が多くあります。大人と比べて非常に複雑なためです。MSFでは現在、国際的な結核専門家のグループとともに、この障害を克服し、結核研究において子どもの医療ニーズが優先課題と見なされるようにするための戦略について取り組んでいます。
Q. どのような種類の検査が開発される必要がありますか。
A. 求められているのは、結核で命を落とす危険性が高い子どもたちに速やかに治療を提供できるよう、すぐに結果がわかり、喀痰を使わずに済む診断検査です。現在、見込みのある開発もいくつか進んでいますが、十分な資金援助や取り組みがなされなければ、命を救うために必要な急速な進歩は実現できないでしょう。
Q. 状況を改善するためには何ができるでしょうか。
A. 新たな診断法や治療薬がない中で、できるだけ多くの小児結核患者に可能な限りの医療ケアを提供するためには、革新的なアプローチが必要です。治療は言うまでもなく、診断すら受けられず、本当は生き延びられたはずの子どもたちが大勢います。MSFにとっての目下の課題は、こうした新たなアプローチを開発して私たちの経験や知識を他の関係者たちと広く共有することです。
MSFは患者個人のレベルでの戦略に取り組む一方で、国際的なレベルでも長年にわたる結核への放置状態を脱却し、この病気へのさらなる資金援助と対策を強く要請しています。特に、結核が子どもに与える壊滅的な影響への対処に力を入れており、住んでいる場所にかかわらず、できる限り多くの子どもが生きて、成長していけるように活動しています。
懸賞基金を通じて、結核診断検査の開発を促進
最も一般的な結核診断法である喀痰顕微鏡検査は、1世紀以上も前に開発されてから実質的にほとんど変わっていない。実際には、顕微鏡検査では発見される患者の数と同じくらい見落とされる患者も多く、特にHIV/エイズに二重感染している結核患者や小児患者の発見に弱い。
迅速かつ正確な結果が得られる結核検査が、現在必要とされている。新たな結核検査の開発を促すために、MSFは懸賞基金のコンペを提案している。懸賞基金というやり方は、現行のような特許権による独占で守られた高額な販売価格に頼るという方法ではなく、開発の成功に対して高額の賞金を授与することで技術革新を促すことができる。また、成功した場合の開発結果と最も医療ニーズの高い分野に向けた直接的な研究のみに賞金を支払えばよいため、各国政府は研究開発を優先課題と位置づけやすい。
こうした検査は、患者の大半が診察を受ける臨床現場レベルで行われる必要があり、正確で、手の届く価格でなければならない。また、HIV陽性の人びとや子どもの結核を診断できるものでなければならない。
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