結核:薬剤耐性結核治療成功の鍵―ソーシャルワーカーと心理療法士
2010年03月23日掲載
国境なき医師団(MSF)がアルメニア保健省と共同で運営している薬剤耐性結核(DR-TB)治療プログラムでは、患者に薬剤の服用法を最後まで厳格に守ってもらう「アドヒアランス」が大きな問題である。2007年にこのプログラムで受け入れた患者のうち、約21%が治療完了までいきつかなかった。
治療に欠かせない心理面でのサポート

薬剤耐性結核の治療には2年を要することもあり、毒性のあ
る混合薬を毎日服用しなければならない。
治療は最長で2年を要し、患者は毎日、毒性のある混合薬、注射、粉末剤の投与を受けなければならない。重い副作用が出ることも多く、吐き気をはじめ、自分の居場所がわからなくなるような見当識障害から、特に腎臓と肝臓に関連する既存の愁訴*悪化まで、さまざまな症状が出る。時には副作用による症状があまりにひどいため、医師が薬の投与をやめて治療の失敗例とする場合もある。
*愁訴:疲れ、食欲不振、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、めまい、耳鳴り、胃腸の不振、不眠などの症状を訴えること。
MSFのチームでは、薬剤耐性結核患者の治療にあたる医療スタッフに加えて、ソーシャルワーカーと心理療法士が中核になっている。これらのスタッフは患者を励まし、つらい治療を最後まで続けるには欠くことのできない存在である。
MSFの心理的支援活動責任者、ハスミク・ハコジャニヤンは語る。
「患者が心理的に健全でなければ、この疾患を乗り越えることは難しいでしょう」
アルメニアでは、結核に対して非常に強い偏見がある。この病気にかかり、入院し、経過観察を受けていることで、患者は孤立感を抱く。治療を成功裏に終えるためには、心理面への配慮が重要である。
ハスミクは、心理療法士チームに同行して患者の元を訪れ、入院時から薬を服用するため週に6日診療所に通う通院治療の段階まで、心理面のサポートをする。彼はこう語る。
「こういう状況を抱えた人が、憂うつになったり、ストレスを感じたり、自信を失くしたりすることは、よくあることなのです」
家族との関係も劇的に変わることが多い。このため、患者は状況の変化に合わせたカウンセリングが必要になる。
ハスミク心理療法士は語る。
「患者が男性で、家族の中で働きに出ている唯一の人だった場合、自分に価値がないように感じることがあります。いま働いていない患者もいますが、代わりに家計を支えなければならない子どもだちに対して、何も言えなくなる父親もいます」
患者は通常、治療が始まったばかりのころは意欲的だが、副作用が始まると、積極的でなくなる場合がある。
MSFのソーシャルワーカー、マルガリタ・ザリベクヤンは語る。
「患者さんが薬の服用を始めたときは、快復への希望があります。その後、身体にさまざまな問題を引き起こす副作用に直面します。そうなると、希望がなくなったように感じたり、薬が効かないのではないかと思ったりするようになるのです」
患者の実生活への支援

患者の家を訪れるMSFの看護師。診療所に足を運べない患
者は自宅で投薬を受けることもできる。
薬剤耐性結核では、こうした心理面のサポートのほか、多くの患者はより実生活に即した手助けも必要である。
ソーシャルワーカーは患者の入院に必要な書類の作成を手伝い、入院中の衛生用品キットと栄養補助、患者が退院した後は自宅からの通院治療を続ける手伝いをする。場合によっては、MSFは食料配給券を配り、冬場に必要な燃料や週に6日間の通院治療に必要な交通費を家族に渡している。
治療の難しさは、患者が快復したときの大きな喜びにもつながる。
ザリベクヤンはこう語る。
「患者が快復するのを目にすると嬉しいです。患者が治療を終える手助けをできたのだと実感できます。でも、それはチーム全員の仕事の集大成なのです」
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