ハイチ:MSFインターナショナル会長のインタビュー(1月29日現在)
2010年02月02日掲載
ハイチで活動する現地スタッフと緊急対応チームの応援に首都ポルトープランスへ赴いた、国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長のクリストフ・フルニエ医師へのインタビューを伝える。
Q.ハイチ地震から2週間が経ちましたが、今回の災害の印象はどうですか。

ハイチでスタッフと話をする、MSFインターナショナル会長の
クリストフ・フルニエ医師。
A.これまで見てきたのは、医師、看護師、外科医、ロジスティシャン(物資調達管理調整員)が想像を絶する状態で活動し、治療にあたり、命を救っているということです。路上で、歩道で、損壊あるいは倒壊した病院の裏や前などで、彼らは活動しています。そして、患者を新たに片付けられた病院やテントや防水シートの下に設けられた病院に搬送するというすばらしい働きもありました。これらはみな、本当にすごいことです。救命、治療件数両面で、大きな貢献となりました。
Q.今、最もハイチの人びとの健康で懸念されていることは何でしょうか。
A.まずいえることは、MSFが治療した負傷者の数は6000人を大きく上回るということです。このうち、大手術と切断手術は1000件以上にのぼります。そして今一番心配なのは、いかに入院治療を必要とする患者数に見合う体制を整備するかということです。彼らを受け入れるベッド数を増やす必要があります。これまで以上に市内のあちこちに新しいテントを設営し、"術後ケア村"を作って患者が家族と一緒にいられる状態で、看護師、医師、理学療法士、心理療法士にも診てもらいつつ、心身両面において傷の快復をゆっくり待てるような施設が必要なのです。
Q.術後ケアについてさまざまな話を聞きますが、具体的にはどのようなことでしょうか。
A.傷が感染症を引き起こしている患者が多くいます。これはけがをしてから早い時期に病院に来なかったことによるものです。倒壊した自宅の周辺にとどまっていたために傷口がなんらかの感染症にかかり、結果、感染症をくい止めるために時間をかけて縫合し傷の治癒を待つという、長期間の治療が必要となります。また、切断手術が必要となった患者さんも多くいます。彼らも快復には長くかかります。このように、傷によっては快復が長期化することが、おわかりいただけると思います。
ポルトープランスの南にある都市レオガンに搬送したある女性の話をしましょう。ここも今回の地震による被害を受けたところです。この女性は3日間倒壊した自宅の中で生活していました。この状況の中で彼女は左眼を失ったため、私たちは既に壊死状態にあった左眼球の摘出だけでなく、その周辺部位まで切除しなければなりませんでした。この小さな都市レオガンでできる処置はそこまででした。しかし、家に残っていた3日間に彼女は感染症にもかかっており、それが体に広がりました。この感染症のため彼女は危険な状態となり、私たちは彼女をヘリコプターで新しい病院に搬送しました。その病院はMSFが短期間に新設した病院で、彼女の処置にあたれる集中治療ユニットや救急科専門医、麻酔科医のいるところでした。
また、破傷風についてもふれておきたいと思います。破傷風の症例が増えてきています。なぜなら、ここでもまた、被災以来、人びとは倒壊した自宅のがれきの中で生活しているからです。私は破傷風にかかった一人の少女のことを覚えています。破傷風で命を落とすところでした。心不全も起こり、MSFは、これも路上でしたが、蘇生措置を行い、なんとか彼女の治療にこぎつけました。危機的な数日間が過ぎた今、この子は少しずつですが快復しつつあります。こうした改善の症例を目にすることは嬉しいものですが、破傷風をはじめとして、このような厳しい状況にある家で生活したときにできる傷がどのようなものか、これらの感染症が物語っていると思います。
これほど多くの人がハイチでが亡くなっていることを懸念している方も多いでしょう。しかし、同時にMSFだけでなく、さまざまな団体や機関の尽力によって、多くの命が助かっています。今も続く尽力と支援規模にも、思いをはせていただければと思います。
今回印象に残ったのは、現地の混乱した状況と、国連、全援助活動従事者、軍との間で全く調整が不充分だったことでした。皆さんは大臣や米軍から、このような震災で見られる混乱した状況についてお聞き及びだと思います。しかし、この混乱の中でMSFは数千人の患者に有効な治療を提供することができました。そして、迅速にテント病院を設営し、倒壊していない建物を見つけて、治療施設にあてることができました。MSFはこれらの活動に非常に効率的に動くことができました。ご存知のように、ポルトープランス市内の医療システムは今回の地震以前から崩壊しており、そのためMSFは以前からポルトープランスで外科治療や、1ヵ月あたりの分娩件数が1000件にのぼるような産科医療を提供していたのです。その背景にはポルトープランスにおける高い妊産婦死亡率がありました。
今後も課題は残ります。信じ難いほど多くの負傷者に対処しなければならないうえに、一生残る障害を負われた方も多くいるからです。また、MSFはこれと併せて、住民300万人を抱える首都が必要としている病院での医療サービスについても再開する予定です。これは今後、数週間、数ヵ月間にわたって、私たちの優先課題の一つとなるでしょう。
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