コンゴ民主共和国:キブ州におけるMSFの活動状況 -11月17日現在-
2009年12月04日掲載

コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ」)東部で激しい武力衝突が発生し、何千人もの死者と何万人もの避難民を生んでから、この11月でちょうど1年になる。紛争は沈静化したとする声もあるが、市民への暴力は弱まることなく続いている。国境なき医師団(MSF)は、南北キブ州全域で行っている各種プログラムを通じて、毎日こうした暴力がもたらす人びとの「傷」と向き合っている。
【北キブ州】

MSFがルチュルの町で運営する病院で、やけどの治療を
受ける10歳の少女。
ルベロ郡では、コンゴ政府軍がルワンダ系反政府勢力「民主解放軍(FDLR)」に対して軍事作戦を行った結果、大勢の人びとが避難する事態を招いた。2009年初頭に発生した武力衝突によって、村々は襲撃され、略奪され、焼き尽くされた。
2月から3月にかけて、カイナ地方とルベロの町におよそ10万人の避難民が到着した。これに対応して、MSFはカイナとカニャバヨンガで既に開始していたプログラムをルベロ郡にまで拡大し、移動診療チームが暴力の被害が最も大きかった地域で避難民と現地住民の診察を行った。重症患者はMSFが運営する病院へと移送した。
ルチュル郡は他の地域に比べて安全であるとはいえ、依然として不安定な状況が続いている。MSFがルチュルの町で運営する病院では、銃撃による負傷者の治療を日常的に行っており、強盗行為も頻発している。

ニャンザレ近くに設置された移動診療車の中で治療を
受ける患者。コレラが疑われている。
MSFの外科チームは夜昼を分かたず働き、1日あたり平均15件の手術を行っている。重症患者は救急車でこのベッド数280床の病院に移送されてくる。活動内容には、救急医療、内科、小児科、集中治療、そして月に300件以上の分娩が行われる産科病棟での診療が含まれる。病院にはこのほかにも、やけど治療、新生児医療、コレラ治療のための専門ユニットが設けられている。
ニャンザレではベッド数130床の病院を運営している。この病院には、産科、小手術室、外来部門、栄養失調児の集中栄養治療センター(TFC)、内科、集中治療病棟が備わっている。また、性暴力の被害者に対する専門的な治療も月あたり平均142人に対して提供している。さまざまな武装勢力がはびこり、多くの人びとが避難している情勢不安定なニャンザレ周辺の地域でも、診察とはしかの予防接種を行っている。
2009年10月、状況が沈静化して自宅に戻り始める避難民も出てきたことから、MSFはカビゾにおけるプログラムを終了した。1年以上にわたり、MSFはこのプログラムを通じて避難民と現地住民に対する治療の提供、栄養失調児の治療、性暴力の被害者に対する専門ケア、および移動診療を行ってきた。

北キブ州ビシュシャ村にある、MSFの緊急栄養治療診療
所で診察を待つ子ども。
マシシ郡では、マシシの町にあるベッド数170床の病院内で活動しており、この1年間で7万1000件の診察を行った。また、160床のムウェソ病院では、緊急外科手術と性暴力の被害者に対する専門ケアを中心に活動している。また、キチャンガ、ムウェソ、マシシ、ニャビオンドの診療所でも活動している。マシシとムウェソの病院、そしてキチャンガの診療所には、栄養失調児の集中栄養治療センター(TFC)を開設している。
キチャンガの心理ケアプログラムでは今年6月以降、6000件を超えるカウンセリングを行った。マシシでも、性暴力の被害者をサポートし、地域社会で性暴力に関する啓発活動を行う地元自治体職員のネットワークと協力して活動を行っている。
MSFはマシシ郡で生後6ヵ月から15歳までの子ども30万人以上にはしかの予防接種を実施し、数千人の避難民たちが暮らす複数のキャンプで水・衛生関連の緊急対応を行った。
さらに南部では、キロチェ総合病院および南北キブ州の境界に位置する農村部ルバヤ、ングング、ルショガの3ヵ所で診療所を支援している。
ここ数ヵ月、この地方の治安状況は改善されており、避難民たちは自分の村に戻っている。しかし、キロチェ、シャシャ、ヌグングを中心に、小さなキャンプまたは受け入れ家族のもとで、まだ多くの避難民家族が暮らしている。MSFはこうした人びとに対して無償の治療の提供を続けている。
今年7月から、MSFはオンボ北部のシャンブシャ病院でも緊急外科手術を行っている。このあたりでは、今でも戦闘が報告されている。
8月にはゴマ市でコレラの流行が発生した。MSFは3ヵ所の診療所とゴマ総合病院を支援し、物資の提供やトラック輸送による給水を行った。
ルチュル、ニャンザレ、マシシでは、出産に高いリスクを抱える妊婦や性暴力の被害者を対象とした女性のための病棟「ウェルカム・ビレッジ」を開設した。
【南キブ州】

キンチャガ近くの避難民キャンプに暮らすジャスティンと
家族。徒歩で約1週間かかって、キャンプにたどり着いた。
南キブ州の情勢は依然として不安定であり、コンゴ政府軍、「民主解放軍」、そしてさまざまな反政府勢力の間の激しい戦闘がいくつかの地域で続き、数千人の避難民を生んでいる。多くの世帯が戦闘や武装勢力による強奪行為を恐れて村を離れることを余儀なくされ、近隣の地域に避難している。今年に入ってカロンゲ郡では大規模な避難が3回起こり、避難民の数は、およそ4万2000人に達した。
MSFはカロンゲで避難民とその受け入れ家族に医療を提供しており、シフンジの総合病院および農村部、シャミヌヌ、ムタレ、ムレ、フェンドゥラの計5ヵ所の診療所で活動している。最近では、避難民1324世帯に生活必需品や農具の配布も行った。また、性暴力の被害者にも専門の治療を提供している。
バラカの病院の支援もしており、これまでに1万6000件の診察を行い、5000人の入院患者の受け入れを行った。バラカの周辺で風土病となっているコレラにも対応し、水の塩素消毒や患者の治療にあたっている。栄養失調もこの地方の慢性的な問題で、この1年間で栄養治療プログラムに700人を超える子どもを受け入れた。
「民主解放軍」に対する軍事作戦を避けて避難した住民に対し、MSFは今年7月初旬からルリングで3ヵ月間の緊急対応プログラムを実施した。このプログラムでは3ヵ所の診療所を支援し、避難民と現地住民に基礎医療を提供した。
MSFは南北キブ州の双方で、急速に変化する不安定な状況に対応しており、移動診療、新たな地域の調査、各チームの迅速な再配置を行っている。移動診療チームはルチュル、ニャンザレ、ルベロ、ムウェソ、キチャンガ、ピンガ、マシシ、キロチェ、カロンゲ周辺の村々およびキャンプで活動している。
3月中旬から8月中旬にかけて、暴力の被害にあっても外科治療を受ける術が全くない、南キブ州のブニャキリ、そして北キブ州のカイナとニャミリマの計3ヵ所に、外科チームが飛行機で向かった。合計で289件の手術を行ったが、そのうち31%は暴力が原因の症例だった。
MSFは1992年からコンゴ東部で治療を提供している。
2008年10月から2009年11月までに、MSFが南北キブ州で行った活動内容
- 性暴力被害者のケア:5330人
- 暴力による負傷者の外科治療:1550件
- 診察:52万8850件
- コレラ患者の治療:4900人
- 生後6ヵ月から15歳までの子どもに対するはしかの予防接種:33万人以上
- 栄養失調児の治療:1万160人
- カウンセリング:7060件
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