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パレスチナ・ガザ地区:MSFの心理ケアプログラム担当医からの報告

2009年11月19日掲載

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イスラエル軍による軍事攻撃、「鋳造された鉛」作戦は、2008年12月27日にガザ地区で開始された。この作戦は、住民の生活にどのような影響を及ぼしたのだろうか。2009年7月に現地の患者、MSFの外国人派遣スタッフ、およびパレスチナ人スタッフに対して行われたインタビューは、その実態を伝えている。

ここでは、心理ケアプログラム担当医のアクラム・ナフィ医師による報告を紹介する。


攻撃が続く中、医療キットをもって近隣を廻りました

アクラム・ナフィ医師(右端)
アクラム・ナフィ医師(右端)

戦争が始まったとき、私はここで活動を続けていました。私たちは人びとが集まっていた学校へ行って、物資の無償で提供し、緊急医療ケアにあたりました。私はMSFから、抗生物質、包帯交換用物資、やけどやけがの治療用物資、経口補水液、鎮痛剤、精神安定剤からなる医療キットを受け取り、医療施設まで行けなくなった近隣の人びと約60人の治療を行いました。

屋外が危険で外出を控えた人は多かったのですが、それでも病院は次々とやって来る重傷者であふれかえっていました。停戦後は何もかもが荒廃した状態でした。F-16戦闘機による空爆で、街路には深さ20フィート(約6メートル)以上の穴が残りました。住宅屋上の給水タンクはすべて破壊されました。住民は窓ガラスの代わりにビニールシートを張り、自宅の掃除を始めました。どこも粉塵だらけでした。

心的外傷後ストレス症候群など、多くの人びとが戦争の後遺症に苦しんでいます

戦争のもうひとつの爪跡は、心的外傷後ストレス症候群でした。この症状は原因となる事象のおよそ3ヵ月後から6ヵ月後、つまり今ごろになって現れます。戦争直後は元気に見えた多くの人びとが、今は深刻な不調に陥っています。外でも自宅でも幻覚が見えたり、非常に攻撃的で神経質になったりしています。腹痛や下痢も多く見受けます。

また、白血病や前立腺がん、乳がんの症例も若年層の人を含めて多いです。これは心因性のものなのでしょうか。大半の子どもたちが、夜尿をするようになっています。私の息子は毎晩、寝付いてから1~2時間後に目を覚まします。息子はおびえていますが、私たちが落ち着かせようとしても、私たちの声は聞こえず、私たちが目に入りません。妻はサイレンが少しでも鳴ると泣き出します。私自身もまだ本調子ではありません。記憶力と集中力に問題がありますが、なんとかやっています。

こんな経験の後で、深い鬱に陥らない人がいるでしょうか

戦争前には、私は心理ケアプログラムで平均13人の患者を担当していました。今では患者は約50人です。どの人も深刻な状態で、食事も睡眠もとれていません。ある青年は片脚と両目を失いました。爆撃の中、彼は友人たちと一緒に他の住民を助けようとしていました。友人たちは全員死亡し、彼は3時間友人たちの死体の下敷きになっていました。病院でも死んだと見なされ、遺体安置所に移されました。実際には生きているとわかるまで、彼の家族は2日間、彼の死を嘆き悲しんでいたのです。

また、ある女性患者は、戦争で息子3人、夫、義理の娘を失いました。彼女は遺体の残りをかき集め、3日間家畜小屋に閉じこもっていました。イスラエル軍は彼女を避難させましたが、遺体の埋葬は拒否し、車でその上を通って行きました。こんな経験の後で深い鬱状態に陥らない人がいるでしょうか。MSFは彼女を見守り続け、薬を投与し、住居も用意しました。当初、彼女は全く無気力でしたが、少しずつですが、生活を始め、眠り、寒暖を感じ、料理をするようになってきています。まだ数ヵ月は援助が必要でしょうが、彼女のように回復していく患者を見ると、役に立っていると感じます。

身体の機能損失、困難な物資調達、失業……問題はあまりにも多いです

切断手術を受けた人は命が助かって喜んではいますが、これから義手や義足を装着して自立した生活に戻りたいと願っています。しかし、義手も義足もありません。どうやって生活を立て直せるでしょうか。ガザ地区の問題はあまりにも多いのです。建築資材、医薬品、医療物資、衣料品、靴、コーヒー、時計の電池など、多くの品物が経済封鎖で搬入できないのです。粉ミルクは一部搬入を認められているものもありますが、哺乳瓶の入手は非常に困難です。物価は上昇する一方です。乳製品は搬入に2日かかり、その頃には腐ってしまっています。検問所が閉鎖され、緊急医療の必要な患者は外に出られません。以前はトラックは通行可能でしたが、現在の状況は非常に複雑化しています。そして、戦争のまた別の爪跡、失業問題も起きているのです。

ときどき、この地を離れて外の空気を吸い、空を見上げ、それから戻って来られればいいのにと思います。

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