コンゴ民主共和国:「誰の目にも、言葉では言い表せない恐怖が浮かんでいます」―プログラム責任者インタビュー
2009年09月11日掲載

キャサリン・ダーダリアンは、コンゴ民主共和国(以下「コンゴ」)におけるプログラム責任者の任を終えて帰国した。このインタビューで、彼女は現地で暮らす人びとの様子について、また、ウガンダ系反政府勢力「神の抵抗軍」とコンゴ政府軍が衝突するこの地域を支配する恐怖について語った。
コンゴ北東部の状況は?
2008年9月以来、コンゴ北東部のオー・ウエレ地方とバ・ウエレ地方では、隣国ウガンダから来た反政府勢力「神の抵抗軍」が、武力で住民を脅しています。2009年3月に、ウガンダ、コンゴ、南スーダンが「神の抵抗軍」に対して共同作戦を開始してから、状況はさらに悪化しました。現在、コンゴ、南スーダン、中央アフリカ共和国では、武装勢力が一般市民に対して暴力行為を続けています。
治安が非常に悪いため、人道援助団体が人びとのもとに行くのは困難な状況が続いています。コンゴ北東部とスーダン南部では、深刻な危機が放置されている状況です。
現地での活動の様子は?
私は、オー・ウエレ地方にあるニャンガラとファラジェという町で行われていたMSFのプログラムを担当しました。
ニャンガラでは、約50床を備える基幹病院を支援し、性暴力の被害者の治療と心理ケアを行っています。また、町を横断するウエレ川の対岸でも診療所を運営しています。ニャンガラのチームは週に800件の診察を行っています。
ファラジェでは、ベッド数40床の診療所を支援し、チームが週500件の診察を行っているほか、心的外傷を残すような体験をした人びとに心理・社会面の支援を行っています。
ドゥング、ディンギラ、ドルマでは、別のMSFチームが活動しています。
オー・ウエレ地方とバ・ウエレ地方のプログラムでは、コンゴ人スタッフ130人と海外派遣スタッフ21人が活動しています。
暴力で追われた避難民と、避難先の地元住民の状況は?

ファラジェ近くのマタラキャンプには、北東部での暴力行為と
治安の悪さから逃れるため、500人のコンゴ人が避難している。
公式の推定によると、コンゴ北部で起きている暴力からの避難者は25万人にのぼり、それ以外にも数万人が国境を越えてスーダン南部に避難しています。ファラジェでは、4000人の避難民が3つのキャンプで生活しており、ニャンガラでは、約1万人の避難民が地元住民の家庭に仮住まいするなどさせてもらっています。
これらの地域の人びとの生活水準は非常に低いのですが、地元住民と避難民との間には非常に固い結束があると思います。問題は、避難民だけでなく、住民にとっても、生活環境がますます悪化しているということです。
人道援助活動は行き届かず、地元住民は自分たちにできることをしています。話す言語が全然違う避難民もいるのですが、そのような人たちにさえ、住む場所、食糧、衣服を分けています。私が出会ったある女性は、夜や早朝に恐怖のあまり服を着る間もなく、命からがら村から逃げ出した避難民の話をしてくれました。
私たちが活動している町では、避難民が自分たちの着ている服を指差して、ここに来たときにもらったと話すことがよくありました。すべてを分け合っている状態なので、食糧が減り、暮らしの手段もほとんどなくなって、避難民と地元住民両方がいっそう危うい状況に置かれています。誰もが、何もかも(悲惨な貧困も!)共有しています。
避難民は家に帰ることはできますか?

ファラジェの診療所で治療を受ける母親と赤ちゃん。
家に帰ろうとした人もいますが、ごくわずかです。帰ってみたものの、家は焼かれ、所有物は略奪され、非常に危険なため、その場に留まることができないこともしばしばです。大半の避難民は恐怖心を持っており、集団でいるほうが安心できるので、町やキャンプに留まっています。
十分な食糧がなく、生き伸びるために自分の畑に戻ろうとする人も一部いますが、3~4月に種をまいた分は収穫ができませんでした。今、次の収穫期へ向けて種をまく時期ですが、大半の避難民は情勢不安と恐怖心から、種まきができません。
人びとの心の状態は?
2008年9月から、ずっと攻撃が続いており、ファラジェではクリスマスにも攻撃がありました。誰の目にも言いようのない恐怖が浮かんでいます。
ほとんど全員が、自分自身または知人が、殺人、レイプ、拉致の被害に遭うなど、何らかの暴力行為の影響を受けているので、恐怖心は根深いものがあります。暴力行為、深夜や早朝の襲撃への恐れからくる不眠症、子どもの拉致、家と土地を離れなければならないことなどへの恐怖です。
現地の人びとは「私は農民だ」と話します。畑さえあれば食べていくことができて、万事うまくいっていた土地柄ですから、今の状況は深刻です。
MSFは、マラリア、呼吸器感染、性感染症の治療を行っていますが、胃炎や特定できない痛みの症例もあります。それらはストレスの現れです。
心の問題へのMSFの対応は?
私たちは治療に加えて、心理・社会面の支援プログラムも提供しています。この地域で会う人は、ほとんど全員が心的外傷を残す体験をしています。ここ数週間、ファラジェの診療所では、「神の抵抗軍」が、運搬人、戦闘員、性的奴隷として働かせる目的で拉致した子どもの数が増えています。
私たちは9~18歳前後の少年少女108人の治療にあたりました。これらの子どもたちに、寝る場所、遊ぶ場所、そしてMSFの心理療法士による個別のカウンセリングを提供しています。子どもたちの劇的な回復を見るのは、嬉しい驚きでした。
援助団体はニーズに応えることができていますか?

ファラジェの病院に入院し、慢性疾患の治療を受ける避難民
の患者。
治安も道路の整備事情も悪いため、人道援助団体がこの地域で活動するのは非常に困難です。 MSFも、同じ理由から空路での移動を強いられています。現在、避難民や地元住民への援助は完全に不足しています。そのため、私たちは他の人道援助団体に、オー・ウエレ地方とバ・ウエレ地方に来て、常駐するように要請し続けています。
現地で印象に残ったことは?
MSFのような団体が現地に存在していることは、医療援助と人道援助だけでなく、人びとが日常生活の感覚を取り戻す助けにもなっているようです。ひとつ例をお話ししましょう。
私たちが最初にニャンガラに来たとき、病院は可能な範囲で最善の運営をしていましたが、周囲を背の高い草に覆われて、悲惨な状況でした。私たちは医療活動を開始する一方で、草刈りも始めました。それ以降、それを見ていた人びとが町中で草刈りを始めたことに気づきました。とても象徴的な出来事だと思います。
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