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パキスタン:スワート渓谷からの避難民と受け入れ家族両方に医療を提供

2009年09月08日掲載

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パキスタン北西辺境州における反政府武装勢力タリバンと政府の武力衝突は、2009年4月中旬以降、激化し、5月には危機的レベルに達した。政府の統計では、210万人が北西辺境州での戦闘を逃れて、マルダン郡、チャルサダ郡、およびペシャワール市などに避難した。国境なき医師団(MSF)のドイツ支部会長タンクレート・シュトゥーベは現地で医療コーディネーターを務め、先月帰国した。地元住民がどのように困難に対処しているのか、報告する。


Q. 数多くの避難民が身を寄せているマルダン郡などの状況は?

A. 現在は気温が摂氏40度から50度の間で、猛烈な暑さです。そのためどのような活動をするにしても、援助を届ける側も必要とする側も、いつも以上に労力を要します。

政府と軍が設営した避難民キャンプにはほとんど人がいません。それは、戦火を逃れた人のほとんどが友人や親戚の家、もしくは学校などの公共の建物に身を寄せているからです。まだ怖くて家に戻れない人が大勢います。

そのため、受け入れ家庭の負担は非常に重くなっています。すでに何週間も何ヵ月も避難民を受け入れています。その結果、多くの家族は金銭的にも肉体面にも、ぎりぎりまで追い詰められています。

ダルバンドの一次医療診療所で治療を受けるバシート少年。
ダルバンドの一次医療診療所で治療を受ける
バシート少年。

Q. MSFはどのように、避難民や受け入れ先家族の援助にあたっていますか?

A. MSFの診療所では、外来患者全員に無料で医療を提供しています。マルダン郡の病院に、男女両方を対象とした治療拠点(注)だけでなく、事故・救急科も開設ました。また、重症の下痢症治療センターは、主な病院施設から離して設置し、一定の衛生水準が保たれるようにしています。コレラが風土病となっている地域のセンターでは、コレラの感染が疑われる患者の治療件数が増えています。

(注)パキスタン国内でもイスラム教の戒律が厳しく守られているところでは、女性患者も医療を受けやすいように、男女別に診療所を設ける場合があります。)

MSFは、北西辺境州の主要都市、ペシャワールとその周辺6ヵ所にある一次医療診療所で活動しています。毎週、約1000人の患者を治療しています。ほとんどが、下痢症、呼吸器系疾患、皮膚科疾患を患っています。

私たちは10歳のバシートをはじめ、多くの子どもを治療しています。バシートは、母親に付き添われて、北西辺境州東部のダルバンドの一次医療診療所へやってきました。そこではバシートの兄弟2人も以前から治療を受けていました。

バシートの膝は腫れて、かゆみがありました。兄弟同様、この地域で流行っているリーシュマニア症という病気に感染していたのです。世間ではあまり知られていませんが、リーシュマニア症は昔からある病気で、年間約200万人が感染しています。症状は、高熱、皮膚の赤みやヒリヒリ感、体重の急減、関節痛、脾臓肥大化などです。

リーシュマニア症のうち最も危険な種類が、カラアザール(内臓リーシュマニア症)と呼ばれています。治療せずにおくと、死に至ります。バシートのリーシュマニア症はこの種類ではなく、全快する可能性は十分あります。ただし、つらい痛みを伴う注射を用いた治療を受けなければなりません。

Q. 戦闘で負傷した患者の状況は?

A. 重症患者は減少していますが、包帯交換や傷口の消毒、経過観察、理学療法といった手術後のケアがまだ問題です。それに加えて、負傷者への救急医療を十分に行えるところが、パキスタン国内にはありません。襲撃で命を落とす人が今も後を絶ちません。このような人びとに救急援助を届けることが大きな課題です。助かる見込みのある負傷者が、病院に到着する前に亡くなっています。さらに病院の救急医療も現状のままでは不十分で、早急に改善が必要です。アフガニスタンとの国境地帯をはじめとする農村部での一次医療にも、同じことが言えます。

MSFドイツ支部会長タンクレート・シュトゥーベ。現地にて。
MSFドイツ支部会長タンクレート・シュトゥーベ。
現地にて。

Q. 現在、十分に援助は行き渡っていますか? 避難民は今後どうなるのでしょうか?

A. 今年パキスタン北部で起こった騒乱が、2005年カシミール地方を襲った地震以来、最悪の人道危機を引き起こしたことは明らかです。スワート渓谷から避難してきた人びとには、一通りの援助ができていますが、他にも避難民のグループがいます。たとえば、スワート渓谷北西部から来た貧しいバジャウル族です。彼らは故郷に戻っても、一から生活を立て直さなければなりません。現在の危険な政治情勢ゆえに、生活再建はさらに困難になっています。これから先、何年も海外からの援助頼みになることが予想されます。

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