中央アフリカ共和国:活動責任者へのインタビュー - 「避難民たちは終わりの見えないこの不安定な情勢に疲れ切っており、常に恐怖に支配されています」
2009年06月15日掲載
中央アフリカ共和国(CAR)では、長年にわたる紛争を終結させるために策定された和平プロセスが実施されているにも関らず、政府軍や反政府勢力などさまざまな武装勢力が現在も北部の多くの地域で戦闘を続けている。さらに、複数の地元集団や武装強盗団同士の対立も、同地方の不安定な情勢や暴力を一層悪化させている。国境なき医師団(MSF)のCARにおける活動責任者として1年間の活動を終えて帰国したばかりのガブリエル・サンチェス・イバラは、インタビューで自身の見解と体験について語った。

避難民キャンプで診察を受ける母と子。
Q. CARでは和平合意が成立したにも関わらずここ数ヵ月間で暴力が激化していますが、その理由は?
A. 暴力は常に存在し続けてきました。政府と反政府武装勢力との政治的な対立が原因の場合もあれば、強盗団同士や地域社会内部の集団の対立が原因の場合もあります。今回の場合は数ヵ月にわたり、2007年と2008年に停戦協定に署名したいくつかの集団や反政府勢力などが、和平プロセスに関して意見の相違が生じたため戦闘を再開し、これが政治的暴力の再燃する契機となったのです。
Q. そうした襲撃が人びとに与える人道・医療上の影響は?
A. 直近の襲撃による最大の影響は人びとが避難民となったことです。もっともこの国では人びとの避難はもう何年にもわたって常に発生している現象となっていますが。今回は特定の地域で著しく影響があらわれ、人びとは戦闘や報復攻撃の可能性を恐れて避難しました。戦闘地域から遠く離れた、人びとが避難していた場所でさえも襲撃は発生しました。避難が発生した時期も決定的な意味を持っていました。1年のうちでマラリアへの感染がピークを迎える雨季の始めで、畑に種を播く季節でした。これらの要因が重なって避難民キャンプや人びとが逃げ込んだ森林地帯における生活環境は一層厳しくなり、通常の農業活動が妨げられたために従来から既に厳しかったこの地方における食糧確保がさらに脅かされました。
Q. そうしたニーズに対処するために、MSFはどのような活動を行っていますか?また、直面している課題は?
A. 紛争地域での活動には、常に困難が伴います。患者やチームのスタッフの命を危険にさらすことなく、必要としている人びとの元に援助を届けることは、引き続き課題となっています。さらに、CARでは、緊急事態の発生時にMSFが援助する必要のある人びとは交通不便な遠隔地にいる上に、極度の恐怖の中で生きています。人びとの援助ニーズは常に最も基本的なものです。なぜなら、人びとは何のインフラもない森の中での避難生活によって、極めて弱い立場に置かれているからです。避難民や行政機関からは、この地方で活動する数少ない援助団体に対して、一次医療、避難所、調理器具、食糧に関する援助の要請がありました。これまでのところ、MSFはこの地方で作戦行動を行っている武装勢力との交渉や、他の援助団体との活動の調整を支援することができています。独立性を保ちながら、避難民のもとに安全が確保された上で赴くことができるためには、日ごとの交渉が必要となっています。
Q. MSFは現在どのような活動を行っていますか?
A. カボにおけるMSFのプログラムは、2種類の要素を基に組み立てられています。1つ目は恒常的なサービスであり、ベッド数100床の病院を建設し、外来部門、入院病棟、緊急手術室、HIVや結核などのさまざまな病気に対するプログラム、あるいは母子保健といった幅広いサービスを人びとに提供することです。もう1つは、この地方を定期的に襲う緊急事態や危機に素早く対応して、暴力、流行性疾患、避難生活の直接の影響を受けた人びとに対して避難所や医療の提供を試みる活動です。ここ数ヵ月にわたる紛争の間、この2つの機能は十分に機能しました。病院は1日も休むことなく、チームは各種の活動を続け、医療施設は常に稼働し続けました。問題は、一部の住民は恐怖、戦闘、または避難生活のために自由に医療施設に足を運べないことでした。このため、MSFはこちらから路上や避難民キャンプで暮らす人びとの元に赴き、彼らを診察し、救援物資を配布し、そして診療所へ行くことのできない人びとに治療を提供せざるを得なかったのです。
Q. その詳しい活動方法は?
A. 避難民たちは森の中でさえも襲撃を受けていたため、道路からはるかに遠く離れたより奥地へと逃げ込んでいました。彼らに援助を届けることや彼らと接触することさえ難しくなっており、このため、MSFはバイクまたは徒歩で12kmも森の奥深くに分け入り、新たな形態の移動診療を行わなければならなかったのです。
Q. 人びとに心の傷の問題は見られますか?それに対する活動計画は?
A. 3年間も暴力にさらされ続けたことで、人びとに心的外傷や恐怖が蓄積し、問題行動が生じているのは明らかです。避難民の中には、1年半のうちに3回も避難を強いられ、こうした不安定な状況に常に直面していることに疲れ切っていると語る人びともいました。避難民たちは常に恐怖にとらわれています。身体的な暴力への恐怖や、自宅が燃やされたり略奪されたりするのを目の当たりにする恐怖です。MSFはこうした恐怖に関係していると思われる、不安感や不眠症など原因不明の症状やストレス傾向の増大を確認することができました。
CARで活動するMSFのチームは、直接的に暴力の被害を受けた負傷者の治療や、避難生活における健康管理の経験は豊富ですが、被害者の心理・社会的支援という側面においては改善の余地があります。暴力の渦中でMSFが提供する一連のサービスは包括的なものであり、この1ヵ月の戦闘の間、私たちは心理・社会的支援の要素も盛り込むように努めました。
Q. 紛争のさなかアフリカ睡眠病に取り組むことの難しさは?人びとが暴力にさらされ避難を強いられれば、そうした不安定な状況の中で治療を続けることは困難ではありませんか?
A. 治療薬の服用規定の遵守の面ではかなりの進歩がみられ、ほぼすべての患者が治療を終えています。バタンガフォの近郊一帯とその周辺地域では積極的な探索を行ったことで、患者の発見においても改善がみられました。しかし問題は、伝統的に治安の悪い地域の奥深くまで危険を冒して入り探索を行う必要があるという点であり、しかもこうした地域における罹患率が非常に高いことはほぼ確実なのです。CAR北部地方は現在世界でもアフリカ睡眠病の最も活発な発生地の1つであることを考慮する必要があります。
人びとの避難による最も大きな影響は、治療の提供だけではなく、再発の発見に役立つその後の経過観察や監視、そして回復過程のフォローアップに及びます。バタンガフォではこれらを実施できない状況が続いています。
Q. 都市周辺地域へのアクセスに問題はありましたか?積極的な患者の探索を行うことにより生じる課題は?
A. MSFのチームは2006年以来3万人を超える人びとを診断し、千人を超える患者を治療することができました。人びとの参加率は非常に高く、全住民の80%以上に達しています。目下の課題は、MSFが他の場所でも実行することができたこの有効な戦略を、他の伝統的に治安が悪い地域や国のインフラがないために人びとが医療を十分に受けられない地域にも移すことです。現在の目標は、プログラムを危険にさらすことなく(注)、診断と治療の能力を増強することです。
(注)2007年6月にMSFのスタッフが反政府軍の銃撃を受けて亡くなった後、MSFはCARでの活動を一時的に縮小していた。(http://www.msf.or.jp/special/Top10_2007/crisis08.html)
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