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四川大地震から1年:MSFは四川省で心理ケアの提供を継続

2009年05月12日掲載

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被災者の子どもに心理カウンセリングを行うMSFの
カウンセラー。四川省、中国

2008年5月12日、四川省を襲った大地震によって8万人以上の人びとが命を落とし、1千万人以上が家を失う壊滅的な被害をもたらした。地震で家族、家、仕事を失った避難民たちは、地震から1年経った今も精神症状に苦しんでおり、生活を立て直すために支援を必要としている。国境なき医師団(MSF)は、地震の被災者に心理ケアを提供するため、四川省での活動を現在も続けている。

2008年12月以降、倒壊家屋の再建プロセスが進行中であるが、被災から1年経った今も大半の被災者の生活に大きな変化は見られない。四川省におけるMSFのプログラム責任者であるタマラ・ピアソンは話す。「学校と病院の再建が最優先され、完成までには1、2年かかると思われます。多くの被災者はまだ仮設住宅に住んでおり、家を建て直す目処が立っていません。このような状況が慢性化している一方で、水、衛生、安全、電気設備、土木構造物といった基本的な生活水準はかなり安定しています。」

地震1周年が近づくにつれ、人びとは神経質になり、また自然災害に襲われるのではないかと恐れている。2008年9月、北川県で豪雨による洪水が発生し、擂鼓にある仮設住宅が土砂崩れに巻き込まれた。今年も雨季が始まったことから、また雨で洪水が発生し、元の状態に逆戻りするのではないかと人びとは不安を募らせている。

MSFの四川省での心理ケアマネージャーであるエリカ・ペリザーリは、人びとの精神症状の原因は地震で生じた心的外傷だけでなく、将来への恒常的な不安もあると語る。「人びとはなかなか現実を受け入れて適応することができません。過去の体験が悪夢やフラッシュバックとなって現れるだけではなく、ストレス、絶え間ない不安、将来に絶望しており、不眠、度重なる頭痛といった多くの愁訴があります。すべてを失い、どうすればいいのか、これから何が起こるのか、家を建て直すことはできるだろうかと、自分の将来について疑問をなげかける人がいますが、このような人たちを助けることも私たちの活動です。なぜなら、どれも1つの問題につながっているからです。一部の患者では、辛い地震の体験と現状の両方が精神症状の原因となっていると思います。」

継続する地震被災者への心理的支援のニーズを受けて、MSFは2008年11月から北川県と綿竹市で、中国科学院(Chinese Academy of Science)およびCrisis Intervention Centerとの協力により心理ケアを提供している。MSF心理療法士の指導の下、10人の中国人カウンセラーが綿竹・北川地区にある5つの仮設住宅区(八一学校、永興、五堵、竹林、擂鼓)に診察室を開設し、心理カウンセリングを提供している。さらにカウンセラーは家を訪問したり、診察室に人びとを迎えたりして、潜在的な患者を調査し、心理ケアの必要な人の検診にあたっている。

ペリザーリは語る。「心理的支援を必要としている人はまだ大勢いると思います。MSFのカウンセラーの検診の結果では、対象の半数が患者となりました。最も共通した症状は、不眠などの睡眠障害、またなにかが起きるかもしれないという絶え間ない不安や恐怖、絶え間ない悲しみ、すぐに泣く、執拗な再体験(出来事に関する悪夢やフラッシュバック)、記憶または集中力障害です。自分では改善できないので、衝撃的な出来事から1年経っても苦しんでいる場合があります。地震のように予期しない壊滅的な出来事を経験した人に見られる典型的な症状です。自然災害の後には多くの人にこうした症状が現れ、徐々に良くなっていくものですが、中には心の健康を取り戻すのに専門的な心理的支援を必要とする人が必ず存在すると専門家の間では考えられています。」

心理ケアを必要としている人びとのために、MSFのカウンセラーは心理カウンセリングを行い、人びとが深い心の傷を言葉にして表現し、自分の感情を受けいれるのを助けている。このような自己開示のプロセスを通して、人びとは自分の感情と現実を受けいれることができるようになる。その結果として症状が緩和され、新しい生活を立て直すことができる。

擂鼓で活動しているMSFカウンセラーのルー・ジュンウェイは、患者が診察を受けた後、どのように回復したかを次のように説明している。「その患者は奥さんを地震で亡くしました。診察に来るまで、彼は午前1時まで眠れず、午前3時には目が覚めてしまう状態で、毎日2時間しか眠れませんでした。彼は大きな不安を抱えていて、将来の見通しもたちませんでした。悲しみに打ちひしがれ、自暴自棄になっていましたが、2人の子どもの前では敢然と立ち向かっているように振る舞っていなければならず、自分の感情を言葉で表現できませんでした。しかし診察を受けた後、彼はとても前向きになりました。今では子どもたちと擂鼓で商売をしています」

地震の前、中国では心理的支援というアプローチは非常に新しく、臨床心理ケアを行える心理療法士はごくわずかしかいなかった。四川省のMSFの活動地域において、個人向けカウンセリングおよびグループ療法を行っている団体はMSFのみである。ペリザーリは、患者の症状を緩和するには、臨床的アプローチが非常に重要だと語る。「患者が症状に苦しんでいる場合は、手工芸品を作るなどの地域社会の活動に参加することもよいのですが、これでは問題の核心を捉えることはできません。臨床的な心理ケアでなければ改善しない患者もいます」とペリザーリは語る。「私たちのプログラムは、治療が有効に作用し、よい結果を生むという建設的な例を地域社会に見せることができています。」

MSFは、2009年3月までに650人を超える人びとの調査を行い、300人の患者を治療し、約1500回の診察を行った。また、中国人カウンセラーに指導と研修を行い、患者への対応を助け、質の高いケアを確保している。

MSFは、2008年5月から中国四川省の地震被災地で活動を実施している。現在、13人の現地スタッフと3人の外国人スタッフが心理的支援を提供する活動を行っている。また、広西チワン族自治区南寧市では、2003年からHIV/エイズ治療活動を実施している。MSFは、1989年以来、中国での活動を続けている。

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