ニジェール:髄膜炎-予防接種だけでなく治療も重要
2009年05月08日掲載

髄膜炎の治療を受ける少年。アギエ政府病院にて。
ザンデール県で昨年末から始まった髄膜炎の流行は下火となる兆しを見せているが、感染者数は未だ多い。治療を受けなければ、髄膜炎患者の半数以上は命を落としてしまう。国境なき医師団(MSF)は同県のマガリア郡で50万人以上を対象に集団予防接種を開始したが、これと並行して、患者たちが時期を逸せず治療薬を入手できるよう複数の移動診療チームが活動している。集団予防接種ほどには注目されていないが、患者の治療もまた髄膜炎に対する取り組みの中で極めて重要な活動である。
マガリアに近いイェクア村にて、2009年4月6日
MSFのロジスティシャン(物資調達管理調整員)チームが村の診療所に近い2つの部屋を患者の受け入れに備えて清掃し終わった時、診療所のスエバ看護師が私たちに近付いてきてこう言った。「つい先ほど患者が1人来て、治療を行いました。朝から2人目の髄膜炎患者です。幸いなことに、新しい薬、セフトリアクソンの配給を受けたところです。この薬は非常に良く効きます。これで患者の治療ができるので、とても安心です。」
治療薬の提供、そして現地の診療所の職員にその使用方法を指導することは極めて重要な活動である。マガリアにおけるMSFの活動責任者、ニコ・ハイゼンベルグ医師は、チームの新しいスタッフへの説明でこう強調する。「こうした活動が命を救うのです。人びとは予防接種にしか注目していません。確かに予防接種は流行の拡大を防ぎますが、患者の緊急治療が行わなければ、失われる命の数は膨大になってしまいます。」
少女を抱えた1人の男性が、慎重に階段を下りて診療所に入ってきた。少女は意識を失っているようだ。男性は日よけの下のマットに少女を横たえた。辺りは日陰でも40度を超えるほどの耐えがたい暑さで、隅々まで土ぼこりが入りこんでいる。この土ぼこりが喉の粘膜に炎症を起こさせ、髄膜炎菌への感染を引き起こす。男性は何の反応もないままの少女の額を湿らせながら、私たちにこう語る。「私はこの子の教師です。昨日は元気だったのに、今日になって昏睡状態に陥りました。私たちはここから14km離れたトゥベの村から来ました。遠い道のりでした。」
現地の人びとはチャンカロウ(髄膜炎)をよく知っている
その後、トゥベ村にはMSFが配布している髄膜炎の薬が供給されていないことがわかった。薬は注射薬であるが、注射を行える診療所が村にないのである。この辺りの農村地帯では、村人たちは診療所にたどり着くまでに5km以上も歩かなければならない場合も多く、そのため多くの人が適切な治療を受けられないでいる。彼女の父親はナイジェリアへ出稼ぎに行っているが、幸いなことにトゥベの村人たちは直ちに病気の少女をここイェクアの診療所へと運ぶ手筈を整えた。この地方の人びとは、ハウサ語で髄膜炎を意味する「チャンカロウ」のことをよく知っている。この現地語は頭を動かすことのできない人という意味であり、間違いなく髄膜炎の症状に当てはまる。
数日前に、MSFの2つの医療チームのうち1チームが、郡の中心都市マガリアから1時間以上西に位置するこのイェクア村に立ち寄り、人びとの健康状況を確認し、既に治療を受けている患者に関する情報を集め、医薬品を届けていた。現在、髄膜炎患者の数が増えているため、スエバ看護師は巡回しているMSFのチームとその医師にできる限り早くもう一度立ち寄って欲しいと願っている。ロジスティシャンのチームはこの情報をその日の晩のうちにマガリアへ伝えると約束した。あわよくば郡内14ヵ所の診療所を分担で支援している2チームのうち1チームが、この近辺への訪問を計画しているかもしれない。スエバ看護師は、この診療所の幼い患者たちの中に、マガリア病院への移送が必要な者は現時点では1人もいないと考えている。私たちがイェクアを後にする頃、日は既に傾いていた。
患者を探して村々を訪問
翌日は、3つのチームがイェクアで5千人を対象に予防接種を行う予定となっていた。シモン医師が率いる医療チームは夜明けとともに出発し、少し迂回してマガリアの診療所に立ち寄った。夜のうちに、フラニ族の幼い子どもが意識不明の状態で運びこまれていた。夜勤の医療スタッフが腰椎穿刺術を行い、治療薬の投与を行っていた。まだ早朝のうちに私たちはイェクアに向かって出発した。イェクアの診療所では、トゥベから来た少女ともう1人、ずっと首の痛みを訴えている子どもだけが残っていた。「痛みが消えるまでには数日かかることもあります。」シモン医師はこう言って幼い患者2人の様子を観察し、その回復状況に満足しているようだ。「これから、この少女がやってきたトゥベ村に向かいます。他にも感染者がいるかもしれません。」
その後30分ほどしてトゥベ村にたどりついたが、まだ朝早いというのに既に猛烈な暑さだった。村長が私たちを出迎えた。チームは少女の家を訪ね、母親と他の7人の子どもに面会したが、髄膜炎の兆候は誰にもみられなかった。チームは急いで巡回の行程へと戻った。まだ1日の活動は始まったばかりなのだ。今日は4ヵ所の診療所を回る予定になっている。さらに予定外に、髄膜炎患者を探すため孤立した村々に立ち寄る可能性もある。
イェクアでは、予防接種を待つ人びとがアカシアの木陰に列をなしている。診療所ではスエバ看護師が新たな医薬品の配給を受け、さらにMSFのシモン医師を当てにできるとわかり満足していた。
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