ウガンダにおける国境なき医師団(MSF)の活動状況 ― 2008年8月
2008年08月26日掲載
総予算:705万2千ユーロ(約11億4249万円)
スタッフ総数:585人(外国人派遣スタッフ52人、ウガンダ人スタッフ533人)
北東部における食糧不安と栄養失調への取り組み

ウガンダ北東部のカラモジャ地方では、周期的に慢性的な栄養失調が起こっている。しかし2007年は降雨量が少なかったことに加え、2008年は雨季の到来が遅かったため、収穫は微々たるものと予想されている。ここに来てようやく、ピーナツとモロコシの作付けが始まった。食糧や燃料価格の高騰によって状況はさらに悪化し、一部地域で栄養失調が深刻化している。
MSFは2007年2月、ウガンダ北東部カラモジャ地方で調査を行っていた。同じ頃、世界食糧計画(WFP)が同地域で行った調査では、調査対象者の20%が急性栄養失調に陥っていた。
この結果を受けて、MSFは最も栄養失調が深刻であったカラモジャ地方北部のカボング県で、5才未満の子どもを対象にアウトリーチプログラム*と栄養補給プログラムを開始した。MSFのスタッフは現在10ヵ所でアウトリーチプログラムを運営している。ここでは、重度と中程度の栄養失調児を対象に検診や食糧配給を行っている。この地区の地域病院では、入院治療センターを運営している。ここには重度の栄養失調や合併症を起こしている患者が入院している。
2008年1月から6月に、重度の栄養失調児593人と中程度の栄養失調児1846人をプログラムに受け入れた。また390人の栄養失調児が入院治療センターに入院した。MSFが2007年11月に行った栄養調査と、WFPが2008年2月にカラモジャ地方の北部で行った栄養調査によれば、状況は改善している。MSFの調査では11月の全体の急性栄養失調率は15.3%であったが、WFPの調査では9.1%だった。
しかし、カラモジャ地方の南部では状況は逆に悪化し、それを受けてMSFは2008年6月に、モロト県とナカピリピリティ県で栄養失調児への援助活動を開始した。この両県の20ヵ所で1万3500人の子どもを診察し、このうち1400人を8月までに栄養治療プログラムに受け入れた。一部の地域では、児童の60%から90%がマラリアに感染している。
病気の流行への対応

2007年11月、初のE型肝炎の症例がキトグムで確認された。E型肝炎は、ウイルスに汚染された水を飲むことによって感染する。治療法やワクチンはなく、水分補給などにより症状を緩和するしかない。感染に耐えられればウイルスは消滅し、肝臓も回復する。キトグムのMSFチームはトイレの設置、水の塩素消毒、公衆衛生キャンペーンなどを進めることによって、感染の拡大防止に注力した。2008年6月までにMSFが治療したE型肝炎患者は1290人であり、このうち亡くなったのはわずか34人である。
2007年末、MSFはウガンダ西部におけるエボラ出血熱発生に対応した。MSFチームは、ブンディブギョ地域とキキョの2つの重点地域に隔離施設を設置し、経験豊かな外国人派遣スタッフからなるチームが対応した。チームは、患者に専門的なケアや心理的支援を提供し、さらに安全な水と公衆衛生サービスを提供することで、感染拡大を予防した。また地域社会に対しては、安全に埋葬を行うためのチームや、教育、啓発活動による支援を行った。その甲斐あって流行は収まり、活動は2008年1月に終了した。
2008年1月から4月にかけてアルーア地域でコレラが流行した際には、MSFは845人を治療した。流行のピークには、1日40人までがアルーアのオリ地区にあるコレラ治療センター(CTC)で治療を受けた。MSFはコレラの発生件数が最も多かった3つの准郡で、安全な飲み水を手に入れやすくするための取り組みを行い、3月21日から4月14日の間に約4.2トンの水を供給した。また流行が深刻だった地区では、ポンプ式井戸やさまざまな市の給水地点で塩素による消毒を行った。
避難民キャンプでの活動の重点を移す

ウガンダ北部の多くの地域では、人道的状況の改善が見られた。治安が改善されてきたため、紛争によって避難していた数万人が、「サテライト・キャンプ」**までは戻ってきた。しかしまだ数十万人が大規模なキャンプにとどまっており、依然危うい状況が続いている。和平合意が実現していないために、多くの住民はまた襲撃が始まるのではないかと怯えながら暮らしている。
しかしここ数年で現地の治安が改善したため、保健省の対応能力も強化された。ただし、適切な人員の配置、医薬品の供給は依然として課題となっている。2007年から2008年初めにかけて、MSFは大規模なキャンプにおける基本的な医療活動のほとんどを保健省に引き継いだ。
キトグムやグルなど一部の地域では、二次医療とHIV/エイズに活動の重点を移した。グル地区では、アウェレとアウゥのキャンプにある2つの診療所を4月と6月にそれぞれ保健省に引き継いだ。チームは現在、グルの南東35kmにあるラロギにおける診療所を拡張し、包括的な二次医療を提供できるようにした。産科、入院ケア、通院による治療の支援、HIV/エイズと結核の二重感染のケアなどが行えるようにした。2008年1月から6月の間にこれら3つの拠点で30896件の診察を行い、このうち982人は、ラロギ診療所の入院病棟に入院した。
HIV/エイズ患者へのケア
世界保健機関(WHO)と国連合同エイズ計画(UNAID)によれば、ウガンダには、HIVウイルス感染者が子どもを含めて100万人以上いるという。そのうち約22万人が臨床面から、抗レトロウイルス(ARV)治療を必要としているとされる。MSFは2001年以来、アルーアでHIV/エイズへの取り組みを行っている。2007年12月末までに11618人をプログラムに受け入れた。このうち4090人がARV治療を受けている。このプログラムでは、HIVと結核の二重感染や、栄養失調に陥っているHIV/エイズ感染者の成人と子どもを対象に、栄養面での支援も行っている。それとは別に出産前のケアやHIVの母子感染予防(PMTCT)プログラムも行っている。2008年6月の時点で、782人が栄養治療プログラムで治療を受けた。また、2008年1月から6月の間に、231人の女性をPMTCTプログラムに受け入れた。
活動の主眼を症例の発見と医療チームやHIV/エイズ感染者の支援グループからの啓発に置いたことにより、15才未満でARV治療を受けている子どもの数は、この1年で増加した。これらのグループは、医療に関する講演やグループ・ディスカッション、啓発を目的とする地域社会での会合の運営、介護者のいない子どもや大人の患者のためにボランティアの派遣を行っている。
北部のキトグム地域におけるHIVの感染率は、10%と推定される。しかし2007年に、MSFがHIVの検査・治療施設をマディ・オペイの保健省の診療所に設けるまで、ARV治療を提供しているのはミッション系の病院1ヵ所だけだった。MSFチームは現地スタッフの訓練や、入院病棟の支援、性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)関連のケアの拡大にも尽力した。2008年6月末の時点で、288人のHIV感染者をプログラムに受け入れ、このうち55人がARV治療を受けていた。毎月約2千件の外来診療を行い、100人の患者を診療所に受け入れた。
*こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること。
**ウガンダ避難民の居住地付近に立てられた、避難民キャンプより規模の小さなキャンプ。
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