オランダ政府・MSF間の訴訟で憂慮すべき判決
2008年07月17日掲載
医療・人道援助団体である国境なき医師団(MSF)は、このほどスイスの最高裁判機関、連邦裁判所が下した判決に衝撃を受けている。4年間に渡る訴訟の中で、一審、二審ともMSFの訴えを認める判決が下されていたにも関わらず、連邦裁判所はオランダ政府の訴えを認め、両当事者間で経済的負担を分担するように命じる判決を下した。この決定は、紛争地域で人道活動を行う独立の団体にとって、重大な前例となる。
釈放直後のアルヤン・エルケル。2004年撮影
本訴訟は、2002年8月に北コーカサス地方で誘拐され、20ヵ月間人質として捕えられていた、MSFの活動責任者でオランダ国籍のアルヤン・エルケルの釈放に際して、オランダ政府が支払った身代金をMSFに返済するよう求めるものであった。
「MSFの訴えを認める判決が二度下された後で、このような両成敗ともいえる判決が下されたことに衝撃を受けています。交渉と身代金の支払を行った政府の役割は曖昧なまま、支払いはMSFに回すというのです。この決定で、独立した人道活動の衰退という流れはさらに深刻化するでしょう。ジュネーブ条約が締結された国でこのような判決が下されたことは、ソマリアやダルフールのような紛争地域で活動するチームにとって憂慮すべきことです」とMSFスイス支部の会長、イザベル・セグイ-ビッツは強く主張する。
2008年2月にジュネーブ司法裁判所で立証された事実により、MSFの立場の説得力は明白に認められていた。今になって、交渉による身代金費用を分担し、政府への支払いを人道援助団体に求めることは、到底受け入れ難い。
連邦裁判所は、オランダ政府の要求どおり、人道援助従事者の誘拐という被害を単なる商事紛争と同じレベルに落とす判決を下した。近年、人道援助従事者に対する犯罪が処罰を免れているケースが日常的と言えるレベルにまで増加しているが、このような判決はその流れを助長するものである。
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