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パレスチナ:心理療法士の手記

2008年03月05日掲載

以下は、パレスチナ西岸地区のヘブロンに派遣されたギリシャ人心理療法士のエリーナ・ペレカノウが現地から寄せた手記である。長引く紛争が住民の生活に深刻な影響を及ぼしているパレスチナのガザ地区および西岸地区において、国境なき医師団(MSF)は診療所の運営、現地の病院の支援、心理ケアおよび社会的サポートの提供を続けている。

2008年1月2日

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MSFの心理療法士としてパレスチナで活動をするのは、私の長い間の夢でした。この3週間で、その夢が叶いました。これから6ヵ月間、ヘブロンで生活し、活動をするのです。プログラムの、そして私の活動の目的は、今も続くイスラエルとの戦闘の被害に遭っている人びとに心理ケアを行うことです。このように書くのはたやすいですが、成し遂げるのは簡単ではありません。

パレスチナの人びとについての私の最初の印象は、困難にも関わらず素晴らしい勇気と生への愛情を持っているというものです。ここには、性質もさまざまで、時には想像できない幾多もの困難があるように見受けられます。既に、もし自分自身がこのような困難を体験しなければならないとしたら、どのように反応しただろうかと疑問に感じています。私の西洋的な心理療法上の考えを単純に持ち込まないためにも、個人的な内省を続けなければならないと感じています。パレスチナの現実が突如として私に衝撃を与え、内向的な雰囲気になっています・・・この写真は、私がヘブロンに来て最初に撮ったもののうちの1枚です。山のふもととイスラエルの定住地の間のどこかにいた、ベドウィンの子どもが写っています。

2008年1月15日

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これはベツレヘムでのクリスマスの時に撮ったものです。

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これは朝のMSFの宿舎。霧の中です。

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パレスチナに来て1ヵ月になります。とうとう冬がやってきました。気温は夜間、零下になります。日中は患者の家を訪問しますが、家の中は底冷えがします。電気を必要とするものは何一つ動いていません。電気代が高すぎるからです。人びとは私たちのためだけに、急いで暖房をつけてくれます。周りの人びとは簡素な服装なのに、自分だけフリースに身を包んでいることに気恥ずかしさを感じます。今日は、コンクリートの地面を裸足で歩いている小さな子どもがいました。彼女の足は寒さのために、ほとんど真っ青でした。

患者の家を訪問すると、子どもたちが集まってきます。私たちは一緒に絵を描いたり、遊んだり、話したりします。子どもたちは恥ずかしそうにしますが、普段はとても行儀がいいです。私の関心を引こうと、すぐに笑顔を見せ始めます。でも、そんなことをしなくても、私の関心は子どもに向いているのです。何を怖がっているのか、うまく口で説明できない子どもたちに。どうして両親に会いに刑務所に行く必要があるのか、両親が家にいないのかを理解できない子どもたちに。毎晩、恐ろしい夢を見て目が覚めてしまう子どもたちに。子どもたちには、政治も外交も死傷者も分かりません。分からなくていいのです。

クリスマスの間、男の子たちはプレゼントにプラスチック製のおもちゃの銃が欲しいと親にねだっていました。おもちゃ屋の主人たちは、銃以外のおもちゃを棚に並べても誰も買わないので、他のものは売っていないと言います。小さなパレスチナの男の子たちは道路の脇に立って、MSFの車で私たちが通り過ぎる時に、銃で私を狙います。最初はその銃で私たちを「銃殺」しますが、すぐに満面の笑顔を浮かべて、「ようこそパレスチナへ」と声をかけてくれます。

この写真は、男の子たちから特別なリクエストを受けたものです。彼らは新聞社に送って欲しいと私に頼みましたが、最後はインターネット上に掲載することで納得してくれました。

では、2週間後に。

2008年1月30日

昨日私たちは、治療をしている子どもたちと、ヘブロンに雪が降るようにと祈っていました。雪が降りそうな気配はありましたが、今朝起きると自分の目を疑いました。夜の間に大雪が降ったらしく、風と寒さが加われば、まさに完璧な景色です。家にいて、暖炉の前に座っていれば、の話ですが。子どもたちはもちろん、とっても喜ぶでしょう。雪だるまを作ったり、雪玉で「戦争ごっこ」をして外で遊ぶチャンスですから。

それでも、電気代や暖かい服、交通費、雪で立ち往生した場合のために食料を買うお金もないパレスチナの人びとにとって、この天気がどのような意味をもつか考えずにはいられません。乳児や子どもなど家族全員が夜の寒さの中、暖かい服もないまま3時間も屋外に立ちっぱなしでイスラエル軍の侵略が収まるのを待たなければならないとしたら、雪は楽しいものでも何でもないはずです。あるいは山のどこかに住む7才の男の子が、2時間歩いて学校に行き、また2時間かけて家に戻るとしたら・・・。

ここに住む多くの人びとにとって、生活は困難です。紛争のために、たくさんの物事が、私たち外部の人間が普段当然と思うようにはいきません。その1つは、人びとの家での暮らし方です。誰が家に入ってくるか、そのような「訪問」の後に家がどんな風にされているか、家族が何人残っているか、自分たちの力ではどうにもコントロールできないことがよくあるのです。私がカウンセリングをする子どもたちは大抵、そのような「訪問」の後に、おねしょが始まったり、恐ろしい夢を見たり、恐怖心や身体の異常を訴えたりします。

子どもたちがこれからも生き続け、子どもらしく遊んだり振る舞ったりするためにも、彼らがこの現状に適応してやっていかなくてはならないと考えながら、私たちは子どもたちの問題に一緒に取り組もうとしました。

雪が降り、外に出て雪で遊ぶのには、どんなに寒くても関係ありません。パレスチナの子どもたちが、世界中の他の子どもたちと同様に楽しむことができる数少ないことのひとつです。少なくとも、自然がもたらすもので遊ぶこの権利は、どんな政治情勢であろうとも犯すことはできません。

紛争があろうとなかろうと、今日、子どもたちは遊んでいます。

エリーナ・ペレカノウ
MSFの心理療法士、ヘブロンにて

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