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ケニア:スラム地区におけるエイズと薬剤耐性結核への取り組み

2007年11月07日掲載

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リズベット・オーラー医師(写真手前)

国境なき医師団(MSF)は2001年から、ケニアの首都ナイロビにあるスラム地区マサレのブルーハウス診療所でHIV/エイズと結核の統合治療を実施している。治療プログラムの目的のひとつは、HIVと結核に感染している患者の二重の苦しみを緩和することである。HIV感染は免疫機能の低下を起こすため、HIV感染者は陰性の人に比べ最高50倍も結核を発症しやすい。ブルーハウス診療所でもHIVと結核の二重感染率が75%であることから、2つの病気の関連性は明白である。さらに、ここ数年ケニアでは薬剤耐性結核の患者数が増加しているが、同国で無料の薬剤耐性結核治療を実施しているのはMSFのみである。ナイロビで活動するMSFのリズベット・オーラー医師が、アフリカで最も困窮する地域の1つで薬剤耐性結核を治療する取り組みについて説明する。

Q. MSFがマサレで薬剤耐性結核治療の開始を決定した理由は何ですか?

A. ブルーハウス診療所でHIV/エイズと結核の治療を行っている中で、通常の結核治療で治癒しない患者がいることが次第に明らかになってきました。これらの患者の喀痰サンプルを検査したところ、薬剤耐性結核に感染していることが判明しました。当時ケニアでは薬剤耐性結核に対する専門治療は行われていなかったため、2006年5月に、ブルーハウスで治療を開始することになりました。既存の薬剤耐性結核の治療は終了するまでに2年かかる上に、激しい副作用が生じる可能性があり、また治療効果が限られていることは承知しています。しかしMSFはスラム地区という環境で、治療を必要とする患者にできる限りの処置を施そうとしています。これまでにケニア国内の検査施設で薬剤耐性結核と診断された患者は249人いますが、大多数の患者は治療を受けることができないため、このうち現在何人の患者が生きているかわかりません。MSFはマサレで、薬剤耐性結核治療の患者1人当たり100万ケニア・シリング(約160万円)の治療費を負担していますが、これほど高価な治療はケニアの大半の患者にとって手が届かないものです。

Q. マサレで薬剤耐性結核の治療を実施する上で、どのような点が困難ですか?

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ブルーハウス診療所の外観

A. マサレでは感染対策が大きな課題になっています。ここでは、わずか4平方キロメートルの面積に30万人がひしめいて生活しています。土壁と鉄くずでできた一部屋の家に、15人もの人が一緒に暮らしていることも珍しくありません。家には窓がなく、日光も入らず、換気もできません。結核や薬剤耐性結核が急速に広がる格好の条件が揃った環境なのです。スラム地区に住む人たちが置かれている社会的状況も、治療全般を非常に困難にしています。適切な住居がないことは主な問題の1つですが、食料不足の問題もあります。1日に1度しか食事をすることができない患者がいますが、これは1日の必要摂取量に満たない上に、服用しなければいけない薬の数に相当する食事量ではありません。

薬剤耐性結核の患者には多量の薬が処方されますが、HIVに二重感染している場合、延命のための抗レトロウイルス(ARV)薬や日和見感染症の予防・治療薬などがさらに加わります。1日25~30錠の薬を服用するため、二重感染の患者とはより緊密な関係を築き、きちんと処方計画を守るよう指導する必要があります。

また、服用する薬が多いため、副作用も増えます。薬を飲めば飲むほど肝臓への負担が増え、肝毒症になる危険性が高くなります。これらの薬を一度に服用する場合、嘔吐と胃炎を起こす危険性も高まります。さらに、ARV薬と薬剤耐性結核の治療薬の間で相互作用が生じる可能性があります。例えば、ジダノシンというARV薬を薬剤耐性結核の治療薬の1つであるレボフロキサシンと一緒に服用すると、レボフロキサシンの血中濃度が低くなるため、この2種類の薬は最低でも2時間空けて服用する必要があります。

Q. 困難がある中で、MSFはマサレで具体的にどのような活動を行っていますか?

A. 私たちはブルーハウスに近くにある薬剤耐性結核専門の施設で、7人の患者を治療しています。そのうち2人はHIV陽性でARV治療も受けています。この施設には入院設備がないため、患者には通院での治療を提供しています。薬は午前と午後の2回渡し、薬を取りに来たときに食事も提供しています。社会的な問題が主な原因となって患者が治療を終了できない場合がとても多いため、住居や食料の有無などは患者ごとに調べます。体に強い脱力感がある、あるいは毎日2度の通院が必要なため、仕事を続けることができなくなってしまった患者もいます。MSFがどこまで援助すべきかを判断するのは難しいですが、できる限り援助しようと努めています。家賃や子どもの授業料をMSFが肩代わりする場合もあります。

薬剤耐性結核治療を終えるには2年かかるため、マサレで1人目の患者が治癒するまでにあと数ヵ月あります。今のところ7人全員が非常に忍耐強く治療を続けています。しかし治療を終えるためには、継続した薬の服用について教育とカウンセリングを続け、また社会的な面での支援を行うことが不可欠です。このような活動がなければ、治療の継続は不可能でしょう。

「私は、3週間前からブルーハウス診療所で薬剤耐性結核の治療を受けています。診療所に毎朝8時ごろ行って薬を11錠もらい、とても痛い注射を受けます。午後にはさらに薬を5錠飲みます。薬を飲むと、必ず胃にガスがたまり、いつも嘔吐を繰り返しています。体が非常にだるく、皮膚発疹もあります。これらの症状を緩和するための薬も処方してもらっています。毎日2回通院しなければならないため仕事を失いました。社会的な支援がなければ、妻と2人の幼い子どもを養うことはできません。狭苦しいスラムにある小さな家で生活しているので、自分のせいで他の人が危険にさらされないようにと祈っています。自分の病気が家族に感染していないことを心から願っています。ケニアではこの病気に感染している人がたくさんいて、感染が広がっています。可能かどうかわかりませんが、治療期間が今よりも短くなればどんなに良いかと思います。2年間の治療はあまりにも長すぎます。」

P、ブルーハウス診療所で治療を受ける32才の薬剤耐性結核患者

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